AI のデータセンターへの反対は、住民の苦情の段階を越えたと報じられている。米国の州政府を取材する Stateline は10月12日、11月の中間選挙で少なくとも36の自治体が、データセンターの建設を禁じうる措置を住民投票にかけると伝えた(Stateline)。同じ記事は、地元にデータセンターを建てることに賛成が11%、反対が65%という世論調査の結果も挙げている。
注意:本稿は報道ベースである。今回の取材では記事の本文に直接届かず、36の自治体がどこか、措置が全面的な禁止なのか、一時的な凍結やゾーニングの変更なのか、世論調査を誰がいつ何人に行ったのかは確かめられていない。以下の数字は、いずれも Stateline の報道によるものとして読んでほしい。
何が報じられたか
Stateline の報道の要点は2つある。1つは、データセンターをめぐる争いが、これまでの郡や市の議会での公聴会や陳情から、有権者が直接賛否を決める住民投票に移ったことである。少なくとも36の自治体で、11月3日の中間選挙の投票用紙に、建設を止めうる措置が載ると報じられている。
もう1つは、世論の偏りの大きさである。地元への建設に賛成は11%で、反対の65%はその約6倍にあたる。残りの約4分の1は、どちらでもない、または分からないという回答とみられる。調査の設計が分からないので、この差をそのまま全米の民意として扱うことはできない。それでも、住民投票という形式では、多数の反対が結果に直結しうる。
苦情から投票へ — 何が変わるのか
これまでデータセンターへの反対は、騒音、水の使用、電気料金の上昇、景観をめぐる苦情として出てくることが多かった。苦情であれば、事業者は地元の議会や当局と交渉し、税の減免や地域への寄付と引き換えに建設を進められた。
住民投票になると、この交渉の回路が細くなる。賛否は有権者が一度に決め、可決された措置は議会の判断より覆しにくい。賛成11%・反対65%という数字が実際の投票で近い形で出るなら、36の自治体の多くで建設が止まる可能性があると報じられている。事業者から見れば、用地の選定の段階で、電力の契約や送電の容量に加えて、地元の投票の見通しを読む必要が出てくる。
中間選挙と同じ日に投票が行われる点も重い。候補者がデータセンターへの立場を争点にすれば、住民投票の結果が州や連邦の選挙の議論にまで広がりうる。Stateline の記事の題も、データセンターへの反発が中間選挙を左右しうる、という見方を示している。
建てる側の事情
反対が投票に移ったのは、建設の需要がかつてない規模に膨らんでいる最中である。既報のとおり、The Information は10月11日、Anthropic がパートナーに約5,300億ドル分のデータセンターのリースを急がせていると報じた(有料記事で本文は読めておらず、Anthropic の確認もない)。アナリストは、245MW の拠点1つで月約13億ドルの収入になると見積もっているという。同じ報道では、Anthropic が IREN とクラウドの契約を結んだとも伝えられている。
こうした計算資源の確保は、最終的にはどこかの自治体の土地に建物と変電設備を置くことで実現する。ラボがモデルの訓練と推論のために求める容量が大きくなるほど、地元で拒まれる場所が増えたときの影響も大きくなる。計算資源の制約を決めるのは、チップや電力の供給だけではなくなりつつある。
これからの日程
11月3日の投票までに、各地でデータセンターをめぐる手続きが続く。本紙が追っている範囲では、ニューメキシコ州の Project Jupiter の公聴会が10月19日にあり、期限は11月23日である。メンフィスとバージニア州ラウドン郡の件は10月20日、ケンタッキー州レキシントンのゾーニングは10月22日に動く予定である。事業者が地元との秘密保持契約(NDA)をやめる動きが反対を和らげるかどうかも、注目点として残っている。
確かめるべきことは多い。36の自治体の一覧と、それぞれの措置の中身。世論調査の実施主体、時期、対象。そして11月3日の開票で、建設を禁じうる措置がいくつ可決されるか。本紙は、Stateline の一次の資料と各自治体の選挙管理の公示に当たり、続報で報告する。




