米国のデータセンターの建設計画が、2つの方向から締めつけられていると報じられている。1つは『建たない』という見方である。調査会社 Bernstein は、発表された計画のうち実際に建つのは約35%にとどまると見積もったと伝えられる。もう1つは『要らない』という声で、地元でのデータセンター建設に反対する人が59%にのぼるという世論調査を CNBC が10月24日に報じた。そのうえで、テキサス州の許可の停止や、コロラド州オーロラなど各地のモラトリアムの採決が続いている。建設の速さを決めるのは、ハイパースケーラーの設備投資の額ではなく、地元の政治になり始めている。
なお、この記事は報道をもとにしており、一次情報には届いていない。元の記事の細かい数字や条件の一部は確かめられていないため、以下では報じられた範囲にとどめて書く。
『建たない』――計画の約35%という見積もり
Runtimewire によれば、Bernstein は米国のデータセンターの計画(パイプライン)が、どこまで信用できるかを調べた。見積もりでは、発表された計画のうち実際に建つのは約35%だという。残りの約3分の2は、遅れるか、縮むか、取りやめになる計算になる。
この数字が重いのは、AI のインフラについての強気の予測の多くが、まさにこの『発表された計画』の合計を土台にしているからである。電力会社の需要の見通し、半導体や電力機器の受注の見込み、リースの約束の額は、計画がそのまま建つことを前提に積み上がっている。もし実際に建つのが3分の1強なら、数字の読み方を変えなければならない。
建たない理由として、これまでの報道では、送電網への接続の待ち行列、電力の確保、資金の調達、許認可が挙がってきた。今週の動きで目立つのは、このうち許認可と地元の合意、つまり政治の壁である。
『要らない』――地元での建設に反対59%
CNBC は10月24日、AI のデータセンターに対する有権者の反発が、中間選挙(11月3日)を前にトランプ政権の悩みになりつつあると報じた。記事が引く世論調査では、自分の地域にデータセンターを建てることに59%が反対している。
政権は、AI の競争で中国に勝つためにデータセンターを速く建てることを看板にしてきた。一方で、建設の地元では電気代の値上がり、水の使用、騒音、税の優遇への不満が積もっている。全体としての『AI の推進』は支持されても、『自分の町に建てる』となると反対が多数になる、というずれが数字で見えたことになる。中間選挙の争点に上がれば、州や郡の議員にとって、計画を認めることの政治的な代償は大きくなる。
テキサス州――停止のはずが自動で通り続け、17件を止めた
建設に最も前向きな州の1つであるテキサス州でも、ブレーキがかかった。Hardware Busters によれば、Abbott 知事が許可の手続きを止めた後も、データセンターの許可が自動で承認され続けていた。その結果、17件の許可が後から停止されたと報じられている。
ここで分かるのは2つある。1つは、テキサス州でさえ知事が手続きを止める判断をしたことである。もう1つは、許可の仕組みが、政治の判断に追いつけないほど自動化され、速く回っていたことである。止めたはずの手続きが通ってしまい、後から取り消すことになった。計画を持つ事業者にとっては、許可を得たと思った案件が宙に浮く不確かさが増える。
自治体の採決――オーロラ、シャーロット、ラウドン郡
州の判断に加え、市や郡の議会も動いている。Denver Gazette によれば、コロラド州オーロラの市議会は、データセンターの無期限のモラトリアムを採決にかける。期限を切らない停止で、採決は10月26日の予定である。同じ日にはノースカロライナ州シャーロットでも採決が控えている。
米国で最大のデータセンターの集積地であるバージニア州ラウドン郡も、郡の告知でデータセンターに関する手続きを住民に知らせている。郡の審議は11月17日が次の節目になる。ほかにも、メンフィスの135日の停止、レキシントンの用途地域の見直し、バージニア州の SB 843 など、地元の規制の動きが重なっている。
こうした採決の1つ1つは小さい。だが、Bernstein の『約35%』という見積もりと重ねて読むと、残りの約65%の行方を左右するのは、まさにこうした地元の議会の判断だということになる。
なぜ重要か――計算資源の供給の天井が、地元で決まる
AI のラボとハイパースケーラーは、計算資源の不足をいちばんの制約に挙げてきた。その解決策として打ち出されたのが、ギガワット級のデータセンターを数年で建てる計画である。今週の動きは、その計画の速さが、資金や技術ではなく住民の同意で決まる段階に入ったことを示している。
エージェントの利用が広がるほど推論の需要は増え、計算資源への圧力は強まる。それでも、建てる場所がなければ供給は増えない。来週は Alphabet と Microsoft(10月28日)、Amazon(10月29日)の決算がある。設備投資の見通しに、地元の反対や許認可の遅れがどこまで反映されるかが、次の読みどころになる。トランプ大統領がデータセンターに『自前の電力』を求めた発言が、文書の形になるかどうかも見ておきたい。




