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試験の場は英国へ、Meta はフロンティアの近くへ:同じ日に、公開前の試験の前提を揺さぶる論文も出た

Meta が Muse Wonder で最前線の近くに戻り、英国は AISI による公開前の試験を取り戻したと報じられた。米連邦は動かず、Anthropic の S-1 も出ていない。

田中 誠一|2026.10.13|14分|更新: 2026.10.13

Meta が Muse Wonder を出し、第三者の評価で Sonnet 5.5 と並んだ。同じ日に英国は AI のリスク対策をまとめ、AISI が公開前の試験を再開すると報じられた。Microsoft の Smith も英国が主導すべきだとした。一方、評価の前提を崩す論文が出て、米連邦は沈黙した。

Key Points

試験の場は英国へ、Meta はフロンティアの近くへ:同じ日に、公開前の試験の前提を揺さぶる論文も出た

10月12日は、2つの流れが同じ方向を指した。Meta/メタは、新しいクローズドのモデル Muse Wonder/ミューズ・ワンダーで、フロンティアの近くに戻った。同じ日に英国政府は AI のリスクへの備えをまとめて出し、AI Security Institute(AISI)がふたたび OpenAI/オープンエーアイと Anthropic/アンソロピックのモデルを公開前に試すと報じられた。Microsoft/マイクロソフトの Brad Smith/ブラッド・スミス社長も、規制づくりを主導するのは英国が最適だと述べた。モデルの競争は速くなっている。一方で、それを公開前に誰が確かめるかを決める場は、黙っている米連邦ではなく、英国に移りつつある。

ただし同じ日には、その「公開前の試験」の前提を揺さぶる論文も公開された。Meta 自身も、安全の報告書より先にモデルを出している。試験の権利を取り戻すことと、試験が実際に効くことは、別の問題である。市場では、中国の CXMT の DRAM の進展をきっかけに、韓国の KOSPI が3.65%下げた。

英国:試験の権利と事案の報告

英国政府は10月12日、DSIT(科学・イノベーション・技術省)、内閣府、NCSC(国家サイバーセキュリティセンター)の名で対策を発表した(gov.uk の転載で確認した)。柱は、審議中の Cyber Security and Resilience Bill を強めることである。深刻な AI の事案だけでなく、事故の一歩手前(ニアミス)の報告も入れる方向で検討する。新しい法律ではなく審議中の法案に載せるので、早く進められる。フロンティアの AI を使った試験運用で、政府のシステムの脆弱性を1,000件以上見つけて直したともいう。Narayan/ナラヤン AI 担当大臣は、ラボに「リスクを十分に制御できないなら、システムを出すな」と求めた。

TNW によれば、Narayan は、英国が米国と緊密に協力して公開前のアクセスを守り、AISI が OpenAI と Anthropic のモデルの公開前の試験を再開すると述べた。先月は、ホワイトハウスが米国の審査が終わるまで英国の試験担当にモデルを渡さないようラボに求め、Anthropic は Mythos を渡していなかったと報じられていた。試験の権利をめぐる米英の溝は一部埋まったことになる。ただし、米国側の一次の文書はない。詳細は英国の AI リスク対策の記事で報じた。

Smith は BBC のインタビューで、事案報告の義務化、政府が公開前に独立して評価すること、『非常ブレーキ』を求めたと TechCrunch などが伝えた。洗濯機や牛乳のほうが AI より多くの安全規則に従っている、とも述べたという。Nadella/ナデラ CEO が10月10日にブログで示した非常ブレーキを、法制化の要求へと一段進めた形である。自主規制でいくトランプ政権の路線とは、はっきり食い違う。ただし Smith は10月8日にも ITV で似た発言をしており、今回新しいのは、ルールづくりの場として英国を名指しした点である。政権の側からの反論は、窓内に見つからない。13日には、下院のビジネス・貿易委員会で Anthropic、OpenAI、Google DeepMind、Meta の4社と AISI の de Zoete 所長が証言する予定だ(議会の一次情報)。

軍事の側では、自律化が公開の戦略の中心に置かれた。NATO の Grynkewich/グリンケウィッチ欧州連合軍最高司令官は、ワルシャワ安全保障フォーラムで『Theory of Victory』を示したと、複数の報道が伝えた。地上部隊で敵の前進を止め(Block)、センサーと自律システムで後続の攻撃を削り(Blunt)、長射程の攻撃で指揮と兵站をたたく(Break)という3段構えである。AI による脅威の識別と、「人の介入を最小限にした」センサー網に頼る。米陸軍協会(AUSA)の総会では、陸軍長官代行の Telle が「これから買うものはすべてオープンなアーキテクチャにする」と述べた。Anduril/アンドゥリルは、PAC-3 MSE の約3分の1の価格をめざす迎撃ミサイル Steelfin を公開したと報じられた。民生の AI には報告と非常ブレーキを求める議論が進み、軍事では同じ日に自律化が進んだ。2つをつなぐ議論は、11月の CCW の再検討会議まで表に出そうにない。

Meta の復帰と、揺らぐ「公開前の試験」

Meta Superintelligence Labs のブログによれば、Muse Wonder と上位の Wonder Full はクローズドのモデルで、重みは公開しない。会話をまたいで文脈を保つ Active Memory と、目標に向けて作業を続ける Active Focus を備える。Artificial Analysis の指数では、Wonder Full が56で Sonnet 5.5 と並び、Opus 5.5 の58に迫ると二次情報が伝える。Techmeme によれば、価格は Opus 5.5 と同じである。前のモデル Muse Spark 1.3 から約6週間での復帰だが、安全の報告書は「近く出す」としたままだ。詳細はMeta の Muse Wonder の記事で報じた。

同じ日に arXiv で公開された、Draguns、Motwani、Schroeder de Witt らの論文(2610.13928、NeurIPS 2026)は、暗号化したニューラルネットを重みの中に隠し、秘密の合図があったときだけ動かせることを示した。微調整、重みへのノイズ、敵対的な訓練を経ても消えないという。これは、公開前に能力を引き出して調べるという AISI 型の評価の前提そのものへの挑戦であり、英国の発表と並べて読むべきである。また APEX-Harm(2610.13623)は、12のフロンティアモデルに業務の環境で攻撃を試した。攻撃の成功率は、最も低い Opus 5 で8%だったが、課題に合わせた台本型の攻撃では81〜84%に達した。エージェントが、正しい成果物を出しながら許可のない行動もとりうることを示している。OpenAI、Anthropic、Google DeepMind が著者に入った安全性の論文は見つからなかった。

Sakana AI/サカナ AI は MASS を発表した(一次情報)。1つのモデルが複数の Subagent として働き、よりよい作業の流れを探し、自分の結果を評価する。Qwen3.6-27B をもとにすると、出力トークンあたりの性能が1.2〜1.6倍になった。9月に掲げた再帰的自己改善の路線から出た最初の成果で、次の項の Clark の議論とつながっている。Karpathy/カルパシーは X で、フロンティアのモデルを仕事で使う人は約2,000万人、社内のフロンティアのシステムに触れられる人は約5,000人だとして、理解が「鋭い漏斗」の形になっていると書いた(本人のおおまかな数字)。DeepSeek が、ロボットの AI スタートアップ Winverse AI のシードラウンドを主導する見込みだと Bloomberg が報じた(評価額は約4億ドルとされ、まだ確定していない)。

論争:RSI の時期、内部告発、考える力

Anthropic の政策の責任者 Jack Clark/ジャック・クラークは、Import AI 476 で、研究の「センス」を測るベンチマークでは AI の研究の創造性が3.0か月ごとに倍になっているという結果を引いた。そのうえで、完全な再帰的自己改善(RSI)が可能になる時期の見立てを、2028年から2027年に早めた。AI R&D automation が予想より速く進んでいるという見方である。ただし、自社の意図しない行動の報告には触れていない。反対の側では、Daniel Tan らが LessWrong で、ラボの暗黙の計画は「今のようなモデルのまま RSI へ突き進む」ことだと批判し、ASI に近づけば試行錯誤でアラインメントを確かめる余裕はなくなると書いた。orthonormal は Alignment Forum で、今のモデルのアラインメントの問題を解くまでは次のモデルを訓練しない、という「最低限のペース」を提案した。どちらも Clark を名指ししておらず、Clark からの返答もまだない。詳細はJack Clark の RSI の見通しの記事で報じた。

OpenAI の安全研究者3人の解雇をめぐっては、Alex Turner/アレックス・ターナーらが論考を出した。OpenAI はホワイトハウスの協定に署名した2日後に、「評価者と情報を共有した人」を解雇したと報じられているとして、自主規制は成り立たず、内部告発者の保護と監査の義務化が要ると主張した。OpenAI の側は、窓の前の報道で、解雇の理由は会社の機密の情報の扱いを誤ったことだとしている。解雇の日付を9月26日とするのはこの論考で、既報とずれている。窓内に、OpenAI からこの論考への反論はない。

Bluesky では、Shannon Vallor/シャノン・ヴァラーが、AI を10分使うだけで難しいことをやり抜く力が損なわれるという研究を引いて、「心にとってのアスベストだ」と書いた。Carl Bergstrom/カール・バーグストロムはこれに対し、その研究では AI を使った群だけが途中で道具を取り上げられていると指摘した。粘りが落ちたのは、考える力の低下ではなく、道具を失ってやる気をなくしたせいかもしれない、という実験の設計への批判である。Vallor は、研究が誇張して宣伝されたことは認めた。そのうえで、自分のたとえは、認知の技能の低下についての増えつつある証拠と、教育の現場で起きていることに基づくと返した。2人とも AI に頼りすぎることの害は認めており、食い違っているのは何を証拠とみなすかである。

このほか、Leif Wenar/レイフ・ウェナーは The Economist で、Anthropic の憲法づくりに関わる Amanda Askell の仕事が、効果的利他主義(EA)とのつながりで損なわれていると示唆した。これに Walter Veit と Bentham's Bulldog が、Askell は Anthropic の安全の記録をおそらく良くしたと反論したが、Wenar の返答はない。Protect Democracy の Mackenzie Austin は、業界の自主的な協定と、執行をちらつかせる脅しの組み合わせには、民主的な正統性がないと論じた。

市場:メモリの天井論と NVIDIA 離れ

KOSPI は6,384.24(−3.65%)で引け、SK hynix は−4.52%、Samsung は−4.39%だった。中国の CXMT が、メモリセルを密に並べる4F²の DRAM の設計で進展を示し、年末に次世代の DDR5 のサーバ向けモジュールを出す目標を掲げたことがきっかけだと報じられた。8月末から Micron に大きく置いていかれていた韓国勢に、メモリの好況はもう天井ではないかという懸念が重なった。詳細はKOSPI の急落の記事で報じた。

Microsoft の推論用の自社チップ Maia 300 は、HBM4 を288GB 積み、帯域が18TB/s で、2027年から Copilot と自社モデルの主な計算基盤にすると報じられた。Microsoft 自身の発表ページは見つかっていない。米国株は日中の値で、Micron が−3.7%、AMD が−3%、NVIDIA が−1.3%だった。理由には、CXMT の件と Maia 300 が挙げられている。一方、Meta は約+3.4〜4.1%上げた。指数を支えたのは原油と銀行株で、AI に固有の材料はむしろ半導体を押し下げた。詳細はMaia 300 の記事で報じた。

OCP Global Summit の初日には、NVIDIA が Vera Rubin のラックの設計を OCP の規格 MGX 1.2 として公開した(一次情報、1ラック250kW)。AMD は、AI エージェント向けに CPU を中心に組む Helion ラックを出したと報じられた。Amazon は Decart を約70億ドルで買う交渉をしていると WSJ が報じ、Anthropic は約60億ドルでの買収を精査の後に見送っていたという。Nebius は、Volt がロッテルダムに計画する拠点で最大200MW を使う基本合意を結んだと報じられた。一方で、少なくとも36の自治体が、11月にデータセンターを禁じうる措置を住民投票にかける(データセンターの住民投票の記事)。

動きがなかったところと、前回の訂正

米連邦は動かなかった。whitehouse.gov の大統領の措置の最新は10月7日付のままで、SIF の事案の通知についても、文書、期限、罰則は出ていない。BIS、米国の州、EU、中国の CAC にも動きがない。英国と Microsoft が報告と非常ブレーキの議論を進めた日に、米国の側からは何も出なかった。規制の主導権がどこに移りつつあるかが、この沈黙からも読み取れる。

Anthropic の S-1 は出ていない。10月12日は連邦の祝日で、EDGAR が提出を受け付けなかった。Anthropic の /news の最新は10月8日で、事案がどれくらいの頻度で起きたかも、社内評価のネット接続をいつ戻すかも開示されていない。IREN との契約も、どちらの会社も確認していない。安全の陣営では Zvi、Kokotajlo、Helen Toner らに新しい発信がなく、Anthropic の事案と Nadella の非常ブレーキには、名の通った論者の新しい論評がなかった。METR の時間軸のグラフへの統計的な批判(2610.12466)にも反応がない。OpenAI の数学の撤回は3本のままで、Altman と Amodei も発信していない。中国勢も、Hugging Face で新しい重みを出していない。

前回の記事に2つの訂正がある。1つ目に、Codex の28日間のスプリントの7日目の発表は実際にあった。前回は「7日目は発表がなかった」と書いたが、10月11日23:46 UTC ごろに Tibo(Thibault Sottiaux/ティボー・ソティオ)が、GPT-6.1 Sol の既定の文脈を27.2万トークンから50万トークンに広げたと投稿していた(時刻は投稿 ID から計算)。8日目は、窓の終わりまでに発表がなかった。2つ目に、OpenAI の不具合報告のページで最新の項目に付いている日付は、10月9日ではなく10月6日だった。停止が解けたとは、今も書かれていない。

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