ルール & 政策報道

中国、生成AI規制を「弁法」の積み重ねで運用強化 剪映など初摘発、AI恋人規制も7月施行

2023年の生成AIサービス管理暫定弁法を起点に、標識義務・擬人化規制・執行摘発が同時並行で進む中国当局の規制網

山本 浩二|2026.09.02|7|更新: 2026.09.02

中国は法律のない中、生成AIサービス管理暫定弁法など部門規章を積み重ねて規制網を構築。剪映など初の摘発事例やAI恋人規制の7月施行で執行段階に移行している。

Key Points

Business Impact

中国市場で生成AIサービスを展開・検討する企業は、モデル自社開発なら生成AIモデル備案、既存モデル組込みなら組込み登記が必須であり、コンテンツ標識・未成年者保護措置の実装を商用化前に完了させる必要がある。感情的対話機能を持つサービスは擬人化弁法の追加規制対象になり得るため、機能設計段階でCAC・MIITとの事前対話を組み込むべきだ。

brown wooden blocks on white surface
生成AIを巡る米欧中の規制動向最前線 中国におけるAI関連規制
出典: PwC

法律不在のまま部門規章が規制網を形成

中国では全国人民代表大会が制定する「人工智能法」は依然として起草段階にあり、国務院による行政法規も存在しない。その代わりに各省庁が発する部門規章が事実上の生成AI規制の中核を担っている。中心となるのが7部門(国家インターネット情報弁公室=CAC、国家発展改革委員会、教育部、科学技術部、工業和信息化部=MIIT、公安部、国家広播電視総局)連名で2023年7月10日に公布、8月15日に施行された「生成式人工智能服务管理暂行办法」(生成AIサービス管理暫定弁法)だ。PwC Japanの分析によれば、同弁法は中国国内の公衆向けにチャットボットや画像・音声・動画生成機能を提供するサービスを対象とし、商用提供前の政府審査・承認、「核心的社会主義価値観」への適合、未成年者の過度な依存防止、生成コンテンツへの標識付与、安全評価を求めている。

2025年下半期世界各国のAI規制動向
出典: KPMG

この弁法の前提として、2022年3月1日施行の「アルゴリズムレコメンド管理規定」と2023年1月10日施行の「ディープフェイク管理規定(深度合成管理規定)」が存在する。KPMGの集計では、アルゴリズム届出件数は2025年5月時点で累計575件に達しており、単なる建前ではなく実運用が進んでいることを示す。

標識義務の全面施行と初の公的処分

2025年9月1日、「人工知能生成合成内容識別弁法(AI生成合成コンテンツ標識弁法)」が全面施行され、AI生成物への明示的・非明示的ラベル付けと全プロセスでの追跡可能性が義務化された。この義務が「絵に描いた餅」でないことを示したのが、動画編集アプリ「剪映(ジャンイン)」への処分だ。BiGGoの報道によれば、CACはAI生成・合成コンテンツの明示規定を遵守しなかったとして、剪映のほか猫箱などのアプリに初の公的処分を下した。これは中国の生成AI規制が公布・施行の段階から、実際の執行・摘発の段階に移行したことを意味する。

「感情の安全」への規制拡張とAI恋人規制

2026年4月10日、CACなど5部門は「人工知能擬人化互動服务管理暂行办法(AI擬人化インタラクションサービス管理暫行弁法)」を公布し、7月15日に施行した。AI新聞の報道によれば、これはAIが人間のように振る舞い利用者と継続的な感情のやり取りを行うサービスを対象とする世界初の国家級規制で、未成年に対する「AI恋人」「AI家族」サービスを全面禁止した。米ニューヨーク大学ロースクールのWinston Ma非常勤教授は、2023年の生成AI規制と比較し「コンテンツの安全から感情の安全への飛躍だ」と評している。規制の背景には、MiniMax社の対話アプリ「星野(Talkie)」が2025年9月時点で累計利用者1億4700万人、月間アクティブ利用者488万人に達するなど、ByteDance社「猫箱」も含めAIコンパニオン市場が急拡大している実態がある。さらに2025年12月27日には、感情的インタラクションを行う対話型AI全般を対象に、2時間以上の連続利用で一時中止を促すポップアップ機能などを求める追加規制案がパブリックコメントに付され、2026年1月25日まで意見募集された。米カリフォルニア州の「SB-243」が未成年ユーザーへ3時間ごとのリマインダー表示を義務付けるのに対し、中国案はより包括的だと指摘されている。

外資排除の構造と日本企業への含意

これら一連の弁法は国家安全保障の名目を掲げつつ、実質的には国内AI産業の育成・保護という産業政策の色彩を帯びている。ITmediaの分析によれば、生成AIサービス管理暫定弁法の商用提供前審査や政治的非中立性の指摘は外資系企業の参入障壁となり、サイバーセキュリティ法・データ安全法による重要データの国内保管義務が、グローバルモデルの中国市場適用をさらに難しくしている。加えて2025年10月28日には全国人民代表大会常務委員会がサイバーセキュリティ法を9年ぶりに改正し、AI推進とAI技術のサイバーセキュリティ活用に関する条項を追加、2026年1月から施行されている。同年9月15日にはCACの指導下で「人工知能安全ガバナンスフレームワーク」2.0版も公表され、リスクの継続追跡と階層化研究が進められている。日本企業が中国市場でAIサービスを展開する場合、モデル自社開発なら生成AIモデル備案、既存モデル組込みなら組込み登記を前提に、CACやMIITとの対話を通じた順法体制の構築が不可欠になっている。

Verification

信頼ラベル報道
一次ソース7件確認
最終検証2026.09.02
VerifiedRev. 1
sha256:78df71c547147cce...f60e915a

この記事はEd25519デジタル署名で検証済みです。改ざんは検出されていません。

検証API
Ethics Score97/100
引用密度20/20
ソースURL数20/20
信頼ラベル12/15
表現の慎重さ15/15
キーポイント10/10
サマリー品質10/10
本文充実度10/10

v1.0.0 — ルールベース自動採点

詳細API
Share

関連記事