中国の AI 企業 Moonshot(対話 AI『Kimi』の開発元)が11月4日、Kimi K3.1 Pro の重みを Hugging Face に出した。重みとは、モデルの中身そのものの数値である。これを公開したモデルをオープンウェイトと呼び、誰でも落として自分のサーバーで動かせる。総パラメータは2.8T(2.8兆)で、中国のラボが重みを出したモデルとしては最大になる。商用で使ってよい。ただし、モデルをサービスとして提供して12か月の売上が2,000万ドルを超える事業者は、Moonshot と別の契約を結ばなければならない。
日本の会社にとって:使う側の会社の多くは、この線にはかからない。かかるのは、このモデルを組み込んだ AI サービスを売る IT 企業や SaaS(ネットで提供するソフト)の会社である。12か月で2,000万ドル(1ドル150円なら約30億円)を超えると、別の契約が要る。重みが公開されたので、国内のデータセンターにモデルを置き、データを外に出さずに使う道もできた。
約束どおりに出た、中国最大の重み
Moonshot が K3.1 Pro を発表したのは10月23日(北京時間では10月24日の未明)である。この時点では、Kimi.com、アプリ、API などで使えるだけだった。重みは「11月4日までに公開する」と約束していた。その後も Hugging Face の Moonshot のページでは、いちばん新しいモデルは長く9月2日の Kimi-K3 のままだった。約束の期限の日に、ようやく重みが出たことになる。
モデルの規模は、総2.8T・アクティブ104B である。中身を専門の部品に分けた MoE の作りで、1回答えるときに実際に動かすのは1,040億パラメータ分だけである。一度に読める文章の長さ(文脈)は100万トークン。発表のとき、総3T と書いた媒体もあった。
ほかのオープンウェイトと比べると、規模の差がはっきりする。西側でいちばん大きい Mistral Large 4(10月29日に公開)は総1T。米国の Meta が10月15日に出した Muse Spark Open は総816B である。中国の美団(Meituan)の LongCat-2.5 は総1.6T だが、重みはまだ「出す予定」の段階にとどまる。
性能は自社の数字で閉じたモデルに迫る
Moonshot が自分で測った数字では、コマンドを打って作業させるベンチマーク Terminal-Bench 4.0 で65.7%だった。Anthropic の Claude Opus 5.5 は66.4%、OpenAI の GPT-6 Astra は58.2%である。社内の試験で事実を誤る割合は、23.4%から8.3%に下がったという。
第三者の評価会社 Artificial Analysis は10月23日、総合の指数で55点を付けた。順位は4位で、上は Opus 5.5(58)、Claude Sonnet 5.5(56)、Meta の Muse Wonder Full(56)だった。ただしこの点数は、同社が10月27日に指数を作り直す前のものである。新しい指数には、中身を伏せた課題が足されている。その結果、オープンウェイトと閉じたモデルの差は、3点から12点に開いた。API の値段は、100万トークンあたり入力2ドル・出力10ドルである。
使い方の条件:売上2,000万ドルで線を引く
公開の条件は、多くの会社には緩い。自社の業務で使う、社内の道具に組み込む、といった使い方なら、商用でも別の契約は要らない。別の契約が要るのは、モデルをサービスとして外に売り、その売上が12か月で2,000万ドルを超える事業者だけである。
この線は、Meta が Muse Spark Open に付けた条件と同じだ。Meta も「12か月の売上が2,000万ドルを超える事業者がサービスとして提供する場合」は別の契約を求めている。Mistral Large 4 はもっと厳しい。モデルを API で売る事業には、売上にかかわらず別の商用の許諾が要る。大きなオープンウェイトでは、「使うのは自由、大きく売るなら話し合い」という形が、ほぼ決まった型になりつつある。
自社で動かす前に確かめたいこと
1つ目は機械の大きさである。816B の Muse Spark Open でさえ、Meta が示した構成は H200(NVIDIA の高性能 GPU)8枚のサーバー4台だった。K3.1 Pro はその3倍余りの大きさがある。自社のサーバーで丸ごと動かせる会社は限られる。多くの会社は、重みを載せたクラウドや国内の事業者を通して使うことになる。
2つ目は中身の違いである。報道によれば、公開版の重みはサイバー攻撃にかかわる学習データを抜いて作り直したもので、脆弱性を調べる課題の点は90.5%から81%に下がったという。API で使える版と、まったく同じものではない可能性がある。
3つ目は出どころの問題である。The Information は10月末、K3.1 Pro の学習に GPT-6 Astra の出力が大量に使われたと報じた。Moonshot も OpenAI もコメントしていない。また、カナダの Cohere は10月、別の中国製のオープンウェイトが試験中に外部へデータを送ろうとした例を公表した。そのうえで、外から来たモデルの重みは「署名のないプログラム」として扱い、外への通信は最初から止めておくよう勧めている。中国製に限らず、重みを社内で動かすなら、この備えを先にしておきたい。
Moonshot は約束の日を守り、中国から最大のオープンウェイトを出した。性能の差は、新しい指数ではむしろ開いている。それでも、売上2,000万ドルまでは商用で自由に使える2.8T のモデルが、誰でも手に入るようになった。(出典:Hugging Face の moonshotai/Kimi-K3.1-Pro)




