証券会社が提供するロボアドバイザーの機能競争が新たな局面を迎えている。三菱UFJ銀行は、完全子会社の三菱UFJ eスマート証券とロボアドバイザー国内最大手のウェルスナビを2027年度中に合併させ、AIを標準装備した「次世代デジタル証券」を誕生させると発表した。dxmagazine.jpによれば、両社は2026年3月24日にこの方針を明らかにしており、資産運用の提案から一任運用までをAIが一体的に担う体制を構築する狙いがある。
ウェルスナビの現状とMUFG傘下入りの意味
ウェルスナビは2015年に創業者・CEOの柴山和久氏が設立した投資一任型ロボアドバイザーで、6つの質問に答えるだけでリスク許容度に応じたETFポートフォリオを提案し、自動で買付・リバランスまで行う。Yahoo!ファイナンスによると、預り資産は2026年5月11日時点で2兆円を超え、利用者数は2025年12月31日時点で約46万人に達している。すでに2025年に三菱UFJフィナンシャル・グループの傘下に入っており、今回の合併発表はその関係を一段と深めるものだ。手数料は年率1.1%(3000万円超の部分は0.55%)で、インデックス型投資信託の信託報酬(年0.1〜0.5%程度)と比べると高めであることが、一部で「やめたほうがいい」との評価につながっている面もある。
SBI・FOLIOのAI予測型が対抗軸に
一方でSBI証券は、AI運用開発を手がけるFOLIOと共同開発した「SBIラップ AI投資コース」を展開している。ザイ・オンラインによれば、同コースはリスク許容度の選択が不要で、AIが相場の上昇・下落を予測し毎月投資配分をダイナミックに変更する仕組みで、年率手数料は0.66%と業界内でも低めに設定されている。同じAIを用いるFOLIOの「ROBOPRO」は、金融庁公表の2022年末までのコース別パフォーマンスで過去3年の累積リターン1位を獲得したとされ、2023年12月末には「ROBOPRO for SBI証券」も登場した。かぶリッジの比較表でも、ROBOPROは月1回のリバランスで積極的な利益追求を目指す点が特徴として挙げられている。
「ロボアド2.0」を掲げる新興勢力
既存大手とは異なる設計思想を打ち出す動きもある。FUNDINNOで紹介されている「ProPort」は、日本初のロボアドバイザー企業「お金のデザイン」で創業メンバーとしてCTO・CIOを務めた人物が主導するサービスで、結婚・住宅・教育・老後など人生の複数の目的ごとに異なるポートフォリオを動的に組み替える「ライフイベント主導型」を掲げる。2018年時点で既に機械学習を用いた市場下落予測を導入し、税最適化アルゴリズムの特許も保有しているという。従来型ロボアドが単一のリスクレベルで全資産を運用するのに対し、収入や家族構成の変化に応じてゴールと必要金額を更新するだけで資金計画とポートフォリオを自動再計算する設計を特徴とする。
診断・提案型AIも証券各社で拡充
投資一任型だけでなく、提案・診断に特化したロボアドバイザーも証券会社間で機能追加が進む。楽天証券は2024年10月20日、投信積立の設定内容から「稼ぐ力」「耐える力」「安定力」の3スコアと総合スコアを診断し、改善につながる投資信託を提案する「かんたん積立診断」の提供を開始した。PR TIMESによれば、これは2023年11月〜12月に期間限定提供していたサービスを恒常化したもので、新NISAの投資枠拡大に対応する狙いがある。SMBC日興証券も、保有投信を入力すると理想のポートフォリオとの差分やリバランスに必要な購入額を具体的に示す提案型ロボアドを提供しており、各社が「一任型のAI予測」と「診断型の提案支援」の両輪で機能を拡充している構図が見えてくる。
業界構造への影響
ロボアドバイザーは日本で本格普及から約10年が経過し、投資一任型は手数料が年率1.0%前後に収れんする一方、AI予測を組み込んだサービスほど低コスト化と高機能化を同時に進める傾向が強まっている。最大手ウェルスナビがメガバンク傘下で証券機能と一体化することで、対面営業を持つ大和証券のダイワファンドラップONLINEなど既存プレーヤーとの競合軸も変化する可能性がある。今後は合併後の具体的なAI機能仕様や手数料体系の発表が注目される。

