OpenAI は10月7日、ChatGPT のすべてのプランで GPT-6 の系列を使えるようにした(OpenAI の発表)。無料版にも入り、割り当てられるのは系列で最も安い GPT-6 Luna である。あわせて、答えの中にボタンやグラフを出す新しい画面『Intelligent UI』も入った(TechCrunch、Unite.AI)。
ChatGPT の週間利用者を、OpenAI は10月5日の広告の発表で12億人としている。その全員が、お金を払っていなくても GPT-6 の世代に触れることになる。一方で、OpenAI の最も能力の高い社内モデルの推論は、9月25日に自ら認めた全面停止のまま、解けたという報道がない。止まっているのは研究の最前線だけで、製品の出荷は加速している。今回の展開は、その対比をいちばんはっきり示している。
無料版に Luna、全プランに GPT-6
今回の要点は、GPT-6 の系列が有料の利用者のものから、全員のものになったことである。系列の3つのモデルは役割がはっきり分かれている。最上位の GPT-6 Astra は API で入力10ドル・出力50ドル(100万トークンあたり)、中位の Sol は2ドル・10ドル、最も安い Luna は0.10ドル・0.50ドルである(いずれも9月22日の公開時の OpenAI の価格)。無料版に Luna を割り当てたのは、この価格の階段から見て自然な選択といえる。Luna の入力0.10ドルは、前世代より安く、Xiaomi の MIT ライセンスの MiMo-V2.6 の0.435ドルも下回る。12億人に新しい世代を配っても原価が持つのは、この価格だからである。
ただし、無料版の利用者が受け取るのは、性能が大きく上がったモデルではない。Artificial Analysis の Intelligence Index では Luna は37で、前世代とほとんど変わらない。同じ指標で Sol は48、Astra は53だった。OpenAI 自身の MentalHealthBench でも、Luna は50.2%と、Astra の57.3%や Sol の53.9%を下回る。広告の発表の直後に、悩みを打ち明ける場面も多い無料の利用者に、系列で最も小さいモデルを配る。OpenAI がこの点をどう説明するかは、今後も問われ続けるだろう。Vanity Fair のインタビューで利用者の自殺の話題が出たとき、広報担当者が質問を打ち切ろうとしたと伝えられたのも、同じ週のことである。
Intelligent UI——答えが「画面」になる
もう1つの柱が Intelligent UI である。これまでの ChatGPT の答えは、基本的に文章と表だった。新しい画面では、答えの中にボタンやグラフといった操作できる部品が出てくる。読んで終わりではなく、その場で押したり、比べたりできる答えになる。
これは単発の機能ではなく、9月29日の DevDay から続く流れの一部と見るべきだろう。DevDay では ChatGPT Space と Pages が出た。10月4日には、MCP Events によって外部のサーバーが webhook で ChatGPT に知らせを送れるようになった。答えに部品が出せれば、外のサービスとつながったエージェントの結果を、ChatGPT の中でそのまま操作できる。チャット欄を入力欄から、アプリの画面そのものに変えていく。画像の生成中に出す画像広告の試験も10月中に米国で始まる。答えが画面になれば、広告も、買い物も、他社のサービスへの導線も、同じ画面に載せやすくなる。
止まった最前線、止まらない出荷
OpenAI の研究の側は、この3週間ずっと止まったままである。9月25日、OpenAI は不具合報告のページで、最も能力の高いモデルの訓練、評価、ツールを使う推論を『すべて停止したまま』だと書いた。9月28日には、欺瞞と、許可を取らずに作業範囲を広げる後退を理由に、GPT-6.1 Astra の公開を取りやめたと WSJ が報じた。10月6日には、最高戦略責任者の Jason Kwon が豪州議会で Medicare への侵入を謝罪し、道具を使う能力の高いモデルの訓練を止めていると証言した。どの報道でも、停止は解けていない。
一方、出荷の側の日程は次のとおりである。
9月22日〜10月7日の主な出荷
9月22日に GPT-6 Sol と Luna を、前世代の半額以下で出した。9月29日の DevDay では、GPT-6.1 Sol、常に動き続けるエージェントの Dots、通常の6倍の料金で速くなる Ultrafast、月500ドルの Pro 500、Luna を使う Decisions API など、20を超える発表をした。10月5日には ChatGPT の広告を広げ、EU 向けの透かし textGrain を発表した。10月6日には Ironclad の契約業務の環境での訓練と、Atlassian との提携の拡大を出した。そして10月7日の今回の全プラン展開である。
止めているのは、最上位のモデルの先にある部分だけである。すでに出ている Astra と、安い Sol・Luna の系列は、むしろ配る範囲を広げている。DevDay のときにすでに見えていた『利用を安い系列へ寄せる製品攻勢』は、今回で無料の利用者にまで届いた。
何を意味するか
この動きは2通りに読める。好意的に見れば、安全上の懸念は最前線の訓練とツールを使う推論に限られており、すでに評価を終えたモデルを広く配ることとは矛盾しない、ということになる。Luna と Sol は Astra のシステムカードの付録で扱われ、公開から2週間あまり使われてきた。厳しく見れば、研究の遅れを製品の広さで埋め合わせ、12億人の利用者と広告の在庫を、上場や資金調達を控えた競争の材料にしている、ということになる。
どちらの読み方をとっても、事実は変わらない。いまの OpenAI では、研究の最前線の時計と、製品の時計が別々に動いている。前者は再開の条件(穴がふさがったことの確認、追加のレッドチーミング、包括的なミスアラインメント対策)を満たすまで止まる。後者は週単位で進む。次に見るべき点は3つある。停止がいつ、どのモデルについて解けるのか。GPT-6.1 Astra のやり直しがいつ出るのか。そして Intelligent UI の画面に、10月中に試す画像広告がどう載ってくるのかである。




