Anthropic が Claude Haiku 5.5 を、自社の発表ページで正式に出した(anthropic.com/claude-haiku-5-5、一次情報)。既報では VentureBeat の報道しか根拠がなく、anthropic.com/news の一覧を調べた時刻によって、載っているかどうかの結果が食い違っていた。発表ページそのものを確かめたので、ここからは報道ではなく事実として扱う。
単価は Haiku 4.5 より約75%安く、OpenAI の GPT-6 Luna と同じ値段に並んだ。ただし、価格表で並んだことと、実際に安く済むことは別である。第三者の評価機関 Artificial Analysis の測定(artificialanalysis.ai)では、Haiku 5.5 は1タスクを片付けるのに、Luna の約3倍のトークンを使う。単価だけを比べても、安いかどうかは決まらない。
単価:Luna と同じ値段にそろえた
10万トークン未満のプロンプトなら、100万トークンあたり入力0.10ドル、出力0.50ドルである。10万トークンを超えると、入力0.50ドル、出力2.50ドルに上がる。下の段の値段は、9月22日に出た GPT-6 Luna の入力0.10ドル・出力0.50ドルとまったく同じである。9月28日の Sonnet 5.5 が、翌日の GPT-6.1 Sol とまったく同じ入力2ドル・出力10ドルで出たのに続いて、Anthropic はまた OpenAI と同じ値段にそろえた。中型でも小型でも、値段を合わせたうえで中身で勝負する形になった。
値下げの幅には注意が要る。Anthropic の示す比較では、Haiku 4.5 より約75%安い。一方、既報の VentureBeat は「約9割の値下げ」と書いていた。どちらの数字も、どの価格帯をどう組み合わせて比べたかで変わる。10万トークン未満の下の段だけで見るか、上の段も含めて見るかによって変わる。どちらの計算が正しいかを議論しても、読者の判断には役立たない。大事なのは、この記事の後半で見るとおり、値下げの幅そのものが1タスクあたりの費用を決めるわけではないという点である。
あわせて Anthropic は、Sonnet 5.5 のキャッシュ読み出しを100万トークンあたり0.10ドルに下げ、AWS、Google Cloud、Azure でも提供すると報じられている。
トークンの量:同じ仕事に Luna の約3倍を使う
Artificial Analysis は、同じ一式のタスクを各モデルに解かせて、点数、使ったトークン、かかった費用を測っている。その測定で、Haiku 5.5 が1タスクに使ったトークンは、GPT-6 Luna の約3倍だった。
2つのモデルの単価が同じなので、計算は単純になる。費用の大半は出力トークンから生まれるので、使うトークンが3倍なら、1タスクの費用もおよそ3倍になる。価格表では横に並んでいても、同じ仕事を頼めば、請求額は Luna の3倍近くになりうるということである。
この種のずれは、Haiku 5.5 に限らない。既報の Gemini 4 Argon は、Intelligence Index で GPT-6 Astra と同じ53点を取りながら、1タスクあたりの出力は約6.2万トークンで、Astra の約2.7万トークンの倍以上を使っていた。9月の Grok 4.7 は、Xiaomi の MiMo-V2.6-Pro と同じ46点でありながら、Artificial Analysis が指標を測るのにかかった費用は約24倍だった。新しいモデルが出るたびに、同じ点数でもトークンの使い方が数倍違う例が積み上がっている。100万トークンあたりの単価は、もはや費用の半分しか語っていない。
長い文脈の段差:トークンを多く使うほど、上の段に入りやすい
Haiku 5.5 の値段には、もう1つ見落としやすい点がある。プロンプトが10万トークンを超えると、単価は入力も出力も5倍になる。
Long Horizon タスクを回すエージェントでは、これが効いてくる。ツールを呼び出した結果や前の手順の出力は、次の手番のプロンプトに積み上がっていく。1手番あたりのトークンが多いモデルほど、早く10万トークンの線を越え、そこから先は5倍の単価で払うことになる。トークンを多く使うことと、上の段の単価に当たることは、別々の問題ではなく、互いに重なり合う。Artificial Analysis の測定で見た約3倍という差は、文脈の短い仕事より長い仕事のほうで、さらに開くおそれがある。
Haiku 4.5 からの乗り換え:差し引きで本当に安くなるか
Haiku 4.5 から乗り換える利用者にとっての問いも、同じ形になる。単価が約75%下がったということは、使うトークンが4倍以内に収まれば、1タスクの費用は前より安くなるということである。4倍を超えると、値下げの分は消える。
Haiku 5.5 が Haiku 4.5 より何倍のトークンを使うかは、今回の2つの出典で確かめた範囲には出てこない。前の世代より賢くなったモデルは、長く考えて多くを書く傾向がある。だからこそ、自分の仕事で試してみるまでは、約75%の値下げをそのまま節約の額と見なすべきではない。
読み方:値段の表ではなく、1タスクの請求額で比べる
Haiku 5.5 は、小さいモデルの値下げ合戦で Anthropic が出した答えである。上場の準備の最中に、OpenAI の最も安いモデルと同じ値段にそろえ、価格表の上では引き下がらない姿勢を見せた。
しかし Artificial Analysis の数字は、その横並びが見かけだけのものであることを示している。同じ単価で3倍のトークンを使うなら、Luna と比べたときの実際の費用は3倍近くになる。もちろん、そのぶん点数が高く、手戻りが減るなら、高い費用を払う意味はある。ただしそれは、仕事ごとに確かめるしかない。
小さいモデルを選ぶ側がすべきことは、はっきりしている。100万トークンあたりの単価を並べるのをやめ、自分の仕事を実際に流して、1タスクにかかった請求額と、出てきた結果の質を比べることである。Haiku 5.5 は、価格表だけで選べた時代が終わったことを、最も分かりやすく示したモデルになった。




