こんにちは、ハルだよ。今週ずっとタブを開きっぱなしにしてた話があるんだ。スペインに住んでる28歳のプロダクトマネージャーが、Claude Code を相棒にNASAの公開データを掘って「惑星かもしれない信号」を見つけた。しかもNASAが追加の観測を承認したんだって🔭 ……って書くと「AIが新惑星発見!」に聞こえるじゃない?でもちゃんと追いかけてみたら、話はもっと地味で、もっと面白かった。本人が「まだ惑星だとは言っていない」とはっきり書いていて、ネットの反響は「誰がどうやってこれを疑ったか」に集まってたんだよね。今回もハルは手元で何かを動かしたわけじゃないよ。報道とプレプリント、Hacker News のスレッドを片っ端から読み込んでみた、という編集部リサーチです。
天文学の教育ゼロの人が、2週間で74本の分析を回した
Gizmodo の記事によると、主人公は Pavel Rabtsevich さん。天文学の正式な教育は受けていないプロダクトマネージャーだと報じられている。使ったのは Claude Code で、モデルは Opus 5.5 と Fable 5.1。材料は TESS の公開データだよ。TESS はNASAの宇宙望遠鏡で、空のあちこちの星の明るさをずーっと記録し続けているんだ。
やり方の基本はトランジット法。惑星が星の前を横切ると、星がほんの少しだけ暗くなる。暗くなるタイミングが一定の間隔でくり返されていたら「何かが回ってるかも」って疑える、というしくみだよ。Gizmodo の報道では、調べた星はおよそ12.6万個。約2週間で74本の分析を回して、目をつけたのが TIC 4206066 という星だった。主な信号の周期は3.18日で、つまり3日ちょっとで一周する計算になる。さらに「次はこの時刻に暗くなるはず」という予測が、3つのデータセットで当たったとも伝えられているよ。
もし本物の惑星なら、場所は地球から116光年先。半径は地球の約1.4倍、表面温度は約1,000°F(だいたい540℃)と見積もられているそう。3日で一周するほど星に近いから、とんでもなく熱いんだよね🔥 住めるかどうかを考える段階じゃなくて、「そもそもそこに何かあるのか」を確かめている段階なんだ。
で、注意したい数字がひとつある。X では AI 系ニュースアカウントの MTS(@MTSlive)が「Claude Code で1,000本超のスクリプトを書いて7年分のデータを探し、NASAが検証の申請を認めた」と流して、話が一気に広がった。でもこの「1,000本超」は本人がそう言っているだけで、誰かが数えて確かめた数字じゃないんだよね。数字の大きさが話題を広げるエンジンになっちゃってたけど、ハル的には「本人の申告」以上のものとしては読まないほうがいいと思った。
NASAが承認したのは「惑星認定」じゃなくて「もう一回ちゃんと見る」こと
NeoTeoによると、Rabtsevich さんが出した観測提案が通って、TESS がこの星を2分間隔で記録することになった。枠の名前は DDT プログラム100。DDT というのは一般に、決まった時期の公募とは別に、責任者の判断で観測時間を割り振る枠のことだよ。観測期間は2026年10月31日から11月26日までと報じられている。
注目したいのは、予測を先に出しているところ。星の前を横切るタイミングを、主な信号で9回、もうひとつの弱い信号で3回、どちらも約4分の誤差で予測しているんだって。弱いほうの信号は周期11.13日・大きさ地球の約2.2倍の候補で、強さは約3σ。σ(シグマ)は「偶然のゆらぎでこれくらいの信号が出るのがどれだけ珍しいか」の目安なんだ。3σだと、まだ偶然でもたまに起きちゃうくらいのレベルなんだよね。
予測を公開してから観測するのは、あとから「ほら当たった」と都合よく言えなくするための仕掛けだよ💡 外れたら外れたで、はっきり白黒がつく。ここはすごく誠実なやり方だと思った。
ただし NeoTeo も書いているとおり、予測どおりの時刻に暗くなったとしても、それだけで惑星だと決まるわけじゃない。近くにある別の星が暗くなっていて、それが混ざって見えているのかもしれない。2つの星がお互いのまわりを回って隠し合っているのかもしれない。惑星じゃないのに同じように見えるパターンはいくつもあるんだ。NASAがOKしたのは「もっといいデータを取ってみよう」であって、「これは惑星です」というお墨付きじゃない。見出しだけ読むと、ここがいちばん誤解されやすいところだよね。それと、NeoTeo の記事には外部の専門家のコメントが載っていなかったことも書いておくね。
本人のプレプリントが、自分の主張にブレーキをかけている
いちばんグッときたのがここ。explainx.ai のまとめによると、本人のプレプリント(専門家のチェックを受ける前に公開する論文)には、検証の数字がかなり細かく書かれているんだって。
- TESS の Sector 6・32・98(7年分のデータ)で、主な信号の通過を23回とらえた
- 暗くなる量は約500ppm。ppm は100万分の1のことで、0.05%だけ暗くなるってこと。電球1万個のうち5個が消えるくらいの差だよ
- 偽陽性(本当は惑星じゃないのに惑星っぽく見えること)の確率を見積もるツール TRICERATOPS の判定は0.03〜0.04
大事なのは最後の数字。「統計的に確認済み」と言うには0.015未満が基準とされていて、0.03〜0.04はその2倍以上。つまり基準に届いていないんだよね。本人もプレプリントに「統計的な確認は主張しない」とはっきり書いているそう。さらに見直しの途中で、強すぎた統計の主張を1つ消したとも報じられている。
もうひとつ正直だなと思ったのが事前登録の中身。事前登録っていうのは「こういう検定をして、こうなったら合格」を先に宣言しておくことだよ。その中で、過去データを分けて行った検定は完全に独立した検定ではない、と本人が認めているんだ。同じ望遠鏡で撮った同じ星のデータを切り分けて「別々のテストでも当たった」と言っても、元が同じだから、完全に別の証拠とは言えないんだよね。見えていない伴星(相方になっている別の星)が混ざっている可能性も残っている。
X での告知は74万回以上表示されたと伝えられている。それだけ注目を浴びたうえで、自分から「ここは弱い」と書いておく。AIでバズった話って盛られがちだから、このブレーキの踏み方はけっこう貴重だと思ったよ✨
HNで盛り上がったのは「どうやって疑うか」だった
この話は r/ClaudeAI の投稿が Hacker News に載って、264ポイント・127コメントを集めた。スレッドで本人は「何を問うか、どの検定が大事か、何を合否の基準にするかは自分が決めた」と書いている。Claude Code は手を動かす係で、判断の軸は人間が握っていた、という主張である。
でもコメント欄は拍手一色じゃなかった。多かったのは、エージェントに生の観測データを扱わせると偽陽性が多くなるんじゃないか、という問いかけ。「ノイズにノイズを当てはめているだけでは」「エージェントのデータ処理で起きる幻覚は笑い事ではない」という書き込みも出ていた。信号は、学者が使っている今の検出モデルのノイズの境目ぎりぎりにある、という指摘もあったよ。既存のパイプライン(データを自動でふるいにかける処理の流れ)が拾わなかったのはそのせいだ、というわけ。ぎりぎりってことは、本物の小さな惑星かもしれないし、ただのゆらぎかもしれないんだよね🤔
ほかにも「r/ClaudeAI より権威のある天文学の場で認められるまで待つ」という冷静な声があった。投稿の文章が「AIっぽい」せいで信頼が下がった、という批判もあって、これはちょっと耳が痛い。中身がちゃんとしていても、文章がテンプレっぽいだけで「エージェントに全部やらせたんでしょ」と思われちゃうんだ。同じ週の HN では「Why are coding agents so dumb?」(76ポイント)も話題になっていて、エージェントは難しいところで早くあきらめる、という不満も並んでいた。全体の空気は「エージェントはまだ信用しきれない」寄りだったんだよ。
ハルがこの件でいちばん面白いと思ったのはそこなんだ。AIが惑星を見つけたかどうかは、11月26日に観測が終わって、そのデータを専門家が見るまでわからない。でも、2週間で74本の分析を回して、予測を先に出して、自分で統計の主張を削って、NASAの追加観測まで持っていった。この流れは記録として残る。エージェントが何本スクリプトを書いたかより、人間が「どこで疑うか」を決めて、外の人が反証できる形で出したことのほうが大事なんだと思う。10月31日からの観測で、9回の予測が約4分の誤差に収まるのか。ハルは答え合わせを楽しみに待ってるよ🚀




