Anthropic、1兆ドル評価でOpenAIを上回る快進撃
AI業界で劇的な勢力変化が起きている。Business Insiderによると、Claude開発元のAnthropic社の評価額が、プライベート企業の株式取引を行うForge Globalで1兆ドルに達したと、同プラットフォームのCEOケリー・ロドリゲス氏が明らかにした。これにより同社はOpenAIの8520億ドル評価を上回り、AI業界のトップに躍り出た。
セカンダリー市場での取引活動は異常な熱狂を見せており、ある株主は1.15兆ドルの評価額でAnthropic株の売却を提案している。ベンチャーセカンダリー企業Saints CapitalのケンソーヤーCOOによれば、投資家からの購入申し込みが殺到している状況だ。Wisdom VenturesのBradley Horowitzゼネラルパートナーは「毎日のようにばかげた金額から真っ当な金額まで様々な買収提案を受けている」と述べている。
Claude Mythosモデルが評価急騰の起爆剤に
Anthropicの株価急騰の背景には、同社の最新AI モデル「Claude Mythos」への注目がある。サイバー脅威を発見するよう設計されたこの技術について、同社は「危険すぎて広く公開できない」と警告しており、これが巧妙な宣伝戦略として機能している可能性がある。
より重要なのは同社の収益成長だ。Anthropicの売上高は2025年末の90億ドルから2026年3月末には300億ドル超へと急激に拡大した。この3倍以上の成長は、商業利用可能なClaudeサービスの広範な導入によるものと同社は説明している。投資家の間では、Anthropic株を保有していることのステータス価値も高まっており、「リターンよりもAnthropic投資家であることを言えることが重要」との声も聞かれる。
OpenAI、目標未達で投資家の懸念拡大
対照的にOpenAIは厳しい状況に直面している。Forbesの報道によると、同社は2025年末までにChatGPTの週間アクティブユーザー10億人という内部目標を達成できず、さらに年間売上目標と複数の月次売上目標も未達に終わった。現在ChatGPTの週間アクティブユーザーは9億人にとどまっている。
サム・アルトマンCEOの大規模な支出により、同社は将来のコンピュート契約で6000億ドルの支払い義務を負っている。サラ・フリアCFOは、収益成長が加速しなければ将来のコンピュート契約の支払いが困難になる可能性があると他の幹部に懸念を表明している。3月の1220億ドル調達ラウンドで得た資金も、現在のペースでは3年で枯渇する見通しだ。
セカンダリー市場での需給バランス悪化
OpenAIの業績悪化は株式市場にも波及している。Bloomberg Newsによると、機関投資家が3月末時点でOpenAI株式6億ドル分の売却を試みたものの、買い手が見つからない状況が続いている。これは同社への投資需要の減退を象徴する事象として注目されている。
AI業界への投資パターンに変化の兆し
両社の明暗は、AI業界全体の投資パターンに変化をもたらしている。OpenAIの業績不振を受けて、同社の主要パートナーであるOracle、Nvidia、Microsoft、CoreWeave、SoftBankの株価が4月28日に下落した。投資家は「AI支出ブームがいつまで続くか」について改めて懸念を抱いている。
一方でAnthropic周辺では新たなパートナーシップが活発化している。Amazonは500億ドルをOpenAIに投資し、OpenAIも今後8年間でAWSに1000億ドルを支出することを約束した。しかしAmazonはAnthropic依存からの脱却を図るため、OpenAIとの連携も強化している。企業向け市場ではAnthropicのClaudeモデルが人気を博し、OpenAIがコーディング分野などで地盤を失っている状況だ。
IPO計画と今後の展望
AP Newsによると、OpenAIをめぐってはイーロン・マスク氏との法廷闘争も続いており、同社の企業統治や方向性に関する不透明感が増している。マスク氏は、OpenAIが当初の非営利的使命から営利企業へと転換したことが約束違反だと主張している。Microsoftとの関係も2022年以降に大きく変化し、同社の知的財産の多くがライセンシング契約を通じてMicrosoftの管理下に置かれている。
両社ともIPOの具体的な日程は公表していないが、Anthropicの評価額急騰とOpenAIの成長鈍化は、AI業界の投資家にとって重要な判断材料となっている。Time Magazineの「2026年最も影響力のあるAI企業10社」にも両社が選出されているが、市場での評価は明らかに分かれ始めている。投資家は今後、収益成長の持続性とビジネスモデルの実現可能性をより厳しく精査することになりそうだ。



