AI 株の売りが、株価の下げだけでなく、それに賭けてきたヘッジファンドの成績にまで及んだと報じられている。Goldman Sachs のプライムブローカレッジ部門の顧客向けノートを伝えた報道によれば、10月22日には、同社が追う主な3つの戦略がそろって1%を超える損を出した。3つが同じ日にそろってここまで負けたのは、コロナ禍以来初めてだという。ハイテクに絞ったファンドは、10月だけで約10%下げたと伝えられる(Investing.com、Yahoo Finance)。いずれも報道ベースで、Goldman のノートそのものは読めていない。
戦略を分けても逃げ場がなかった
ヘッジファンドが戦略を分けるのは、ある型が負ける日に別の型が支えるようにするためである。主な3つがそろって1%超の損を出したということは、その分散が10月22日には効かなかったことを意味する。売られたのが AI という1つのテーマに集まった銘柄で、多くの戦略が同じ方向に持ち高を傾けていた、と読める。
Goldman のプライムブローカレッジ部門は、この日の様子をノートで次のように書いたと Reuters が伝えている。
If last Thursday felt bad, today has been worse.
訳: 先週の木曜日がひどいと感じたなら、今日はもっとひどい。
ここでいう「先週の木曜日」は10月15日にあたる。1週間前にすでに大きな損が出ており、10月22日はそれをさらに上回った、という評価である。下げが一度きりの揺れではなく、週をまたいで深まっていることを、資金の流れを最も近くで見ている部門が認めた形になる。
ハイテク特化型は10月だけで約10%安
打撃が最も大きかったのは、ハイテクに絞ったファンドだと報じられている。10月の下げは約10%とされ、月の途中でこの幅になるのは、AI 株の上げを最も素直に取り込んできた運用ほど、売りの影響も素直に受けたことを示す。
同時に、ヘッジファンドはハイテクへの持ち高を過去10年で最も速いペースで削っていると伝えられる(Hedgeweek)。損を止めるための売りが、さらに株価を押し下げる。成績の悪化と持ち高の圧縮が、互いを強め合う局面に入っている可能性がある。
懸念は「集中」と「循環的な資金」
なぜここまで一斉に崩れたのか。東京の TriVista Capital のパートナー、Masaki Gotoh は、AI 関連への資金の偏りを指摘したと報じられている。
The concentration level is staggering.
訳: 集中の度合いは驚くほどだ。
相場の上げを AI の一部の銘柄が引っ張り、ファンドの持ち高もそこに寄っていた。その分、売りが来たときに戦略の違いが緩衝材にならなかった、という見方である。Gotoh はさらに、もう1つの懸念を挙げている。
The circular financing is also a source of some concern.
訳: 循環的な資金の回し合いも、いくらか懸念の種だ。
「循環的な資金の回し合い」とは、AI のラボ、チップの会社、クラウドの会社が、互いに出資や計算資源の購入の約束を重ね、その約束が互いの売上や評価額を支えている構図を指す。売上の一部が、自分たちが出したお金の戻りではないかという疑いが強まれば、AI 銘柄の評価は全体として揺らぐ。10月22日の一斉の損は、その疑いが価格に出始めたことの表れとも読める。
次の試金石は来週の決算
この売りが続くかどうかは、来週の材料で試される。Alphabet と Microsoft は10月28日、Amazon は10月29日に決算を出し、同じ週には FOMC(10月27〜28日)もある。AI への設備投資が膨らむ一方でフリーキャッシュフローが細っていないか、借入が増えていないかが焦点になる。ハイパースケーラーの数字が投資の回収を示せなければ、ハイテクの持ち高をさらに減らす動きが続き、ヘッジファンドの成績の悪化も10月の外に持ち越されるおそれがある。
いずれにせよ、今回の数字は報道によるもので、Goldman の集計の元の資料や、各戦略の具体的な損の幅は確かめられていない。確かなのは、AI 株の下げが、もはや一部の銘柄の値動きの話ではなく、それに乗ってきた運用の側の損として数えられ始めた、ということである。




