中小企業へのサイバー攻撃、94%が脅威に直面——RAGが防御の新手法として浮上
台湾のセキュリティメディアInformation Securityが2026年1月9日に報じたところによると、世界的な脅威環境の急速な悪化により、中小企業はもはや「規模が小さいから標的にならない」という理由で安全だと考えることができなくなっている。同記事は2024年の調査結果として、中小企業の94%が何らかのサイバー脅威に直面したと指摘した。こうした状況を受け、検索拡張生成(RAG:Retrieval-Augmented Generation)の手法を用いたセキュリティ防御の仕組みが、中小企業の情報セキュリティ対策を再定義する技術として注目され始めている。RAGは大規模言語モデルに外部知識ベースを組み合わせて回答精度を高める手法だが、これを脅威インテリジェンスの検索・分析に応用し、限られた人員・予算しか持たない中小企業でも最新の攻撃パターンを迅速に参照・判定できる体制を構築する動きが広がっている。
攻撃側も生成AIを高度化——北朝鮮系Kimsukyの事例
防御側がRAGを取り入れる一方、攻撃側の生成AI活用も加速している。韓国のセキュリティ企業Genians(ジニアンズ)は2026年8月10日、北朝鮮の偵察総局と関連が指摘されるハッキング集団「Kimsuky(キムスキー)」の最新攻撃活動を分析した結果を発表し、Digital Todayが同月13日に報じた。同社によれば、Kimsukyは生成AIを偵察から侵入、情報窃取に至る攻撃チェーン全体に組み込む研究を進めており、フィッシングメール文面の自動生成やマルウェアコードの改変などにAIを活用している痕跡が確認されたという。攻撃者が生成AIを武器化することで、従来型の防御では検知が追いつかないケースが増えており、防御側にもAIを活用した対抗策が急務となっている構図が浮き彫りになった。
防御と攻撃、生成AIの「軍拡競争」が示す業界への影響
この2つの動きは、生成AIを巡る攻防が2026年に入り新たな局面を迎えていることを示す。攻撃側がKimsukyのように生成AIで攻撃チェーンを自動化・高度化する一方、防御側はRAGを用いて脅威情報を高速に検索・照合し、限られたリソースでも最新の攻撃手口に対応できる体制を模索している。特に中小企業は専任のセキュリティ人材を確保しにくく、RAGベースのツールが外部の脅威データベースとリアルタイムに接続できれば、コストを抑えながら防御力を底上げできる可能性がある。一方で、RAGを含む生成AIシステム自体がプロンプトインジェクションなどの新たな攻撃対象になり得る点も課題として残る。企業が把握しきれない未許可AIツール(シャドーAI)の利用実態を可視化する取り組みも、今後の防御戦略における重要な論点になるとみられる。


