Meta Connect の発表でいちばん目立ったのは、出なかったものだった。Meta の発表ページ(about.fb.com/news)によると、新しいモデルは Muse Realtime Avatar の1つだけである。LLM の新版はなく、ベンチマークの数字も1つもなかった。Meta はフロンティアのモデルで順位を争うことをやめ、エージェント製品と、そこを通る取引から取る手数料に賭けている。市場はこの判断を評価し、株価は4.5%上がった。
出たのはアバターのモデル1つだけ
今週はフロンティアのモデルが次々に更新された。9月22日には Anthropic が Claude Opus 5.5 を、OpenAI が GPT-6 Sol と Luna を出している。Artificial Analysis の Intelligence Index で Opus 5.5 は58の最高値を記録し、GPT-6 Sol の価格は入力2ドル/出力10ドルと、Opus 5.5 のちょうど半分に設定された。性能でも価格でも、フロンティアの争いが最も激しくなった週である。
それでも Meta は、この争いに加わらなかった。Connect で発表された新しいモデルはリアルタイムのアバター用のモデル Muse Realtime Avatar だけで、Opus 5.5 や GPT-6 と比べられるような LLM の新版は出ていない。自社の数字を並べる表もなかった。9月22日の2社の発表に、窓内で価格や新モデルで応じたラボは1社もなかった。Meta も Connect という最大の発表の場で、同じく応じないことを選んだ。
賭けているのはモデルではなく取引
Meta が前に出したのは、Muse を中心にしたエージェント製品である。エージェントが利用者の代わりに買い物や予約などの取引をこなし、Meta はそこから手数料を取る。この収益の仕組みは、どのモデルが一番賢いかという競争から切り離されている。モデルの性能はほかのラボが上げ、価格は GPT-6 Luna の入力0.10ドルのように下がり続けている。そうであれば、エージェントが実際に取引をする場所を押さえた会社が利益を取る、という読みになる。
今週の数字は、この読みを支えている。9月22日の価格改定で、フロンティアラボはオープンウェイトの Xiaomi MiMo-V2.6(入力0.435ドル)よりも安い値を付けた。Epoch AI の分析では、一定の性能を得る費用は2023年以降、四半期ごとに約47%下がっている。モデルそのものの利幅が四半期ごとに削られていくなかで、Meta は自分でモデルを持つことよりも、エージェントの取引の上に乗ることを収益の柱に選んだことになる。
市場は4.5%高で評価した
株価は4.5%上がった。ベンチマークの数字が1つもない発表で株価が上がったことは、市場がモデルの順位よりも収益の仕組みに値を付けていることを示している。
この評価の前には、Muse を材料にした売りがあった。9月22日には金融株が売られ、9月23日には売りが Alphabet(−3.4%)に移った。エージェントが取引と情報探索を肩代わりすれば、既存の決済や金融の仲介と検索広告が迂回される、という懸念である。Schwab と JPM の株価はその後落ち着いた。一方、Alphabet への売りが続くかどうかは、まだ分からない。Meta の株高と Alphabet の株安は、同じ見方を両側から映している。エージェントが取引の入口になると、手数料はそこを押さえた側に移る、という見方である。
残る問い
この賭けには前提がある。Meta が自前でフロンティアのモデルを持たないなら、エージェントの頭脳は他社に追いつかれない水準か、外部のモデルに頼ることになる。9月23日23:00 UTC の基調講演は、この記事の取材期間の外にあった。そこで Muse のゼロデイや OpenClaw 由来の件に触れたのか、手数料率や対象になる取引の範囲をどこまで具体的に示したのかは、まだ確かめられていない。取引を扱うエージェントでは、安全性の問題はそのまま利用者のお金の問題になる。モデルの数字を出さずに取引の手数料に賭けた Meta には、ベンチマークの代わりに、取引の安全を証明する責任がかかる。




