OpenAIが、送電網が苦しいときにデータセンターの電力を減らす取り組み『Grid Protectors Program』を始めたと報じられている。どれだけ減らせるかは、電力会社と拠点ごとに決める。最初の拠点はジョージア州にある。地元の電力会社 Georgia Power は、この拠点が使う3.2GW(ギガワット)のうち、最大1,000MW(=1GW)を減らせるという。発表は11月2日とされる。電気料金を決めるジョージア州の公益事業委員会の選挙の前日だった。
日本の会社にとって:いまのところ直接の影響はない。ただ、日本でもデータセンターが増えると、電気が足りないときに誰が使用を控えるのかが問題になる。データセンターを建てる、借りる、近くに工場を持つといった会社は、電気代と電気の確保の両面で、この新しいやり方を知っておく価値がある。
何を約束したのか
報道によれば、この取り組みの中身は、電力の業界で『デマンドレスポンス』と呼ばれるものだ。電気の使い方を、そのときの需給に合わせて変える仕組みである。夏の暑い日の夕方や寒波の朝のように、電気が足りなくなりそうなときに、電力会社の求めに応じて、データセンターが使う電気を減らす。
大事なのは、減らす量を一律に決めない点だ。拠点ごとに、地元の電力会社と話し合って決めるとされる。送電網の余裕は地域によって違うので、減らせる量と、どんなときに減らすかは、拠点ごとに変わることになる。
日本にも、似た仕組みはある。工場やビルが電力会社と契約し、電気が足りないときに使用を控える代わりに、対価を受け取る形だ。OpenAIは、これを巨大なAIの計算拠点でやろうとしている。
ジョージア州の拠点では、3分の1近くを減らせる
最初の拠点の数字は大きい。この拠点の電力の規模は3.2GWで、Georgia Power はそのうち最大1,000MWを減らせると報じられている。全体の約3割にあたる。1GWは、大きな発電所1基の出力に近い量である。
電力会社から見ると、この1GWは、いざというときに使える予備の電源に近い働きをする。新しい発電所を建てなくても、需給が苦しい時間だけ、データセンターに使用を控えてもらえるからだ。そのぶん、ふつうの家や会社への電気を守りやすくなる。プログラムの名前にある『Protectors(守る人)』は、この意味だとみられる。
ただし、報道からは分からないことも多い。年に何回、何時間まで減らせるのか。減らしている間、AIの計算をどう続けるのか(ほかの拠点に移すのか、止めるのか)。電力会社や州から、見返りに料金の割引などを受けるのか。ジョージア州の次にどこの拠点で結ぶのか。この記事では、OpenAIの発表の原文を確かめられていない。数字は報道によるものとして読んでほしい。
なぜ選挙の前日なのか
米国では、AIのデータセンターが電気を大量に使うことに、地元の反発が強まっている。データセンターのために発電所や送電線を増やせば、その費用がふつうの家庭の電気料金にはね返る、という不安がある。電気料金を認めるのは、州の公益事業委員会である。ジョージア州では、その委員を選挙で選ぶ。
11月3日には、ジョージア州を含むいくつかの州で、公益事業委員会や知事の選挙があった。電気料金とデータセンターは、争点の1つになっていた。OpenAIの発表は、その前日に出た。『AIは地元の電気を奪うのではなく、苦しいときには譲る』という答えを、投票の直前に示した形である。
報道は、この発表のタイミングを、地元の反発への答えとして伝えている。AIの会社が、計算の速さや値段ではなく、電力網とどう付き合うかで地元の理解を得ようとしていることになる。
これから見るべき点
まず、選挙の結果である。データセンターに厳しい委員が選ばれれば、ほかの州でも、電力会社が同じような約束をデータセンターに求める流れが強まるかもしれない。
次に、ほかの会社が続くかどうかだ。データセンターを持つ大手は、OpenAIのほかにもある。拠点ごとに電力会社と減らす量を決めるやり方が、業界の当たり前になるのか。それとも、OpenAIだけの約束にとどまるのか。
最後に、約束が本当に守られるかである。最大1,000MWは、あくまで減らせる上限の数字だ。実際に電気が足りなくなった日に、どれだけ減らしたのか。その記録が出てくるまで、この取り組みの重さは測れない。




