2026年シーズンのアメリカ国立公園は、アクセス管理政策の大幅な変更により、来園者の体験に劇的な変化をもたらしている。特にヨセミテ国立公園では、数年続いた車両予約制度が廃止され、初のシーズンとなったメモリアルデー週末に深刻な混雑が発生した。この政策変更は、国立公園システム全体における来園者管理のあり方を根本的に見直すきっかけとなり、環境保護と公共アクセスの両立という長年の課題に新たな問題提起をしている。
ヨセミテ国立公園で発生した大規模渋滞と駐車場満車
5月23日のメモリアルデー週末、ヨセミテ国立公園のアーチロック入口では、ハイウェイ140(エルポータル・ロード)で1時間以上の待機時間が発生した。渋滞はエルポータルまで約3マイル西方向に延び、ソーシャルメディアユーザーが状況を報告した。園内では午前8時10分にカリービレッジの駐車場が満車となり、ヘッチヘッチー渓谷とマリポサ・グローブの駐車場も午前中に満車状態となった。
特に深刻だったのはヨセミテバレー東部で、午後早くに車両進入が制限され、エルキャピタン付近で車両の方向転換が実施された。午後2時頃に一時的に再開されたものの、環境保護活動家のベス・プラット氏は「人々が草原に車を止め、舗装道路から外れてオフロード走行する状況。園内シャトルを利用するための行列も動画で見る限り酷い状態だった」と証言している。この混雑により、通常なら30分程度で到着できるヨセミテバレーまでの移動が2時間以上を要するケースも報告され、来園者の多くが予定していた日帰りハイキングプランの大幅な変更を余儀なくされた。
交通管理の困難さは駐車場容量の限界にも表れており、ヨセミテバレーの主要駐車場群の総収容台数約1,800台に対し、この週末だけで2,500台以上の車両が殺到したと推定される。これは予約制度時代の平日比で約40%増の来園者数を示しており、週末のピーク時間帯では道路インフラの物理的限界を明確に超過している状況となった。
予約制度廃止の背景と専門家の警告
国立公園局は2月に、2025年の交通量と駐車場データの包括的な評価を実施した結果、「シーズン全体にわたる予約制度は最も効果的なアプローチではない」と判断し、2026年からヨセミテの車両予約制度を廃止すると発表した。ヨセミテ公園監督のレイ・マクパデン氏は「来園者のアクセス、安全、資源保護にコミットしており、優れた来園者体験を確保するための積極的な交通管理戦略を継続する」と2月に述べていた。
しかし、中央シエラ環境資源センターのエグゼクティブディレクターであるジョン・バックリー氏は「車両数や人数に制限がなければ、公園は圧倒される」と警告している。環境保護活動家のベス・プラット氏も「これらは地球上で最も保護された場所であり、遊園地のような管理をすべきではない」と批判的な見解を示している。バックリー氏は、この決定が観光収入には利益をもたらすかもしれないが、公園の環境に害を与えると主張し、「最良のアクセス性は、車両数と駐車場容量、道路の収容力のバランスが取れた管理された公園状況にある」と述べている。
予約制度が導入された2021年当初、ヨセミテの1日あたりの入園車両数は約2,000台に制限されていたが、廃止後の初回週末では推定2,500台以上が押し寄せた。この25%増の車両数は、園内の自然環境への影響も深刻化させており、特に野生動物の生息地への侵入や植生の踏み荒らしが環境保護団体から懸念されている。予約制度時代には年間約450万人の来園者を管理していたが、2026年シーズンでは600万人以上に達する可能性があると専門家は予測している。
マウントブルースカイ登山道の開通と修理完了
一方で、コロラド州のマウントブルースカイ頂上への道路は、2024年に実施された大規模な修理工事の完了により、2026年シーズンに向けて再開通した。この道路は2024年夏のシーズン後に必要な修理のため閉鎖されていたが、今シーズンの開通に合わせていくつかの変更も実施された。これにより、来園者は再び車両で頂上までアクセスできるようになり、高山地帯への新たなアクセスルートが確保された。
マウントブルースカイ(旧マウント・エバンス)への道路は標高4,348メートルまで車両でアクセス可能な北米最高地点の一つとして知られ、約240万ドルの修理工事には路面の完全再舗装、ガードレールの更新、排水システムの改良が含まれていた。特に標高3,600メートル以上の高標高区間では、冬季の厳しい気象条件による道路損傷が深刻で、年間約15センチメートルの路面沈下が発生していた問題が今回の工事で解決された。開通により、デンバー大都市圏から約1時間半でアクセス可能な14,000フィート級の山岳地帯として、ヨセミテの混雑を避けたい来園者にとって重要な選択肢となっている。
ベアトゥース・ハイウェイの春季開通
ベアトゥース・ハイウェイも例年の春の除雪作業完了により開通した。モンタナ州運輸省(MDT)がモンタナ・ワイオミング州境まで管理し、その先はワイオミング州を通ってイエローストーン国立公園まで国立公園局が管理を引き継ぐ。この開通により、高標高地帯への重要なアクセスルートが再び利用可能となった。標高3,337メートルのベアトゥース峠を通るこの道路は、年間約350万ドルの除雪費用を要し、通常4月末から5月初旬にかけて段階的に開通される。今年の開通は例年より約2週間早く、これにより夏季の観光シーズンが延長され、地域経済に約4,500万ドルの経済効果をもたらすと予測されている。
リモートエリアでの安全対策と通信インフラの課題
ネバダ郡では、メモリアルデーの来園者に対してリモートトレイルでの安全について警告が発せられた。特にボウマン湖周辺のリモートトレイルでは、携帯電話の電波が限定的で、険しい地形により週末の旅行が迅速に緊急事態へと発展する可能性がある。郡保安官事務所はこれらの地域をパトロールしているが、通信インフラの制約が安全管理上の重要な課題となっている。
ボウマン湖周辺では標高1,700メートルから2,100メートルの範囲に約45キロメートルのトレイルネットワークが広がっており、年間約8万人のハイカーが利用している。しかし、携帯電話の電波が届くのは湖の南東部約3キロメートルの範囲のみで、トレイル全体の約15%に限定される。2025年シーズンには、この地域で17件の救助要請があったが、そのうち11件で通信手段の欠如により救助活動が大幅に遅延した。地元救急サービスは、GPS緊急通信デバイスの携帯を強く推奨しており、レンタル費用は1日約12ドルから利用可能となっている。
混雑回避を希望する来園者に対して、ヨセミテ・コンサーバンシーは早朝の到着、平日の訪問、またはバス交通の利用を推奨している。園内の現在の交通状況に関するアップデートを受け取るには、「ynptraffic」を3331にテキスト送信することで最新情報を得ることができる。今回の事態は、国立公園のアクセス管理において、来園者数の制御と自然環境の保護、そして公共アクセスの確保という三つの要素のバランスを取ることの困難さを浮き彫りにしている。全米の国立公園システム全体では年間約3億3,000万人の来園者を迎えており、この数字は過去10年間で約30%増加しているため、ヨセミテで発生した問題は他の人気公園でも今後直面する可能性が高い課題となっている。



