証券各社がロボアドバイザーへのAI機能実装を加速させている。矢野経済研究所の調査(2024年7月発表、預かり資産残高ベース)によれば、ロボアド市場規模は2025年度に5兆円を超えると予測されており、資産配分から運用までを自動化するサービスは投資初心者の取り込みを追い風に拡大を続けている。従来型の「診断してポートフォリオを提案する」機能に加え、相場を予測して配分を動的に変更するAIや、投資家と対話しながら情報を提供する生成AI型のアシスタントまで、機能の幅は急速に広がっている。
SBI証券、AI予測型ロボアドを2本柱で展開
SBI証券は2023年12月末に新ロボアドバイザー「ROBOPRO for SBI証券」を投入した。AIが相場の上昇・下落を予測し、投資配分をダイナミックに変更する仕組みで、運営元のFOLIOが手がける「FOLIO ROBO PRO」は金融庁公表の2022年末時点データで過去3年の累積リターン1位を獲得したとされる。ザイ・オンラインによれば、公開から2023年11月末までの実績は約64.15%のプラスで、2020年2月末のコロナショック時にも危機を事前察知し下落幅を抑制したという。
さらにSBI証券は「SBIラップ AI投資コース」も展開する。こちらはFOLIOと共同開発したサービスで、他社ロボアドに多いリスク許容度の選択が不要な点が特徴。最低投資額は1万円(1000円単位)、年率手数料は0.66%で、8種類の専用投資信託を通じて米国上場ETFに分散投資する仕組みだ。年率0.2%のポイント還元プログラムも用意されている。
moomoo証券、対話型AI「moomoo AI」を業界初で提供
ネット証券のmoomoo証券は2025年6月、資産運用を代行する従来のロボアドとは異なる、投資に特化した対話型AI「moomoo AI」の提供を開始した。同社のプレスリリースによれば、主要ネット証券5社(SBI証券、松井証券、マネックス証券、三菱UFJ eスマート証券、楽天証券)と比較した2025年5月7日時点で業界初の機能とされる。
moomoo AIは対話型の「moomoo AIアシスタント」と、個別株の最新情報を自動表示する「AI銘柄分析日報/週報」で構成され、投資戦略の提案まで無料で行う。最終的な投資判断はユーザー自身が下す設計で、資産配分を自動で決定するロボアドとは一線を画す。同社アプリは国内で150万ダウンロードを2024年末までに突破しており、2018年にシリコンバレーで生まれたmoomooはアジアではシンガポールや香港でもトップシェアを持つという。
楽天証券、積立診断の新機能を追加
楽天証券は2024年10月、投信積立専用の新たなロボアドバイザー「かんたん積立診断」を投入した。現在の積立設定内容を分析し、運用益を示す「稼ぐ力」、値下がりへの「耐える力」、値動き幅を抑える「安定力」の3指標を診断、改善につながる「プラスワン銘柄」を提案する機能だ。既存の「らくらく投資」がスマホ専用Webサイトで9つの質問から5タイプのコースを選ぶ簡易版であるのに対し、新機能はより踏み込んだ分析を提供する点が異なる。
手数料とパフォーマンスの比較
ロボアド各社の手数料体系には差がある。かぶリッジの比較によれば、投資一任型のWealthNaviとROBOPROは年率税込1.1%(3000万円超は0.55%)、SBIラップは0.66%(AI投資コース)、アドバイス型の投信工房は0.37%、マネックスアドバイザーは0.33%と幅がある。ウェルスナビはYahoo!ファイナンスによれば、預かり資産が2026年5月11日時点で2兆円を超え、利用者数は2025年12月31日時点で約46万人。2025年に三菱UFJフィナンシャル・グループ傘下に入り、最低投資額は1万円からとなっている。
新NISA対応状況と業界への含意
新NISA対応のロボアドは限定的で、かぶリッジの調査ではWealthNavi、SUSTEN、投信工房の3社のみが対応する。SUSTENは2023年2月に最低投資額を10万円から1万円に引き下げ、2024年2月からはマネーフォワードME利用者向けサービスも開始した。日経クロストレンドは2025年9月の連載で、ChatGPTなど生成AIを個人が投資判断の相談役として活用する動きも紹介しており、証券会社純正のロボアドと生成AIツールが並存する構図が今後も続くとみられる。予測型AIによる資産配分の自動化と、対話型AIによる意思決定支援という2つの方向性が併存する中、各社の機能拡充競争は今後も続く見通しだ。



