兆円規模のAIデータセンター計画が世界各地で相次ぐ
ソフトバンクグループは仏マクロン大統領が主催した投資誘致イベントで、フランスにAI向けデータセンターを建設すると発表した。投資額は最大750億ユーロ(約14兆円)、総電力容量は5ギガワット(GW)に達する計画で、同社の欧州AIインフラ投資としては最大規模となる。第1段階として2031年までに450億ユーロ(約8.3兆円)を投じ、北部3地域に3.1GW規模の施設を整備する。建設加速に向け仏シュナイダーエレクトリックと提携し、ダンケルク港にサーバー収容棚や電源設備の製造拠点も新設する(朝日新聞)。
国内では鹿児島県薩摩川内市で、日本と台湾の合弁企業カイシンデジタルインフラストラクチャーが国内最大級のAIデータセンター建設を計画する。7月18日に市と立地協定を締結し、2026年度中に着工、2032年度には350メガワット(MW)規模の稼働を目指す。投資額は約2兆8500億円で、地元雇用は約100人を見込む。建設地は川内火力発電所跡地の「サーキュラーパーク九州」で、かつて発電拠点だった土地がデジタル産業拠点に転換される(FNNプライムオンライン)。
GW級施設の建設コストは1カ所で8兆〜16兆円規模に
NVIDIAのジェンスン・ファンCEOは2026年6月1日の開発者イベント「NVIDIA GTC Taipei 2026」で、1GW級データセンターの投資額について「当初は200億〜300億ドルだったが、今や500億〜600億ドルに達し、間もなく800億〜1000億ドルになる」と語った。円換算では約8兆円から近く13兆〜16兆円へ膨らむ計算になる。米国では電力会社が1GW級施設を受け入れる余力を失いつつあり、運用側が新規発電所を併設する事例も出ている。米シェブロンは2026年6月22日、マイクロソフトがテキサス州西部に建設するAIデータセンター向けに、発電容量2.67GWの共同設置型発電所「Kilbyプロジェクト」を発表した(日経クロステック)。
電力消費は2026年に26%増、2030年に1200TWh超へ
米調査会社ガートナーは2026年の世界データセンター電力消費が前年比26%増の565テラワット時(TWh)に達すると予測した。AI向けサーバーの消費電力は175TWhと8割以上増え、全体の3割を占める見込みで、2027年には従来型サーバーの消費電力を上回るという。電力需要は2026年の132GWから2030年には290GWに達すると見込まれ、ディレクターアナリストのリンラン・ワン氏は「データセンターの電力確保がグローバルなAI競争において規模拡大と利益率維持の新たな主戦場になっている」と分析する(Gartner)。
米エネルギー情報局(EIA)も8月11日、2025年に過去最高を更新した米国の電力消費量が2026年・2027年も増加を続けると予測した。需要は2025年の4兆1950億キロワット時(kWh)から2026年に4兆2680億kWh、2027年には4兆3910億kWhに達する見込みだ。一方でテキサス州は27年の需要予測を前回比14%増から6%増へ下方修正しており、これは州知事が新規データセンター開発の一時停止を発表したことが影響している(ニューズウィーク日本版)。
電力インフラへの波及投資、日立エナジーは10億ドル超
電力需要急増を受け、周辺インフラへの投資も膨らんでいる。日立エナジーは2025年9月、送配電機器の製造能力拡大を目的に、米国電力業界史上最大規模となる10億ドル超の投資を発表した。うちバージニア州サウスボストンの大型変圧器工場新設には約4億5700万ドルを投じる。同社はトランプ政権のAIアクションプランに沿ってデータセンター建設が拡大し、エネルギー需要が急増していることを背景に挙げる。大型変圧器は納期が最長5年に及び、設備不足が建設遅延の要因になっているとの指摘もある。三菱重工業は火力発電向けガスタービンの生産能力を2030年度にも2024年度比で倍増する方針と報じられ、在米日系メーカーによれば納入枠は数年先まで埋まる需給逼迫が続く(ジェトロ)。戦略国際問題研究所(CSIS)の2026年3月推計では、データセンター関連投資に占めるGPUの比率だけで投資額全体の45%以上を占めるとされる。
韓国は1000兆ウォン投資を表明、保険市場も整備急ぐ
電力とインフラの巨大化はリスク管理の枠組みにも波及している。韓国政府は6月、2035年までに18.4GW規模のAIデータセンターを構築し、官民合計で1000兆ウォン以上を投資する計画を発表した。これを受け保険業界では、世界最大の保険ブローカーであるエーオンが4月にデータセンター専用の統合保険プログラムの補償限度を最大35億ドルに拡大するなど、市場先取りの動きが強まっている。韓国国内でもサムスン火災海上保険が外部専門家とAIデータセンターのリスク評価ガイドラインを策定中で、今年下半期の公開を目指す(ChosunBiz)。単一保険価額が200億ドルを超える超大型施設も登場しており、事故発生時の被害規模の大きさが保険業界の引受負担を高めている。




