クラウドAIプラットフォーム選定において、既存クラウド環境との親和性が依然として最大の決定要因であることが、日本企業を対象とした最新調査で明らかになった。同時に米国では、AWSとOpenAIの独占契約終了を機にAmazon BedrockへのOpenAIモデル追加が進み、Azureの牙城に対する追撃が本格化している。
日本企業調査:Azure OpenAIが僅差の首位
Ragateが2026年1月19日に発表した調査結果によると、情報システム・DX推進担当者505名を対象に2025年12月に実施したエンタープライズAIプラットフォームの利用実態調査で、最も利用率が高かったのはAzure OpenAI Serviceの7.5%だった。「Microsoft環境との統合性」「エンタープライズレベルのセキュリティ」「既存投資の活用」が選定理由として挙げられ、特にMicrosoft 365環境を持つ企業からの支持が厚い。2位はAmazon Bedrockで6.7%とわずか0.8ポイント差に迫り、AWSを主要クラウドとする企業や複数LLMを使い分けたい企業から選ばれた。3位はGoogle Vertex AIの4.6%で、Gemini 1.5 Proの超長文コンテキストが強みとされる。ただしAIプラットフォーム全体の利用率は18.8%にとどまり、ASCII.jpの報道によれば市場はまだ浸透の初期段階にある。
OpenAI独占契約終了がもたらした地殻変動
米国では2026年4月28日、AWSとOpenAIが長年の独占的取り決めを終了させ、GPT-5.5とGPT-5.4がAmazon Bedrockで初めて利用可能になった。これは約7年間続いたMicrosoft Azureの独占ホスティング体制の終焉を意味する。さらに7月9日にはGPT-5.6ファミリー(Sol、Terra、Luna)の一般提供もBedrockで開始され、Tech Insiderの報道ではBedrockがOpenAIモデルの最速アップデート先になったと指摘されている。AWSはBedrock Managed Agentsも投入し、OpenAIモデルを活用したエージェントを完全にAWS環境内で完結させられる体制を整えた。JDSupraの分析は、これによりデータ管理・監査性・規制対応を重視する企業にとってAzureと実質的に対等な選択肢になったと評価する。チャネル筋の情報では、JPMorgan Chase、Salesforce、Pfizerといった大企業がBedrock契約の拡大やAzure OpenAIワークロードの一部移行を検討しているという。
カタログ規模とレイテンシで浮かぶ三者三様の強み
Tech Insiderの比較調査によれば、モデルカタログ規模はAzure AI Foundryが1,700超と圧倒的で、OpenAIのGPT-5系列に加えLlama、Mistral、Phi、Qwen、DeepSeek、Claudeまで網羅する。Vertex AIはGeminiファミリーとGemma 4を中心に200超と中規模、Bedrockは100超と数では劣るものの、Claude、Llama、Mistral、Cohere、DeepSeek、自社のTitan・Novaなど実運用で選ばれるモデルを押さえている。性能面では、別の比較データで初回トークン応答速度がAzure OpenAI 180ミリ秒、Vertex AI 210ミリ秒、Bedrock 245ミリ秒という結果が出ており、Azureが応答速度で優位に立つ。一方、市場シェアではAWSが2025年第4四半期に世界クラウド市場の31%を握り、2026年第1四半期のクラウド収益は376億ドルに達した。Azureは同四半期にクラウド収益が前年比40%増、Google Cloudは同63%増の200.3億ドルとなり、価格面でも全リージョンで8%の値下げを実施している。
エージェント基盤競争とAssistants API終了の衝撃
2026年8月26日、OpenAIがAssistants APIを正式に廃止したことで、これに連動していたAzure OpenAI Assistants API(プレビュー版)も同日サービスを終了した。この空白を埋める形で、AWSは7月にBedrock AgentCoreを含むBedrock 2プラットフォームを一般提供に移行し、ビジュアルエージェントビルダーを追加した。Tech Insiderの技術検証では、モデルの完全な差し替え可能性とGatewayの検索呼び出しからガードレールのテキスト単位課金まで細分化された料金体系を持つ点で、AgentCoreが技術的に最も柔軟な選択肢とされる。一方、既にAzure OpenAIを導入済みの企業にとってはFoundry Agent Serviceが事実上の移行先となり、Microsoft 365との統合深度が引き続き強みとなっている。Googleも毎月のようにVertex AI Agent Builderの対応リージョンを拡大しており、三社の競争は基盤モデル提供からエージェント実行環境へと戦場を移しつつある。
企業の選定基準は「既存投資の活用」に収斂
Ragateはコメントで「Azure環境ならAzure OpenAI、AWS環境ならBedrock、GCP環境ならVertex AIという選択が合理的であり、既存のクラウド投資とセキュリティポリシーを最大限活用できるかが成功要因になる」と指摘している。実際、Amazon Bedrockのサーバーレスアーキテクチャとの親和性、Azure OpenAIのMicrosoft 365統合、Vertex AIのGoogle Workspace連携は、いずれも既存エコシステムを持つ企業の囲い込みに直結している。OpenAIモデルのマルチクラウド化により選択肢は広がったものの、料金体系(Bedrockのトークン従量制、AzureのPTU、Vertex AIの無料枠併用)や監査要件の違いは依然として大きく、単純な機能比較だけでは最適解を出しにくい状況が続いている。