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Anthropic、伸び鈍化と営業赤字 AIの資金づくりに売り

上場書類には「研究の劇的な加速」の基準に近いとの記述も。Oracle と Marvell は原油安でも売られた

田中 誠一|2026.11.03|9分|更新: 2026.11.03

Anthropic が上場書類を改訂し、7〜9月期の伸びは47%に鈍り、営業赤字に転じたと報じられた。将来のモデルが自社の『研究の劇的な加速』の基準に近いとの記述もある。同じ日に Oracle の200億ドル調達、Marvell の巨額買収、Alphabet の社債が続いた。原油が7%下げても、資金を集めた側の株は売られた。

Key Points

Anthropic、伸び鈍化と営業赤字 AIの資金づくりに売り

上場をめざす Anthropic/アンソロピックが、上場の届け出書を改訂して出し直した(11月2日)。報道によれば、7〜9月期の売上は約170億ドルで、前の期より47%増えた。ただ、4〜6月期の伸びは144%で、そこから大きく鈍った。会計基準どおりの営業損益は、5.67億ドルの赤字に転じた。書類には、将来のモデルが自社の安全の基準の一つ『AI による研究の劇的な加速』を『間もなく満たしうる』とも書かれていると報じられている。同じ日、Oracle/オラクルの200億ドルの調達、Marvell/マーベルの企業価値1,150億ドルの買収、Alphabet/アルファベットの60億ユーロの社債が続いた。原油が約7%下げて株は全体に支えられたが、お金を集めた側の株は売られた。AI の売上の伸びは鈍り始めたのに、要るお金は増え続けている。市場はその差に値段を付け始めた。Apple/アップルと Palantir/パランティアの決算は、調べた時点ではまだ出ていなかった。

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お金:AI の大手が、株と借金で巨額のお金を集める動きが続いた。投資家はそれを嫌い、Oracle は−6〜7%、Marvell は約−10%になった。Oracle の倒産に備える保険の値段(CDS)は、1年で約3.7倍に上がった。

仕事の道具:OpenAI/オープンAI は12月から、有料の契約で、ChatGPT とプログラムを書く AI の Codex の利用枠を1つにまとめ、使った量で数えると伝えられている。xAI の Grok も費用を理由に利用の上限を締めており、AI の道具を使い放題にできる時期は終わりに近づいている。

日本の会社にとって:Anthropic は、日本の投資家に最大5,529億円の新株を売る計画と報じられた。主幹事はみずほである。東京では、メモリのキオクシアが弱い見通しを嫌われて−15.8%となった。メモリの値上がりが頭打ちに近い兆しとも読め、パソコンやサーバを買う会社には、値段が落ち着く材料になるかもしれない。

お金と市場:集めた側が売られた日

Anthropic の数字は、書類を引用した CNBC や Fortune の報道によるものである。書類そのものは大きすぎて読み込めなかった。報道によれば、営業費用は106億ドルから175億ドルに増え、値下げで約6億ドルの売上を失った。1〜9月の累計の営業損失は12.6億ドルで、7〜9月期の5.67億ドルとは期間が違う。計算資源などに払う約束は約8,954億ドルで、2045年まで続く。値段の幅と上場の日は、まだ出ていない。詳細は記事「Anthropic修正S-1 研究加速の基準に接近、成長は47%に鈍化」で報じた。

Marvell は、光の通信部品の Lumentum/ルメンタムを買う最終の契約を結んだ(会社の発表と、上場企業が出す臨時の報告書 8-K による)。お金は払わず、自社の株で払う。データセンターの中の配線が、銅から光に移るほうに賭けた。それでも、株が薄まることと負担の重さが嫌われ、両社の株は下げた。詳細は記事「Marvell、Lumentumを株式交換で買収 企業価値1,150億ドル」で報じた。

Oracle は、米国の証券当局に出した目論見書で、普通株で100億ドル、社債で100億ドルを集めるとした。8月末の借金は1,253億ドルで、格付けは投資適格のいちばん下の BBB- である。数日前の投資家向けの説明会で、2030年度までの『最後の資金』だと説明していたものを、すぐに実行した形になる。Alphabet も60億ユーロの社債を出すと Bloomberg が報じた。5月の90億ユーロより小さいが、巨大クラウドの会社が借金で AI の設備をまかなう流れは続いている。

相場全体を支えたのは、AI ではない材料だった。イランが米国との交渉に前向きな姿勢を見せ、北海の原油の Brent は−7.7%の104.66ドルになった。米国の製造業の景気の指数(ISM)も55.5と予想を上回った。ダウは+0.9%前後まで上げたが、ナスダックは昼すぎに小さく下げに転じた。景気は強いのに、AI の銘柄だけが重かった。

これをバブルの兆しと見るかで、論者は割れた。直接の言い合いではない。テック評論家の Ed Zitron/エド・ジトロンは『バブルは一日で終わるのではなく、出来事が続いて終わる』と書いた。ソフト開発の Replit が Anthropic を離れ、もっと値引きした OpenAI に移ったという報道を引き、値引きは長く続かないと読んだ。経済ブロガーの Noah Smith/ノア・スミスは『Anthropic の堀は Claude だ』と書いた。守りの強みは知能そのものにあり、値下げの競争になるという見方は誤りだという。計算資源の取引の会社 SF Compute の Evan Conrad/エヴァン・コンラッドは、半年のうちに、信用のある会社しか計算資源を手に入れられなくなると予想した。

研究と安全:ラボが自分の基準に近いと書いた

Anthropic は、能力が上がるのに合わせて安全策を強める約束(RSP)を自ら定めている。報道によれば、上場の書類には、将来のモデルがその中の『AI による研究の劇的な加速』の基準を間もなく満たしうると書かれた。いまのモデルで、そう認定されたものはない。研究の判断の一部に、人の審査を入れることも考えているという。社内で Claude を使った量は、定価に直すと1〜9月に250倍になった。9月には、新しいコードの90%超を Claude が書いていた。AI が AI の研究を速める段階に近いと、ラボが証券の書類で書くのは初めてである。投資家に向けた売り文句であり、同時に安全の約束が働き始める予告でもある。

能力の測り方でも動きがあった。調査会社の SemiAnalysis/セミアナリシスは、チップの設計や法務など11の分野で、AI に長い仕事を任せる新しい指標『GDPx』を出した。首位の Opus 5.5 でも12.0%しか解けなかった。詳細は記事「SemiAnalysisの新指標GDPx、首位Opus 5.5でも12%」で報じた。OpenAI も、育児や家計、役所の手続きを測る『LifeVal』を出した。GPT-6 Astra は80.6%だった。ただ、課題もデータも公開しておらず、ほかの会社のモデルも測っていない。外の人が確かめられない、自社の物差しである。

安全を重んじる人たちの間では、ラボの中に残るべきかで言い合いが続いた。人気ブロガーの Scott Alexander/スコット・アレクサンダーは、安全を重んじる社員がラボを辞め、開発を止める運動に回るべきだという考え(SURA)に反対している。中から全社に圧力をかけつつ、政府の支持を広げるほうがよいという。これに、開発を止める側の Mikhail Samin/ミハイル・サミンが正面から反論した。政府が自ら止め、他の国にも止めさせることはできる。ラボの中の安全派の政治の力は『ほぼゼロ』で、辞めることは報道を呼ぶという。Alexander は、Samin にはまだ答えていない。

政策と電力:データセンターが投票にかかる

OpenAI は、送電網が苦しいときにデータセンターの電力を減らす『Grid Protectors Program』を始めた。最初の拠点はジョージア州で、電力会社が最大1,000MW を減らせると伝えられている。州の電力の規制委員会の選挙の前日に出した。詳細は記事「OpenAI、送電網が苦しい時はデータセンターの電力を最大1GW削る」で報じた。11月3日の中間選挙では、10の州で約41件、データセンターの是非を問う地元の住民投票があると報じられている。電気代への不満が、AI の設備の立地をじかに左右し始めた。OpenAI は選挙の後、最も強い AI に義務としての安全の上限を課すよう、議会に働きかけると Axios が報じた。

同盟国では、韓国が2027年の予算で、AI に21.3兆ウォン(約160億ドル)をあてる。2026年のほぼ2倍である。詳細は記事「韓国2027年予算、AIに21.3兆ウォンでほぼ倍増」で報じた。台湾の立法院では、AI のチップを中国へ密輸することを罰する法案の公聴会が開かれたと報じられた。最長10年の懲役を科す案である。

動きがなかったところ

Anthropic の共同創業者の Jack Clark/ジャック・クラークは、同じ日に自分のニュースレターを出した。だが、上場にも研究の加速の記述にも触れなかった。安全の陣営からも、この記述へのまとまった反応は見つかっていない。ラボが自ら危険の線に近いと書いたのに、外からの点検はまだ始まっていない。

Google DeepMind は、新しいモデルの Gemini 4 Carbon について、能力と危険を示す説明書(モデルカード)と、安全の基準に照らした報告を今も出していない。Anthropic が書類で基準への接近を書いた日に、競合は黙ったままである。

米国の輸出の規制で、中国企業の関連会社を対象に含める『50%の規則』の停止は、11月9日に終わる。財務長官は延ばすと述べたが、正式な告示はまだ出ていない。出なければ11月10日に元に戻り、中国に関連会社や取引先を持つ日本の会社も、確認の手間が増える。

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