AI の設備にかかるお金を、巨大 IT 企業が借金で集める動きが3日続いた。Oracle/オラクルの200億ドル、Alphabet/アルファベット(Google の親会社)の60億ユーロに続き、11月3日には Meta/メタが200億ドル以上の社債を出し始めたと Bloomberg などが報じた。同じ日に Apple/アップルは、メモリの値上がりを主な理由に、10〜12月期の利益率の見通しを市場の予想より低くした。AI 向けのメモリの取り合いのつけが、iPhone や Mac を作る会社の利益にまで回ってきた形である。
二つの出来事は同じ力学を指している。AI の費用はもう AI の会社の中だけでは払いきれず、社債を買う投資家と、部品を買う端末の会社に広がり始めた。韓国の株価指数 KOSPI/コスピは−3.59%で、前日の上げを消した。米国の中間選挙の結果は、この原稿をまとめた時点(米東部の11月3日14時ごろ)ではまだ出ておらず、ここには入っていない。
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巨大 IT は AI のために借金を重ねているが、貸す側は相手を選び始めた。稼ぐ本業を持つ Meta は低い金利で借りられそうな一方、借金の重い Oracle や新興のクラウドは高い金利を払っている。韓国では Samsung と SK hynix が4〜5%下げた。
仕事に直接効くのはメモリの値上がりである。Apple はメモリが足りず Mac と iPad の供給が絞られるとみており、会社のパソコンや端末の値段と納期に響きうる。また NVIDIA が、GPU(AI の計算に使う半導体)を貸し出すクラウド会社に、中国の客への販売を半分未満に抑えるよう求めていると報じられた。
日本の会社にとっては、年度内にパソコンや端末を買い替える予定があれば、早めに見積もりを取っておくほうがよい。日本の GPU クラウドも NVIDIA の要求の対象に挙がっており、そこを使う会社では空き容量や値段が動きうる。東京市場は3日が文化の日で休みだったため、韓国の下げの影響は4日の取引に出る。
お金と市場:貸す側が借り手を選び始めた
報道によれば、Meta はドル建てで約150億ドルを5〜30年の5本に分けて出し、ユーロ建ても初めて出す。買いたいという注文は最大で約580億ドルと、募集額の約4倍集まったという。最初に示した上乗せ金利(米国債より高く払う分)は、5年で1.30%、30年で2.50%である。Oracle が払うのは2.40〜3.35%の上乗せで、利率は7.000〜8.650%になった。Oracle は株も8,620万株を116ドルに値引きして売っており、倒産に備える保険の値段である CDS は約2.92%に上がっている。新興のクラウドの CoreWeave/コアウィーブの社債は額面の約80%で取引され、利回りは約15.6%に達したと伝えられる。同じ「AI のための借金」でも、借り手によって値段がまったく違うということだ。
株も同じ見方を映している。11月2日の米国はナスダック総合が−1.07%で終わり、Oracle は−8.8%、株だけで Lumentum を買うと決めた Marvell は−12.7%だった。株を薄める調達が嫌われた。3日の昼は半導体が戻し、NVIDIA は約+3%で時価総額が約5兆ドルになったが、これは日中の値で、終値ではない。
Apple の7〜9月期の決算は、売上1,145億ドル(+12%)で予想を上回った。ただし10〜12月期の粗利益率の見通しは45〜46%で、予想の46.3%に届かなかった。説明会では、CEO の John Ternus/ジョン・ターナスがメモリの値段を「前例がない」と語ったと伝えられる。詳細は記事「Apple、Ternus初の決算は好調もメモリ高で年末の利益率見通しが予想割れ」で報じた。
データ分析の Palantir/パランティアは、売上が23.13億ドル(+96%)と会社の見通しを大きく上回った(決算の発表で一次情報)。一方で、新しく結んだ契約の総額は前年比+6%にとどまった。前の期は+49%で、株は3日の昼に約−2%だった。今の売上は強いが、先の受注の伸びが鈍っている。
上場を控える Anthropic/アンソロピックをめぐっては、開示が足りないとする側と強気の側が書いた。懐疑の側では、IT 業界の批評家の Ed Zitron/エド・ジトロンが、計算資源の費用が売上より速く増えていると指摘した。法律の論者の Matt Scherer は、約8,954億ドルの計算資源の約束を「実質的に借金だ」とし、上場を待たせるべきだと書いた。強気の側では、経済のブロガーの Noah Smith/ノア・スミスが、計算資源1ドルあたりの売上が1年で3倍になったとし、Claude そのものが堀だと書いた。詳細は記事「Anthropic上場前の開示論争 計算資源8,954億ドルは『借金』か」で報じた。
研究と安全:確かめる道具と、止まるべきかの論争
Anthropic の研究チームは、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)や MIT などと組み、モデルの中身を見せないまま、どのモデルが答えを出したかを暗号で証明する仕組み『FlashProve』を公開した(研究ページで一次情報)。外部の評価者や当局が、承認されたモデルが本当に使われているかを確かめる道具になりうる。詳細は記事「Anthropic、重みを伏せたまま使ったモデルを暗号で証明する仕組みを公開」で報じた。
MIT の研究者は、GPT-6 Astra に、言葉で示した目標どおりに別の小さなモデルの中身を直接書き換えさせたと発表した(研究者のブログで、査読はない)。小型の Qwen3.5 では、数学の試験の正答率が7.9%から48.1%に上がった。ただし別の小型モデルでは約1点しか上がらず、著者自身も、新しい力を足したのではなく妨げを取り除いたと解釈している。自然言語処理の道具 spaCy の作者の Matthew Honnibal は打ち出し方に異を唱え、開発者でブロガーの Simon Willison/サイモン・ウィリソンは、モデルの中身を読むほうの実験を手元で再現した。AI が自分を改良できるかという議論の材料になるが、まだ一本の未査読の結果である。
英国の Google DeepMind の社員が、辞めた後もずっと会社を悪く言えなくする条項をやめるよう幹部に求めていると Washington Post が報じた。社員は、この条項があると辞めた後に AI の危険を公に警告できないと訴えているという。Google は、新しく雇う人については辞めた後にも効く部分を外したと答えた。OpenAI が2024年に同じ種類の条項でもめたのと同じ問題である。
安全を重んじる会社だけでも先に開発を止めるべきかという論争は、3巡目に入った。止まることに反対したのは、精神科医でブロガーの Scott Alexander/スコット・アレクサンダーである。新しい記事は出さず、議論サイト LessWrong のコメント欄で答えた。止まった効果がほかの会社に広がる見込みが、先行を失って安全の研究がしくじる見込みより大きいときだけ、止まるのが正しいという。Anthropic が2か月だけ試しに止まっても、中国は応じず、再開すれば評判を落とすだけだという筋書きも描いた。これに対し、安全を論じるブロガーの Zvi Mowshowitz/ズヴィ・モウショヴィッツは、皆を殺しうるものを作ることを禁じないなら、禁止を信じていないのと同じだと批判した。英国の AI 安全研究所(AISI)の主任科学者の Geoffrey Irving/ジェフリー・アーヴィングは、一社で止まる正しい形は会社を解散することではないと書いた。人を安全とセキュリティの仕事に回し、ほかの会社が続かなければ再開すればよいという。この記事が、論争の中でいちばん読まれた。どちらも安全の陣営の内側の議論で、会社の側から答えた人はいない。
政策と地政学:半導体の線引きと期限
NVIDIA が、データセンターとクラウドの取引先に、新しい契約では容量の51%以上を中国以外の客に売るよう求めていると FT が報じた。口頭の指示で、拠点の立ち入りや契約の監査で確かめるという。NVIDIA は認めも否定もしておらず、発表もない。影響を受ける先にはシンガポール、マレーシア、日本の GPU クラウドが挙がった。詳細は記事「NVIDIA、取引先に容量の51%以上を中国以外へ売るよう要求とFT報道」で報じた。
中国では、世界インターネット大会の烏鎮サミットで李強首相が講演した(講演の文で一次情報)。「国家安全の概念を広げすぎること、デジタルの鉄のカーテンを築くこと」に反対すると述べ、米国の輸出規制を暗に批判した。中身はこれまでの立場の繰り返しで、新しい機関の発表はなかった。
米中の輸出規制の休戦には期限が迫っている。米国が中国企業の子会社にまで規制を広げる規則を止めている期間は11月9日に、中国がレアアースの輸出規制を止めている期間は11月10日に切れる。米国の財務長官は9月に、休戦は2027年1月10日まで続くと述べた。だが3日の時点で、米国の官報に延長の告示は出ておらず、中国の正式な法令も見つからない。部品や素材を中国から調達している会社は、来週の動きを見ておく必要がある。
選挙では、AI の業界の政治団体(スーパー PAC)が使ったお金の流れが注目された。調査報道の Bellingcat は、3,600万ドルを超えるお金がデラウェア州のペーパー会社を通っていたと伝えた。詳細は記事「AIのスーパーPAC、選挙日に7,900万ドル 半分近くはペーパー会社経由」で報じた。防衛では、前の陸軍長官の Dan Driscoll が、国家安全を担う上級顧問として OpenAI に入ったと報じられた。
動きがなかったところ
中間選挙の結果は、まだ何も出ていない。州の電力の料金を決める委員の選挙や、データセンターの建設を問う住民投票の結果しだいで、AI の電気代を誰が払うかの流れが変わる。選挙の日より前に決まった6件は、どれも開発を絞る側が勝っていた。
Anthropic は上場の書類に、AI が研究を加速させる「基準を間もなく満たしうる」と書いたが、この一文を詳しく説明していない。安全の側の名のある論者で、この一文に応じた人も見つからなかった。上場をめぐる議論は、ほぼお金の開示の話に集まっている。
中国の Moonshot AI の Kimi K3.1 Pro は、モデルの中身(重み)を11月4日までに公開すると伝えられていたが、公開の場所にはまだ出ていない。美団の LongCat-2.5 も同じである。中国の公開モデルの新しい版は、この2日間ひとつも出なかった。




