相次ぐ巨額発表、規模は兆円単位に
2026年6月上旬、世界の巨大テック企業によるAIインフラ投資計画が相次いで明らかになった。米グーグルの親会社アルファベットはデータセンター建設向けに847億5000万ドルの増資計画を発表し、ソフトバンクグループ(SBG)はフランスに2031年までに750億ユーロを投じ、5GW規模のAIデータセンターを構築する方針を示した(Yahoo!ニュース)。米プライベートエクイティ大手KKRも韓国向け投資が今年約30億ドル(約4700億円)に達し、単年度として過去最高を記録する見通しだ(BiGGO)。これらはいずれも自律的にタスクを処理するAIエージェントの普及を見据えた中長期の計算需要拡大に備えたものだ。
GW級データセンターのコスト、2倍に膨らむ見通し
エヌビディアのジェンスン・ファンCEOは2026年6月1日、台湾での講演で1ギガワット(GW)級データセンターの投資額が現時点で500億ドル(約8兆円)だが、近い将来800億〜1000億ドル(約13兆〜16兆円)に達する見込みだと説明した(日本経済新聞)。UBSの推計によれば、ハイパースケーラー各社の設備投資は2026年に前年比76%増の6730億ドルに達するが、増加率は2027年に25%、2028年に6%へと鈍化する見通しだ。市場の関心はもはや「投資するか否か」ではなく、投じた資金をいつ、どれだけの売上高やキャッシュフローに転換できるかに移っている。
電力・部材が突きつける「物理的壁」
資本の積み増しが急速に進む一方、用地や電力の確保、部材調達の遅れが事業進捗を阻んでいる。米ウォール・ストリート・ジャーナルが引用したJPモルガンの分析では、2027年完成を目指す計画のうち60%超が未着工で、さらに7%で遅延が生じている。背景には変圧器やガスタービンといった電気設備の調達難がある。大型変圧器の納期は最長5年程度に及び、建設遅延の直接要因となっている。こうした逼迫を受け、日立エナジーは2025年9月、米国電力業界史上最大規模となる10億ドル超の投資を発表し、うちバージニア州サウスボストンの変圧器工場新設に約4億5700万ドルを投じるとした(ジェトロ)。三菱重工業も火力発電向けガスタービンの生産能力を2030年度に2024年度比で倍増する方針とされ、供給不足を背景にデータセンター事業者が小型ガスタービンを数量ベースで大量購入する動きも出ている。
自前電源の確保に走るハイパースケーラー
「電力の壁」を回避するため、事業者側は電源の自前調達に動いている。グーグルは風力・太陽光発電開発の米インターセクトパワーを47億5000万ドルで買収し、自社で電源を保有する体制を整えた。加えてデマンドレスポンス大手の米ボルタスと提携し、送電網逼迫時に消費電力を制御する仕組みの構築を進める。マイクロソフトはスリーマイル島原発の再稼働に向け電力大手と合意し、アマゾンやグーグルも小型モジュール炉(SMR)開発契約を締結した。ただし米CNBCによれば、中国・ロシア以外で稼働実績のないSMRは技術・法規制のハードルが高く、実用化には10年以上を要するとみられ、短期的な解決策にはなりにくい。
ソフトバンクのオハイオ案件と国内への波及
SBGが米オハイオ州で主導する10GW級ガス火力発電・データセンター建設計画は、総額5500億ドルに及ぶ「日米戦略貿易投資協定」の第一陣とされる。総発電容量10GW(うち9.2GWが天然ガス火力)、送電網投資42億ドルをAEP Ohioと提携するSB Energyが全額負担し、日本側資金によるエネルギー関連投資は333億ドルに上る。ソフトバンク、東芝、日立製作所、みずほ銀行、三井住友銀行など日本側と、Goldman Sachs、AEP Ohio、GE Vernova、Bechtel、Kiewitなど米国側の計21社が「ポートマス・コンソーシアム」を組成した(さっつーのAIエージェント)。国内でも秋田市で整備費2兆円規模、総受電容量最大500メガワット(MW)の日本最大級AIデータセンター構想が浮上し、UAE政府系ファンドの投資協議が報じられているほか、富山県南砺市では3.1GW規模の「国内最大級」データセンター誘致構想が明らかになっている(東洋経済オンライン)。米商務省経済分析局によれば2026年第1四半期の設備投資は前期比年率10.1%増となり、その伸びのほぼ全てをAI・データセンター関連が占め、寄与度は13.3ポイントに達した(ジェトロ)。巨額発表の裏で、実際の稼働を左右するのは資金力ではなく電力系統への接続許可と部材の調達スピードであることが、各地の事例から浮かび上がっている。


