プロダクト & モデル確認済Read in English

Pinecone、検索エンジンをPostgres拡張で公開 数字は自社測定

pg_pinecone は Apache 2.0。アカウントなしで既存の Postgres の中で RAG の検索を動かせ、規模が大きくなれば Pinecone のクラウドへ移れる。索引が pgvector の約30分の1という数字も、速さの数字も、Pinecone 自身が測ったものだ

鈴木 理恵|2026.11.01|7分|更新: 2026.11.01

Pinecone が自社のベクトル検索エンジンを、Apache 2.0 の Postgres 拡張「pg_pinecone」として公開した。アカウントなしで既存の Postgres の中で動き、大きくなれば自社クラウドへ移れる。索引は pgvector の約30分の1とするが、性能の数字はすべて自社の測定で、第三者の検証はまだない。

Key Points

Pinecone、検索エンジンをPostgres拡張で公開 数字は自社測定

ベクトルデータベースの Pinecone が、自社の検索エンジンを Postgres の拡張「pg_pinecone」として公開した。ライセンスは Apache 2.0 である。Pinecone のアカウントを作らなくても、すでに動いている Postgres の中で RAG の検索を動かせる。データが増えれば、Pinecone のクラウドへ移る道も用意した。Pinecone は、索引の大きさが pgvector の約30分の1で、検索も速いと説明する。ただし、この比較の数字はすべて Pinecone 自身が測ったものだ。

出典は Pinecone の発表ブログ(Introducing pg_pinecone)と製品の文書(pg_pinecone overview)、Pinecone のニュースルームで、いずれも一次情報である。欧州の IT 媒体 Techzine も報じた。

何を出したのか:自社の検索エンジンを Postgres の中へ

pg_pinecone は、Pinecone がクラウドで売ってきた検索エンジンを、Postgres の拡張の形にしたものだ。使う側から見れば、新しいデータベースを立てたり、外のサービスと契約したりせずに、いまある Postgres の表の上でベクトル検索をかけられる。

Postgres のベクトル検索では、これまでオープンソースの pgvector が事実上の標準だった。Pinecone は、その pgvector と同じ場所に、自社の検索の仕組みを持ち込んだことになる。しかも Apache 2.0 なので、手を加えることも、自社の製品に組み込むことも、ライセンスの上では自由である。

検索の結果を引いてモデルに渡す RAG の部分は、いまやどのアプリにも入る前提の技術になった。その検索を、アプリのデータと同じ Postgres の中に置きたいという要望は強い。データを2か所に分けると、同期の手間と、権限を二重に管理する手間がかかるからだ。pg_pinecone は、この要望に正面から応える製品である。

ねらい:入り口は無料で開き、出口を自社クラウドにつなぐ

この発表でいちばん大事なのは、Postgres の中で始めた利用者が、規模が大きくなれば Pinecone のクラウドへ移れるようにした点だ。

ここからは筆者の見立てだが、構図ははっきりしている。ベクトル検索の専用のデータベースは、「Postgres に pgvector を足せば足りる」という声に押されてきた。Pinecone は、その Postgres を敵に回すのをやめ、Postgres の中に自社の技術を置いた。小さいうちは無料で、利用者がふだん使う場所で動く。大きくなって索引の運用が重くなったときに、移る先として自社の有料のクラウドが最初に見える。オープンソースを、自社の商売への入り口にするやり方である。

使う側にとっては、最初から Pinecone と契約するかどうかを決めなくてよくなる。その一方で、pg_pinecone で作った索引やクエリの書き方が Pinecone のクラウドと地続きであるほど、移るときの手間は小さくなるが、ほかの選択肢に乗り換えるときの手間は相対的に大きくなる。Apache 2.0 のコードは手元に残るので、閉じ込められるわけではない。それでも、「移りやすい先」が1つの会社に決まっていることは、知っておいてよい。

数字はすべて Pinecone の測定である

Pinecone は、pg_pinecone の索引が pgvector の約30分の1の大きさで、検索も速いとする。索引が小さければ、同じメモリにより多くのベクトルが載り、Postgres のサーバーを大きくしなくて済む。数字どおりなら、効果は大きい。

ただし、この比較はすべて Pinecone 自身が行ったものだ。発表の時点で、第三者が同じ条件で測った結果は見当たらない。ベクトル検索の比べ方は、条件で答えが大きく変わる。少なくとも次の点は、自分のデータで確かめる必要がある。

確かめるべき条件

1つ目は、再現率(本当に近いものをどれだけ拾えるか)をそろえて比べたかどうかだ。索引を小さくしたり、検索を速くしたりするのは、再現率を少し下げれば難しくない。速さと大きさは、再現率と一緒に見なければ意味がない。

2つ目は、pgvector の側をどう設定したかである。pgvector にも索引の種類と調整の値があり、それによって大きさも速さも変わる。比べる相手を最もよい設定にしたのか、標準の設定のままにしたのかで、「30分の1」の重みは違ってくる。

3つ目は、使ったデータの規模と種類、それに索引を作る時間と、データを足したり消したりしたときのふるまいだ。本番の RAG では、文書は毎日入れ替わる。検索の速さだけでなく、書き込みが続く中で索引がどう保たれるかも効いてくる。

ベンチマークを出す会社が、自社に有利な条件を選ぶのは珍しくない。それ自体は不正ではないが、数字は「Pinecone の測定では」という但し書きをつけて読むべきである。

使う側にとっての意味

これまで、Postgres でベクトル検索をするなら pgvector、専用のサービスを使うなら Pinecone のような会社、という2つの道があった。pg_pinecone は、その間に3つ目の道を作った。Postgres に置いたまま、専用のサービスの会社が作った検索の仕組みを使えるという道だ。

Apache 2.0 で公開したことで、誰でも中身を読み、自分のベンチマークで確かめられる。Pinecone の数字が本当かどうかは、利用者と第三者の測定がこれから決めることになる。いま言えるのは、検索をアカウントなしで既存の Postgres の中で試せるようになったこと、大きくなれば Pinecone のクラウドへの道が開いていること、そして pgvector より小さく速いという話は、今のところ Pinecone の自己申告だということである。

風刺画: Pinecone、検索エンジンをPostgres拡張で公開 数字は自社測定

Editorial Cartoon

本記事がもたらす影響を風刺的に描いたひとコマ漫画

Verification

信頼ラベル確認済
一次ソース4件確認
最終検証2026.11.01
VerifiedRev. 1
sha256:39584c0facaffa45...47f233ee

この記事はEd25519デジタル署名で検証済みです。改ざんは検出されていません。

検証API
Ethics Score90/100
引用密度20/20
ソースURL数15/20
信頼ラベル15/15
表現の慎重さ10/15
キーポイント10/10
サマリー品質10/10
本文充実度10/10

v1.0.0 — ルールベース自動採点

詳細API
Share

関連記事

Anthropic、重みを伏せたまま使ったモデルを暗号で証明する仕組みを公開
プロダクト & モデル確認済

Anthropic、重みを伏せたまま使ったモデルを暗号で証明する仕組みを公開

Anthropic が研究『FlashProve』を公開した。モデルの重みを見せないまま、承認されたモデルが本当にその答えを出したことを、外部の評価者や当局が暗号で確かめられる。実用に近い速さになったとするが、ふつうの推論よりまだ約70〜95倍遅く、毎日の利用には向かない。

2026.11.04
SemiAnalysisの新指標GDPx、首位Opus 5.5でも12%
プロダクト & モデル確認済

SemiAnalysisの新指標GDPx、首位Opus 5.5でも12%

半導体とAIの調査会社SemiAnalysisが、エージェント向けの第三者ベンチマーク「GDPx」を出した。11の専門分野で1課題に最長8時間かけさせる形式で、首位のClaude Opus 5.5でも解けたのは12.0%だった。サイバー、生物、アラインメントでは、安全の分類器のせいで点が下がった。

2026.11.03
Claude Code、既存ゲームの作り直しを断る2文を追加と報道
プロダクト & モデル報道

Claude Code、既存ゲームの作り直しを断る2文を追加と報道

Anthropic が、Opus 5.5 で動く Claude Code のシステムプロンプトに、特定の既存ゲームを作り直させない2文を足したと Kotaku などが報じた。IP の方針を利用規約ではなくエージェントへの指示文で守らせる形になる。利用者が止める設定はなく、リバースエンジニアリングやセキュリティの作業まで断られるという不満も出ていると伝えられる。

2026.11.02