韓国の株式市場で、メモリの2社が大きく売られた。報道によれば、KOSPI(韓国総合株価指数)は3.65%下落し、SK hynix は4.5%、Samsung Electronics は4.4%下げた。指数の中で時価総額の大きいこの2社の下げが、指数を押し下げた形だと伝えられている(Investing.com、TradingKey)。
目を引くのは時期である。Samsung が過去最高の決算を出した直後だと報じられている。業績がもっとも良いときに株が売られたことになる。市場が見ているのは今の利益ではなく、この好況がどこまで続くかと、誰に追い上げられているかだ、という見方ができる。
なお、本稿は報道ベースである。3本の出典はいずれも本文を直接読めておらず、Samsung の決算の具体的な数字、外国人の売り越しの金額、CXMT の発表の細部は確かめられていない。数字は見出しにある騰落率に限り、それ以外は報道の要旨として書く。
きっかけは CXMT の4F² DRAM と報じられている
報道によれば、売りのきっかけは中国の DRAM 大手 CXMT(長鑫存儲)が、4F² と呼ばれる構造の DRAM で進展したという話だった。
4F² は、DRAM のメモリセル1つが占める面積を表す。F は加工の最小寸法で、いま量産されている DRAM の多くは6F² である。セルを縦に立てるトランジスタ(垂直チャネル)などを使って4F² にできれば、同じ加工の細かさでも、同じ面積により多くのセルを詰められる。Samsung と SK hynix も次の世代の候補として研究してきた構造である。
中国のメーカーは、米国の輸出規制で最先端の露光装置を手に入れにくい。微細化で正面から追いつけないなら、セルの構造を変えて密度を稼ぐ道がある。CXMT の4F² が、その回り道で韓国勢との差を縮める手段になりうる、と市場が受け止めたと読める。進展がどの段階(研究、試作、量産の準備)なのかは、報道からは確かめられていない。ただ、株価の反応を見る限り、段階の細部よりも、方向がはっきりしたこと自体が重く受け止められた。
好決算が支えにならなかった:天井論の織り込み
Samsung の過去最高の決算は、AI のデータセンター向けの需要で、HBM(広帯域メモリ)と汎用 DRAM の値段がともに上がってきた結果である。ふつうなら株価を支える材料になる。
それでも売られたのは、メモリが典型的な循環産業だからである。値段が上がると各社が投資を増やし、供給が追いつき、やがて値段が下がる。過去最高の利益は、その循環の山の頂上に近い印にもなる。そこに中国の新しい供給の話が重なると、山の後半を早めに織り込む動きが出やすい。今回の下げは、好決算と CXMT の話が続けて出たことで、天井論が一気に表に出た例とみられる。
外国人の売りと、世界の半導体株からの取り残され
ソウル経済(Seoul Economic Daily、10月12日付)は、Samsung と SK hynix が世界の半導体株の上げに取り残されていると報じた。下げを主導したのは外国人の売りだとされる。
AI の投資で米国や台湾の半導体株が買われる一方で、韓国のメモリ2社が置いていかれるという構図は重い。AI の需要そのものを疑う売りなら、半導体株全体が下がるはずだからである。韓国のメモリだけが売られるのは、需要ではなく、メモリの値段の循環と、中国勢との競争に向けた懸念だと読める。外国人の投資家は、この2点を韓国株から資金を引く形で表した。
次に確かめるべきこと
天井論が当たっているかどうかは、これからの数字で試される。直近では、ASML の決算(10月14日)が、メモリ各社の装置の発注、つまり供給の増え方を示す。TSMC の決算(10月15日)は、AI 向けの需要がまだ伸びているかを示す。CXMT については、4F² の量産の時期と歩留まりが、報道ではなく会社自身や装置メーカーの資料から出てくるかが焦点になる。
現時点で言えるのは、市場が過去最高の利益よりも、その先の値段と中国の追い上げを重く見始めたということである。数字が確かめられていない部分は多い。それでも、好決算の直後に指数を3%以上押し下げるほどの売りが出たこと自体が、メモリの好況についての見方が変わり始めた証拠と受け止められている。




