韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領が国会に出した2027年の予算案で、AI に21.3兆ウォン(約160億ドル)が充てられたと報じられている。CNBC とソウル経済(11月2日)によれば、2026年のほぼ2倍にあたり、米国の同盟国が1年に出す AI の公的な支出として最も大きいという。中身の柱は2つあると伝えられる。自前の AI モデルに4.7兆ウォンを出すこと、そして防衛で、AI とドローンを土台に有人と無人を組み合わせる方針を掲げたことだ。
日本の会社にとって:今日すぐに日本の会社の仕事が変わるわけではない。関係してくるのは、韓国に取引先や拠点がある会社、半導体の装置や素材、データセンターの部材を韓国に売る会社、それに韓国語と日本語の両方で AI のサービスを使う会社だ。隣の国の政府が AI に向けて1年で約160億ドルの注文を出せば、GPU(AI の計算に使う半導体)や電力の設備を取り合う相手が1つ増えることになる。
予算案の中身:AI に21.3兆ウォン、ほぼ倍
報道によれば、AI に充てる額は21.3兆ウォンで、2026年の予算のほぼ2倍になる。Korea Times(11月2日)は、李大統領がこの予算案を過去最大のものとして国会に支持を求め、将来の成長のための技術の基金を前面に出したと伝えている。
21.3兆ウォンという数字が何を含むかには注意が要る。AI の研究開発、計算資源、人材、各省庁で AI を使う事業のどこまでを AI の予算と数えるかで、金額は大きく変わる。ここで挙げた額と内訳は、どれも報道が伝えたものだ。韓国政府の予算の資料そのものは、確かめられていない。
自前の AI モデルに4.7兆ウォン
内訳でいちばん目を引くのは、自前の AI モデルに4.7兆ウォンを出すという点だと報じられている。米国や中国の会社のモデルに頼らず、韓国の中で基盤となる AI モデルを持とうとする考え方で、ソブリン AI(主権を持つ AI)と呼ばれる。
韓国はこれまでも、国内の企業のチームを選び、基盤モデルの開発を競わせる事業を進めてきた。今回の予算案はそこに、AI の予算全体の2割を超える額を充てる形になる。モデルを作るには、計算資源とデータ、それに研究者が要る。この額で、米国や中国のフロンティア(最先端)のモデルとの差をどこまで縮められるかが問われる。
防衛でも AI とドローン:有人と無人の組み合わせ
報道によれば、予算案は防衛でも、AI とドローンを土台にした有人と無人の組み合わせを掲げた。人が乗る戦闘機や戦車と、AI で動く無人機を一緒に動かすやり方だ。人が判断を受け持ち、偵察や危ない任務は無人機に任せる。
AI の予算は、産業の育成だけでなく安全保障にも向けられていることになる。米国の同盟国の中で、AI を国の守りの土台に組み込む動きがはっきり予算に出た例といえる。どの装備にいくら出すのかは、報道では確かめられていない。
『米国の同盟国で最大』をどう読むか
CNBC などは、この額を、米国の同盟国が1年に出す AI の公的な支出として最大だと伝えている。ただ、国ごとに AI の予算の数え方が違うので、横に並べて比べるのは難しい。日本も、2030年度までの数年で、半導体と AI に10兆円以上の公的な支援を出す枠組みを持っている。しかしこちらは、何年かにわたる半導体の工場への支援を中心にした数字で、1年あたりの AI の予算とは中身が違う。
それでも、韓国が1年で AI の予算をほぼ倍にしたという方向ははっきりしている。半導体のメモリで世界の首位を争う国が、モデル、計算資源、防衛まで AI を国の柱にしようとしている。
まだ決まっていないこと
これは予算案で、まだ決まった予算ではない。韓国では、国会が12月の初めまでに次の年の予算を決めることになっている。審議の中で、AI の額や内訳が削られたり、組み替えられたりすることはありうる。
この先確かめたいのは3つある。韓国政府の予算の資料で、21.3兆ウォンの内訳と、2026年と比べるときの数え方。4.7兆ウォンを、どの会社やチームのどんなモデルに出すのか。そして防衛の有人と無人の組み合わせに、どれだけの額をいつまでに出すのかだ。




