Apple は11月2日の米国市場の取引終了後、7〜9月期(Apple の会計年度では第4四半期)の決算を発表した。決算の資料は Apple の発表文と SEC(米証券取引委員会)に出した書類である。John Ternus が最高経営責任者(CEO)になってから、初めての決算になる。売上も利益も市場の予想を上回った。しかし、年末商戦を含む10〜12月期の粗利益率(売上から原価を引いた残りが、売上に占める割合)の見通しは、予想より低かった。主な理由はメモリの値上がりだと CNBC などが伝えている。AI のデータセンター向けの需要が生んだメモリ不足が、パソコンやスマートフォンを作る会社の利益を削り始めた。そのことが、これまででいちばんはっきり表れた決算である。
日本の会社にとって:メモリの値上がりが Apple の原価にまで効いてきた。社員の iPhone や Mac、パソコンをまとめて買い替える計画がある会社は、値引きが細るか値上げが来ることを考えて予算を見ておきたい。逆に、キオクシアのようなメモリを作る日本の会社と、その取引先にとっては追い風が続いていることになる。
7〜9月期は予想を上回った
Apple の発表と SEC に出した書類によれば、7〜9月期の売上と利益は、どちらも市場の予想を上回った。Ternus は、長く Apple のハードウェアの開発を率いてきた人物である。最初の決算で、まず数字の上では合格点を出したことになる。
ただし、株価が見ているのは過ぎた3か月よりも、これからの3か月である。今回の決算でいちばん注目されたのも、10〜12月期の見通しだった。
年末の利益率の見通しは予想を下回った
10〜12月期は、新しい iPhone が年末商戦で最も売れる時期で、1年でいちばん大きな四半期になる。その粗利益率の見通しが、市場の予想より低かった。Apple が挙げた主な理由はメモリの値上がりだと、CNBC と Quartz は伝えている。
粗利益率が下がるのは、売上が落ちるからではない。1台を作る費用が上がっているのに、その分を値段に上乗せしきれないからである。iPhone も Mac も、DRAM(作業用のメモリ)とフラッシュメモリ(保存用のメモリ)を大量に使う。メモリの値段が上がれば、そのまま原価が上がる。
AI のデータセンターが、メモリを奪い合っている
メモリが値上がりしているのは、AI のデータセンターが大量に買っているからだ。AI の計算に使う GPU(画像処理用の半導体を AI の計算に転用したもの)には、HBM(積み重ねて速くした高価なメモリ)が欠かせない。メモリを作る会社は、もうけの大きい HBM とデータセンター向けに生産を振り向けている。そのぶん、スマートフォンやパソコン向けのメモリが足りなくなり、値段が上がる。
メモリの奪い合いは、AI の会社のトップが直接動くところまで来ている。OpenAI の CEO の Sam Altman は10月31日、韓国で Samsung の幹部約50人と会い、メモリの供給と AI のインフラについて話したと Bloomberg が報じた。値動きの先行きについては見方が分かれている。キオクシアの見通しからは、値上がりは頭打ちに近いという見方が出た。一方で、韓国の2社(Samsung と SK hynix)は値上げを続けている。
今回の決算で重いのは、それが Apple に起きたことである。Apple は世界でも指折りの大量の買い手で、部品の値段を交渉する力も、高い値段を客に受け入れてもらう力も、端末を作る会社の中では最も強い。その Apple でさえ、年末の利益率の見通しを予想より下げた。交渉の力が弱いパソコンやスマートフォンの会社では、しわ寄せはもっと大きくなりうる。
これから見ておく点
1つ目は、メモリの値上がりがいつまで続くかである。頭打ちが近いというキオクシアの見方と、値上げを続ける韓国の2社のどちらが正しいかで、来年の端末の値段が変わる。2つ目は、ほかの端末の会社が値上げや利益率の悪化を口にするかどうか。スマートフォン向けの半導体を設計する Qualcomm と Arm は、11月4日に決算を出す。3つ目は、AI の会社とメモリの会社が、大きな供給の取引を結ぶかどうかである。結べば、端末向けのメモリはさらに細る。
AI に向けた投資は、これまでデータセンターや電力の話として語られることが多かった。今回の Apple の決算は、その投資が手元の iPhone やパソコンの値段と、それを作る会社の利益にまで及び始めたことを示している。




