アジア系ファンドが叩き出す三桁%リターン
2026年に入り、AI関連株の急騰を背景にアジアのヘッジファンドが突出した運用成績を上げている。ロイターの報道によれば、複数の関係者は年初から5カ月間で100%を超えるリターンを実現したファンドの存在を明らかにした。半導体サプライチェーンをほぼ網羅するアジア市場の特性を生かし、供給制約をいち早く察知した運用者がAI関連の投資機会を先取りできたことが要因とされる。
市場関係者によれば、イラン情勢を巡る戦争がもたらした市場変動にもかかわらず、AI主導の株高基調は崩れておらず、日本・韓国・台湾の株価指数は軒並み過去最高値を更新した。この地合いの中で、テック銘柄への早期かつ集中的なポジション構築が高リターンの源泉になったという。
WT資産運用とE20キャピタルの具体的な運用実績
香港の著名投資家ウォン・トンシュー氏が率いるWT Asset Managementは、運用するChina Focusロング・ショート・ファンドで2026年5月末までに年初来103%の純リターンを達成した。5月単月だけでも20%超の上昇を記録している。同社はロングオンリー・ファンドでも67.5%の上昇を報告しており、運用資産(AUM)は約100億ドルにまで急拡大したとされる。同社は香港上場のナレッジ・アトラス(通称Zhipu AI)の礎石株主であり、同社株は上場来1000%超の値上がりを見せた。半導体メーカーの華虹半導体(Hua Hong Semiconductor)への投資も収益に寄与したという。
2025年設立の香港拠点ファンド、E20キャピタルも同期間で136%の純利益を計上した。運用資産20億ドル規模の主力ファンド「グローバル・オポチュニティ・インベストメント・ファンド」は、メモリー・光学部品・CPU関連株への投資が牽引役となった。また長期テック投資を手掛けるTrivest Advisorsも同期間で88.9%の利益を記録している。ケンブリッジ・アソシエイツのシニア投資ディレクター、ナビン・ラジ・ジャイデブ氏は「アジアのAIサプライチェーン企業の多くはグローバル投資家からいまだ十分に評価されておらず、突出したリターンを生む機会が拡大している」と指摘している。
世界全体でも好調——Goldman Sachsが上半期7%を報告
ロイターが確認したGoldman Sachsの顧客向けノートによれば、世界のヘッジファンドは2026年上半期に平均で約7%のリターンを上げ、過去10年平均の4.1%を大きく上回った。特に株式ロング・ショート戦略は平均17.7%の利益を記録し、個別銘柄間のパフォーマンス格差を捉えた銘柄選択が奏功したとされる。Goldmanはまた、過去5年間でヘッジファンドが伝統的な「60/40」ポートフォリオを年率約2.5ポイント(250ベーシスポイント)上回ってきたと分析している。
2025年通期は16.24%、レバレッジも過去最高水準に
ロイターが伝えたGoldman Sachsのプライムブローカレッジ報告によれば、2025年通期でヘッジファンドは平均16.24%のリターンを記録し、S&P500指数の年間上昇率約16.4%とほぼ並んだ。D.E. Shaw、Balyasny Asset Management、Bridgewater Associates、Point72 Asset Managementといった大手マルチマネージャーファンドも軒並み二桁の利益を計上している。同時にGoldmanのプライムブック全体のグロス・レバレッジは12月に292.8%まで上昇し、投資家から預かった資本100ドルに対しファンドが平均300ドル相当のロング・ショートポジションを保有していたことになる。グローバル・ロング・ショート・ファンドのレバレッジ水準は213.2%と過去最高を記録した。
2026年7月に反落——JPMorganが指摘する巻き戻しリスク
JPMorganのノートによれば、2026年7月にテクノロジー関連取引の巻き戻しが発生し、世界のヘッジファンドは月間で約3%の利益を失った。それでも全戦略を合わせた年間リターンは約8%を維持している。原油価格の急騰を引き金にアジアの半導体株が売られ、米国のテック株指数は7%超下落した。混雑したテック株ポジションが災いし、市場が急変した際に有利な水準で手仕舞いできなかったことが損失の原因という。Goldman Sachsも同時期、世界の株式ピッカーが過去4年で2番目に悪い月間損失を計上し、アジア拠点の株式ピッカーに至っては記録上最悪の月となったと分析している。JPMorganはレバレッジ水準が7月の月初と月末で同水準だったものの、月中に大きく変動したと指摘し、過去5年ベースでは依然として高水準にあるとしている。
