Moonshot AI が、新しい系列の最初のモデル Kimi K3.1 Pro を出した。これで、10月22日に Arena に匿名で現れた『Kibitz』の正体は Kimi K3.1 だと確かになった。第三者の評価機関 Artificial Analysis の Intelligence Index では4位に入った。Moonshot は、11月4日までに重みを公開するとしている。この約束が守られれば、第三者の指数でみたオープンウェイトとクローズドの首位の差は、12点から3点に縮む。
この記事の要点は、性能の数字そのものよりも、その数字がオープンの側に入るかどうかにある。1つの約束の日付で、業界の見取り図が大きく変わりうる。
Kibitz の正体:リークから公式発表まで
Kimi K3.1 には、公式の発表より前にいくつも手がかりが出ていた。9月29日には、Moonshot の API の登録情報に『Kimi K3.1』という識別子が見つかった。10月21日には、Kimi Code のモデルを切り替える画面に名前が出たとする画面写真が出回った。そして10月22日、Code Arena に『Kibitz』という匿名のモデルが現れた。自分を Kimi と名乗り、テスターによれば K3 と同じトークナイザーを使っていた。これまで Moonshot がテストのモデルに付けてきた名前の付け方とも合っていた。
その時点では、Moonshot は何も認めておらず、Hugging Face にも何も出ていなかった。今回の公式ブログで、この推測は事実になった。Unite.ai は、Pro を K3.1 系列の最初のモデルと位置づけている。系列の残りのモデルが今後出ることになる。
同じ日に Arena に出た『Kalmia』は、コミュニティが Qwen4 とみているだけで、Alibaba はまだ認めていない。2つの謎のモデルのうち、正体が分かったのは Kibitz だけである。
4位と、12点から3点への勘定
Artificial Analysis の Intelligence Index で、Kimi K3.1 Pro は4位に入った。これまでの順位と並べると、この位置がどれだけ大きいかが分かる。
前のモデルの Kimi K3 は44点だった。10月19日の時点で、オープンウェイトの首位は Xiaomi の MiMo-V2.6-Pro の46点で、DeepSeek V4.1-Flash-1017 の45点がそれに続いていた。クローズドの首位は Claude Opus 5.5 の58点で、Muse Wonder Full と Claude Sonnet 5.5 がともに56点で並ぶ。46点と58点の差が、見出しの12点である。
K3.1 Pro の重みが出れば、オープンウェイトの首位が入れ替わり、Opus 5.5 との差は3点になる。上の数字から逆算すると、K3.1 Pro の点はおよそ55点になる。Opus 5.5、Muse Wonder Full、Sonnet 5.5 に次ぐ4位という順位とも合う。前のモデルの K3 と比べると、10点を超える上積みになる。
この3点という差は、評価機関がこれまでに付けてきた差と比べても小さい。10月21日に重みを出した NVIDIA の Nemotron 3.5 Super VL は26点で、米国のオープンウェイトの首位だった。中国のオープンウェイトの首位は、それより約30点上にいることになる。
条件は11月4日:守られた約束と、まだの約束
ただし、いまの段階で K3.1 Pro はまだオープンウェイトではない。差が3点になるのは、11月4日までに重みが出たときの話である。それまでは、指数の上位を占めるのはクローズドの4モデルで、そのうち1つが中国製になったにすぎない。
『重みは後で出す』という約束の実績は、ラボによって分かれている。StepFun は、予告した10月15日に Step 5 Preview の重みを出した。Reflection AI は、『今月中』とした Beam の重みを10月16日に出した。一方、Mistral Large 4 の重みは、10月6日に『今月末』としたまま、Hugging Face にまだ出ていない。MiniMax の M3.1 Flash も、10月19日の時点では重みを『後で』とするだけで、日付を示していなかった。
Moonshot には、日付を守る理由がある。華爾街見聞などの中国のメディアが追ってきたとおり、Moonshot は2027年1〜3月期に香港で上場する計画と報じられている。上場前の最後の私募の評価額は約500億ドルと伝えられる(Bloomberg を引いた二次情報で、会社は確認していない)。Kimi の名前を広めてきたのはオープンウェイトの公開で、約束の日付を守るかどうかは、投資家に向けた信用の問題にもなる。
指数の差が縮んでも、測れていない差
3点という差を、そのまま『オープンとクローズの差は消えた』と読むのは早い。指数は多くのベンチマークを平均したもので、指数では見えない差が残っているからである。
10月14日に結果が出た First Proof の第3回では、未発表の研究数学の問題10問で、前のモデルの Kimi K3 で動く仕組みは1問も解けなかった。GPT-6 Astra は単独で7問を解いた。数学者の Abouzaid は、オープンとフロンティアの差は『ほかの分野よりずっと大きい』と述べていた。Terence Tao も、学者向けに出したオープンモデルの場について、フロンティアより約1年遅れていると書いている。K3.1 Pro がこの差をどこまで詰めたかは、まだ測られていない。
逆に、差が縮むことには別の重みもある。Epoch AI は10月16日に、オープンウェイトのサイバー能力は閉じたモデルより6〜7か月遅れていると見積もった。Anthropic は9月に、Z.ai の GLM-5.3 の重みに手を加えると、安全策は100%すり抜けられたと報告している。重みが出たモデルの安全策は、配る側では守れない。指数で3点差まで迫るモデルが重みとして出回れば、こうした遅れの見積もりも縮む方向に動く。Moonshot の安全についての説明がどこまであるかは、重みの公開と合わせて確かめる必要がある。
次に見る点
まず、11月4日までに重みが Hugging Face に出るかどうか。出たときのライセンスと、Pro そのものの重みなのか、系列の別のモデルなのかも見る必要がある。次に、First Proof のような、指数とは別の第三者の評価で K3.1 Pro がどう出るか。最後に、同じ時期に重みの公開を約束している Mistral Large 4 と MiniMax M3.1 Flash、そして Arena の Kalmia(Qwen4 とみられる)が出てくるかどうかである。中国勢の重みが続けば、オープンウェイトの首位争いは、11月の初めには指数の上でクローズドのすぐ下まで来ることになる。




