データブリックス訴訟で著作権侵害請求が本格審理へ
2026年4月、カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所において、データブリックス(Databricks)とモザイクML(MosaicML)に対する著作権侵害訴訟で重要な判断が下された。作家らがDBRXシリーズのAIモデルに関して起こした直接的著作権侵害請求について、ブライヤー判事(Judge Breyer, C.)は被告側の棄却申立てを却下し、本案審理に進むことを決定した。
訴訟では、作家らがDBRXモデルの開発において、いわゆる「シャドウライブラリ」と呼ばれる海賊版作品を収集したオンライン保管庫から書籍を複製したと主張。当初、裁判所はDBRXシリーズに関する侵害請求を一度棄却したが、事実認定のための証拠開示で根拠が明らかになれば修正可能との判断を示していた。被告側は「DBRX最終学習データセット」での直接的な複製を立証できていないとして、開発段階での複製がAIモデル自体の直接侵害を構成しないと反論したが、裁判所は「申立書は複製行為をDBRX自体に関連付けている」として、証拠に基づく詳細な判断は本案審理で行うべきと結論付けた。
ゲッティイメージズがスタビリティAIに勝訴
同じくカリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所では、2026年4月24日にゲッティイメージズ(Getty Images)がスタビリティAI(Stability AI Ltd.)に対する訴訟で大きな勝利を収めた。トリナ・L・トンプソン判事(Judge Trina L. Thompson)は、スタビリティAIの棄却申立ての大部分を却下し、著作権・商標権侵害、不正競争、商標希釈化請求の継続を認めた。
ゲッティは、スタビリティAIが画像生成モデルの学習において1200万枚を超える写真を無許可で複製したと主張。裁判所は、ゲッティが混同の可能性と同社商標の「家庭内認知度」獲得を適切に立証し、商標侵害・希釈化請求が棄却を免れるに十分であると判断した。この判決は、ブルームバーグ法律によると、AI画像生成分野における著作権保護の重要な先例となる可能性が高い。
最高裁判決がAI著作権訴訟の戦略を変化
AI著作権法の分野では、米国最高裁のCox判決が業界に大きな影響を与えている。この判決により、著作権者がAI企業を直接責任追及することが困難になり、侵害を誘発または促進した場合を除き、企業の法的責任が制限された。また、海賊版コンテンツを含む著作物でのAI学習が一般的にフェアユースと判断される傾向が強まっている。
この変化により、著作権者は直接的なAI企業への訴訟から、AIを利用する事業者への責任追及にシフトせざるを得ない状況となった。ニューヨーク法律ジャーナルの分析によると、企業はライセンス契約において強固な補償条項を含めることで侵害請求から身を守る必要があるとしている。この法的環境の変化は、AI産業の責任分担構造を根本的に変えつつある。
国際的な著作権保護の動向
AI著作権問題は米国以外でも重要な判例が形成されている。欧州司法裁判所(ECJ)では2026年4月、クラフトワーク(Kraftwerk)の20年に及ぶ著作権紛争で「パスティーシュ」(pastiche)規定に関する重要な判決が下された。ECJは、無許可使用であっても原作品と「明らかに異なり」、芸術的対話として認識可能な創作は著作権侵害にあたらないとの判断を示した。
一方、日本では著作権保護が厳格に適用される事例も見られる。2026年4月に東京地裁が竹内航容疑者に対し、映画・アニメの詳細なあらすじ掲載による著作権侵害で懲役1年6か月および100万円の罰金刑を言い渡した。竹内容疑者は2023年に約25万ドルの広告収入を得ており、「ゴジラ マイナスワン」と「オーバーロード」のあらすじ掲載が権利者による提訴の直接的な契機となった。この判決は、フェアユースを超えた詳細な内容転載が著作権侵害として厳しく処罰される基準を示している。
企業の対応策と今後の展望
現在のAI著作権訴訟の動向を受けて、企業は複層的な対応策を講じる必要がある。AI開発企業においては、学習データの出典管理とライセンスクリアランスの徹底が不可欠となっている。アンソロピック(Anthropic)が数百万冊の書籍を購入・スキャン・廃棄する手法を採用するなど、法的リスクを回避する技術的手段も模索されている。
AI利用企業側では、サービス契約における補償条項の強化が急務となっている。著作権庁がAIシステムによる人間の創作的関与なしの作品には著作権保護を認めていない一方で、AI企業は自社の知的財産については強固な保護を求めるという矛盾した状況も生まれている。今後の判例形成により、AI学習データの著作権クリアランス基準、フェアユース適用範囲、そして責任分担の明確化が進むと予想される。これらの法的枠組みの確立は、AI産業の持続可能な発展にとって不可欠な要素となっている。



