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AIエージェント導入、ROI「達成」わずか25%——IBM調査で判明、アトラシアンは明確に示せる経営幹部6%と指摘

Snowflake調査は投資対効果49%と報告、日経調査では企業の8割が「優先課題」と回答——測定手法のばらつきが浮き彫りに

山本 浩二|2026.08.14|8|更新: 2026.08.14

IBM調査でAI投資の期待ROI達成企業は25%、全社拡大は16%に留まる。アトラシアン調査ではROIを明確に示せると確信する経営幹部は6%のみで58%が測定方法が分からないと回答。効果測定の手法確立が企業の共通課題として浮上している。

Key Points

Business Impact

AIエージェント導入前に、対象業務の処理時間・件数・人件費換算コストなど「導入前ベースライン」を必ず数値化し、コスト削減効果から測定を始めるべき。売上成長効果を初期KPIに据えると期待外れに終わりやすく、まずは小規模なユースケースでROIを実証してから全社展開の予算を確保する順序が有効だ。

AIエージェント導入、ROI「達成」わずか25%——IBM調査で判明、アトラシアンは明確に示せる経営幹部6%と指摘

企業によるAIエージェント導入は加速している一方、投資対効果(ROI)を明確に測定・実証できている企業は依然として少数派であることが、複数の調査で裏付けられた。導入の「熱」と、成果を数字で示せる「実力」の間に大きなギャップが存在しているのが現状だ。米IBM、Snowflake、豪アトラシアン、日本経済新聞、LayerXという異なる主体の調査結果を並べると、そのギャップの輪郭がより鮮明に浮かび上がる。

ビジネス・リーダーがAIエージェントでROIを実現する方法 | IBM
出典: ibm.com
AI技術の投資対効果を明確に示せる企業は6%に留まる、豪アトラシアンが調査
出典: デジタルクロス

IBM調査:期待ROI達成はわずか25%、全社拡大は16%

IBM Institute for Business Valueが実施した2025年の経営幹部調査によると、AIイニシアチブのうち期待された投資収益率を達成したのはわずか25%、企業全体に拡大できたのは16%にとどまった。IBMは失敗の要因を「AIそのものではなく、そのデプロイ方法」にあると分析する。多くの経営幹部が初日からの売上成長を目指す一方、成功する導入は多くの場合コスト削減という測定容易な領域から始まっているという。

IBMは、ユースケース選定、導入前ベースラインの決定、複数エージェントを統合できるオープンなオーケストレーション・レイヤーの採用、という段階的アプローチを推奨している。特に、導入前に対象業務の処理件数・時間・人件費を数値化しておかなければ、後から効果を検証すること自体が不可能になる点を強調しており、これは他の調査でも共通して指摘される論点だ。

Snowflake調査:ROI49%、コード生成の半数近くがAI製

一方、SnowflakeがOmdiaに委託し10カ国2,050人のビジネス・IT リーダーを対象に実施した調査では、生成AIとエージェント型AIの投資利益率は49%、つまり投資1ドルにつき1.49ドルのリターンという結果が出た。前年比で約20%の増加だという。ソフトウェア開発領域では全コードの48%がAIによって生成され、82%の組織がコードテストとバグ検知の改善を、80%がコード品質向上を報告している。

アーリーアダプターの32%はすでにエージェントを本番稼働させ、さらに25%が1年以内の稼働開始を予定する。ただし経営幹部は今後3年で投資するエージェント型イニシアチブの約41%が失敗すると予想しており、「放棄されたパイロットは失敗ではなく反復」という前提が、平均49%のROIを可能にしているとSnowflakeは分析する。つまり高いROIの裏側には、大量の試行と淘汰のプロセスが存在しているという見方だ。

アトラシアン調査:ROIを「明確に示せる」経営幹部はわずか6%

豪アトラシアンのAtlassian Teamwork Labが2026年1〜2月に米英豪印独仏の1万2,035件の回答とフォーチュン1000経営幹部25名へのインタビューを基にまとめた調査では、AI技術のROIを「明確に示せると確信している」経営幹部は6%に留まり、58%が「測定方法が分からない」と回答した。34%の経営幹部は「特定の重点領域なし」と答え、戦略不在の状態が招く重複作業や連携不足によりフォーチュン500企業で年間推定1,610億ドルの損失が生じているとAtlassianは分析する。

89%が作業スピード向上を実感する一方、チーム間連携の改善を認めたのは48%に過ぎない。成果を上げる組織はコンテキスト共有・ワークフロー再設計・協働文化の3要素を重視し、目標整合性の低下を12分の1に、AI活用の整合性を13倍に高めているという。同社は、個人の生産性向上とチーム全体の成果を混同することが、ROI不明確化の一因になっていると指摘する。

日本企業の実態:8割が優先課題、月間コストは平均274万円

日本経済新聞は、企業の8割がAIエージェントの効果測定・改善を「優先課題」と位置付けていると報じた。効果測定の仕組みが整う前から導入が先行している実情がうかがえる。コスト側の課題も顕在化しており、LayerXが400名を対象に実施した「企業のAI利用・コスト管理に関する実態調査2026」では、73.3%が「AI利用コストはすでに、または1年以内に経営課題になる」と回答し、66.5%が前年比のコスト増を実感、65.5%はAIエージェント利用に伴う増加を指摘した。

月間AI利用コストは平均約274万円で、64.8%の企業が月50万円以上を支出している。今後整備したい項目として最多だったのは「AI利用額と成果・ROIを紐づけたデータ」(21.8%)で、単なる利用額把握を超えた投資対効果管理へのニーズが強まっている。コストが可視化されても、それが成果指標と結びついていなければ経営判断には使えないという課題が、この結果から読み取れる。

現場レベルのROI算出法とベンダー動向

実務レベルでは、AI専門メディアAINOWが紹介するバックオフィスAIエージェントの導入プロセスが参考になる。ROIは「削減できた作業時間×担当者の時給-導入・運用費用」で概算でき、月間40時間の削減、時給換算2,500円のケースでは月10万円相当の効果になるという単純な式が示されている。まず1〜2業務に絞ったスモールスタートで効果を数値化し、経営層への展開提案につなげる流れが推奨されている。

こうした測定・ガバナンス需要の高まりを受け、ソフトウェア保守大手のリミニストリートはAIエージェントのガバナンス・セキュリティ・相互運用性を包括的に提供するサービスを2026年7月30日に発表するなど、ベンダー側も測定・統制の課題解決に動き始めている。複数エージェントが連携するマルチエージェント環境では、個々のエージェントの挙動を追跡するLLMオブザーバビリティの仕組みが不可欠になりつつあり、OpenTelemetry GenAI規約のような計測標準への関心も広がっている。

共通する課題と経営への含意

5つの調査を通じて見えてくるのは、ROI測定の失敗が技術力不足よりも「測定設計の欠如」に起因しているという構図だ。IBMが指摘する導入前ベースラインの欠如、アトラシアンが指摘する測定方法の不明確さ、LayerXが示すコストとROIの紐づけ不足は、いずれも同じ根を持つ課題である。Snowflakeが示す41%という高い失敗予想率も、裏を返せばパイロットを恐れず試行を重ねる文化があってこそ成立する数字であり、失敗を許容しつつ数値で検証する仕組みづくりが今、経営層に求められている。

風刺画: AIエージェント導入、ROI「達成」わずか25%——IBM調査で判明、アトラシアンは明確に示せる経営幹部6%と指摘

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