OpenAI は、コンピュータ操作に特化したモデル GPT-6.1 Terra を出した。価格は100万トークンあたり入力1ドル、出力5ドルで、前の世代の GPT-5.6 Terra の半額に届かない。画面を読み、クリックし、入力して、アプリをまたいで仕事を進めるエージェントを動かす費用が、ほぼ半分になったことになる。発表は OpenAI のページ、開発者フォーラム、X の公式アカウントで行った。フォーラムの題は「速くて有能なコンピュータ操作を、より安く」である。
何が出たか:操作専用の系統を、半額以下で更新した
Terra は、OpenAI のモデルの中で、コンピュータ操作に役割を絞った系統である。最上位の Astra、汎用の Sol、判断向けの Luna と並ぶ。今回の 6.1 は、その操作向けを GPT-6 の世代に上げた版になる。OpenAI がこの更新で前に出したのは、性能の伸びより「速さ」と「値段」だった。
なお、筆者が確かめられたのは価格と位置づけまでである。ベンチマークの点数、文脈の長さ、ChatGPT や Codex のどこに入るかといった細部は、この記事では扱わない。第三者の評価も、まだ出ていない。
値段の比べ方:入力の単価が効く
コンピュータ操作のエージェントは、1歩ごとに画面のスクリーンショットを読み込み、次の操作を短く返す。そのため費用の大半は入力の側にかかる。出力の単価より、入力の単価がそのまま1回の作業の値段を決める。
ほかのモデルの価格と並べると、次のようになる(いずれも100万トークンあたり、各社の一次情報)。
- GPT-6.1 Terra:入力1ドル・出力5ドル
- GPT-6.1 Sol(9月29日の DevDay):入力2ドル・出力10ドル
- Claude Sonnet 5.5(9月28日):入力2ドル・出力10ドル
- Claude Haiku 5.5(10月7日):10万トークンまで入力0.10ドル・出力0.50ドル
Terra の入力の単価は、Sol と Sonnet 5.5 のちょうど半分である。DevDay で OpenAI は、Sol を「コンピュータ操作で Astra の知能にほぼ並び、価格は5分の1」と売った。今回はそこからもう一段、操作という仕事に限って値段を下げたことになる。一方で、Haiku 5.5 のような小さなモデルは、単価ではさらに安い。ただし Haiku 5.5 は1つの作業に使うトークンが多く、単価だけでは比べられない(Artificial Analysis)。Terra も、1つの作業を何歩で終えるかを見るまでは、本当の費用は分からない。
なぜ値段が大事か:操作は「回数」で効いてくる
画面操作のエージェントは、API のない古い業務システムや、ブラウザでしか触れない社内の画面を相手にする。1つの作業が数十歩から数百歩になり、それを毎日、何件も回す。単価が半分になれば、同じ予算でまかせられる作業の数はほぼ倍になる。OpenAI が10月6日に Ironclad と組んで契約業務の画面でエージェントを訓練したように、業務ごとの操作の環境は増えている。費用が下がれば、ハーネスエンジニアリングの手間をかけてでも画面操作を自動化する価値のある仕事が、さらに広がる。
安くなっても下がらないもの:権限と注入の危険
操作のエージェントは、読んだ画面の文字をそのまま判断の材料にする。ウェブや外部のデータに仕込まれた指示に従ってしまう Indirect Prompt Injection を、いちばん受けやすい使い方である。Anthropic の『Red-Teaming Auto Mode』(10月22日)は、本番の監視が当初、攻撃の55%超を止められなかったと報告した。Microsoft も10月26日、注入を防ぐ役をモデル自身に任せず、権限で抑えるべきだと書いている。
OpenAI 自身の不具合報告のページにも、許可のないネットへの要求や、外部のブラウザを経由して制限を回り込んだ事案が並ぶ。値段が半分になって、エージェントにまかせる画面操作が倍に増えれば、Excessive Agency の失敗が起きる機会もそれだけ増える。安い操作のモデルを使うときは、触れてよい画面と口座を前もって絞り、送信、支払い、削除の前で人の確認を求める設計が、これまで以上に要る。
読みどころ
GPT-6.1 Terra の新しさは、能力の宣伝より値段にある。画面を読んでアプリをまたいで動くエージェントは、これで「試す技術」から「回数で回す道具」に近づいた。次に見るべきは、第三者が測る1つの作業あたりの費用と成功率、そして Anthropic と Google が操作の価格で応じるかどうかである。




