AI単独創作物の著作権保護を否定するThaler判決が確定
AI著作権を巡る法的判断で最も重要な転換点となったのが、2024年のThaler v. Perlmutter事件である。コロンビア特別区連邦控訴裁判所は、AI システムが自律的に生成した作品は著作権保護の対象外であり、著作権には人間の「著者」が必要であるとの判断を下した。この判決に対し最高裁判所は2024年3月に審理を拒否し、下級審の判決が確定した。
著作権庁とThaler側は、AI生成物への著作権保護には人間の意図的な創作的関与のレベルが重要であると主張していた。しかし著作権法の基本的判例であるBurrow-Giles Lithographic Co. v. Sarony事件は、機械が物理的な創作に関与していても、作品自体が保護に値する創造性を体現するかどうかを問題にしている。現在の争点は、作品が主に又は完全に著作権保護の対象外となるまでに、どの程度のAIコンテンツを含むことができるかという点に移っている。
この判決により、従来の人間による創作とは異なる方法で作られた「バイブコーディング」ソフトウェアは、イノベーションと価値を生み出しても著作権保護を受けにくくなる可能性が高まった。また、米国に拠点のない外国企業でも、米国ベースのAIツールやモデルを使用した場合、AIツールの出力が侵害にあたると裁判所が判断すれば、米国での著作権訴訟の対象となるリスクが生じている。
クリエイター対AI企業の訴訟が90件超に拡大
クリエイターによるAI企業への著作権侵害訴訟は90件を超えている。作家、音楽家、視覚芸術家、ニュース出版社らが、OpenAI、Meta、Anthropicなどの企業に対し、許可なく著作権のある作品をAIモデルの学習に使用したとして訴訟を起こしている。The Atlanticも、AI企業Cohereに対する訴訟の一つに関与している状況だ。
これらの訴訟は、創作労働の未来とエンターテインメント業界全体を決定する闘いとして位置づけられている。ある訴訟では、アーティストたちは「彼らの懸命な労働によってのみ動力を得るコンピュータープログラムによって彼らの職業が排除される前に、権利侵害を終わらせる」ことを求めている。
2025年の重要な判例では、生成AI大手の一つであるAnthropicが膨大なデジタル書籍ライブラリを消費してLLMを学習させた事件で、判事は公正使用の原則を引用してAnthropic側に有利な判決を下した。しかし同時に、数百万冊の海賊版書籍を違法にダウンロードしたことについては責任を負うとする分割判決となった。この事例は、コンテンツがどのように取得され使用されるかの両方が重要であることを実証し、AI著作権事件が積み重なっていく中での課題を浮き彫りにした。
弁護士のAI誤用で厳罰措置が相次ぐ
AI著作権問題と並行して、法廷でのAI誤用による制裁事例も急増している。アラバマ州最高裁判所は2026年4月、弁護士W. Perry Hallの上訴を棄却し、17,200ドルの弁護士費用と費用の支払いを命じた。裁判所はHallの行為を「広範囲にわたり特に悪質」と評価し、彼をアラバマ州弁護士会に懲戒処分のため送致した。さらに、アラバマ州弁護士会の正会員である他の弁護士が署名しない限り、この法廷に「他に何も提出すること」を禁止した。
問題となったのは、Hallが返答書面で間違いは「再発しない」と宣言した後も、その宣言後の2番目と3番目の引用が存在しない事件への言及だった点である。裁判所は「法廷文書における偽の引用の問題は、弁護士がAI生成引用の結果を適切に調査し検証することに失敗した結果、要するに弁護士が自分の仕事をチェックする際の過失である」と指摘した。
同様の事例は全米で相次いでおり、カリフォルニア北部地区連邦地方裁判所では、弁護士Lenden Webbが部下の弁護士Katherine Cervantesの監督責任を怠ったとして制裁を受けた。Peter H. Kang連邦治安判事は、WebbとCervantesが「AI の使用によって部分的に引き起こされ、最終的にはケアと監督の欠如から生じた」偽の法律への引用を含む書面を提出したことを両者とも争わなかったと述べた。2025年9月には、Kang判事がCervantesに対し、裁判所に提出した引用の正確性を確保する勤勉さの欠如について注意を与えていた。
税務法廷でもAI偽判例問題が深刻化
AI生成偽判例の問題は税務分野でも深刻化している。Mata v. Avianca事件では、地方裁判所がAI関連リスクに対する裁判所の扱い方について重要な前例を設定した。弁護士がChatGPT生成の架空事件に依拠した書面を提出し、連邦民事訴訟規則11条に基づく制裁措置が科された。Thomas v. Commissioner事件では、米国租税裁判所が捏造された事件に依拠した裁判前覚書を却下し、Delano Crossing v. Wright事件では、ミネソタ州税務裁判所がAI生成書面を提出した弁護士を懲戒当局に送致した。
これらは単なる引用ミスではなく、提出前に法的内容を検証する譲渡不可能な義務の違反である。英国でも、Ayinde v. London Borough of Haringey事件で類似の問題が発生している。最近の米国税務および関連事件における表では、AI生成引用を含む法的提出物に関する事例が示されており、自己代理納税者と弁護士の両方が犯したエラーは、単なる事務的ミスを大きく超え、警告と罰金から書面却下と懲戒処分送致まで様々な結果を招いている。
国際的な動向と今後の展望
英国の税務審判所上訴事件では、判事が存在しない前例を「幻覚」したAIチャットボットに依拠した上訴人を戒め、「AIの精度はチェックなしに依拠すべきではない」と警告し、チェックされていないAIを信頼すれば架空の提出物が「生成される可能性がある」と述べた。ミネソタ税務裁判所も同様に、架空の引用を含むAI作成書面について、検証されていないAI出力の使用は本質的に誤解を招く行為であり、連邦民事訴訟規則11条の下での調査義務に違反すると結論づけた。
業界の対応策と今後の課題
大手法律事務所では対策が進んでいる。Ogletree Deakinsの経営株主Liz Washkoは、「弁護士として、私たちは専門家です。何かを提出する前に、それが引用したものを正確に言っていること、それが存在することを確認するのは私たちの責任です。これはAI以前からの真実でした」と述べている。同事務所では、弁護士が「何をすべきで何をすべきでないかを理解する」ようにするポリシーを設け、「コンプライアンスを確実にするための追加措置」を講じている。
クリエイターにとっては、自分のコンテンツがLLMの学習に使用されたかどうかを調べる場合、まず出版社から調査を始めるべきである。作家の場合、出版社が契約にAI学習用の作品ライセンス許可を与える条項を持っている可能性がある。法的手段を求める場合は、無許可使用が作品の価値を損ない、具体的な金銭的損失をもたらしているという強い論拠が必要である。この立場は、判事と法律がAIの範囲、性質、影響に追いつくにつれて継続的に進化する裁判制度で最も注目を集めている。
現在のところ、AI企業は公正使用に対する好意的な見方に傾く判事たちから恩恵を受けているが、LLMの学習において著作権のある作品がどのように取得され使用されるかについては細心の注意を払う必要がある。今後数か月で状況は変わる可能性があり、法律事務所は主要な著作権侵害の追及を始めたばかりである。LLMはライセンシングと訴訟の間で選択を迫られることになるかもしれない。



