米国:人間著作者要件が最高裁で確定
米連邦最高裁判所は2026年3月2日、AIが自律的に単独生成した画像の著作権登録を巡る上告受理の申し立てを理由を示さず却下した。この決定により、著作権保護には人間による創作的関与が必須とする下級審判断が最終的に確定した。争点となったのは、コンピューター科学者スティーブン・サラー博士が自身の開発した「Creativity Machine」で生成した画像「A Recent Entrance to Paradise」で、同博士は2018年、AI自身を著作者として米国著作権局に登録申請したが拒絶され、2023年の連邦地裁、2025年3月の連邦巡回区控訴裁もこれを支持していた。ビジネス+ITによれば、米著作権局の行政指針では人間が単にプロンプトを入力しただけでは表現の決定権はAI側にあるとみなされ保護対象外となる一方、人間が十分な表現的要素の決定や独自の加筆・修正を行った部分には限定的に著作権が認められる余地が残るとされている。
中国:同一モチーフの訴訟で地裁判断が分岐
中国では、アニメキャラクター「奥特曼(ウルトラマン)」の画像をAIで生成する行為を巡り、2024年に広州互联网法院と杭州互联网法院がそれぞれ訴訟を審理し、判断が分かれた。広州の事案では、AI絵画機能を持つプラットフォームが会員課金で利益を得ていた点を重視し、平台の直接侵害を認定して1万元の賠償を命じた。一方、杭州の事案ではユーザーがLoRAモデルを学習させて奥特曼画像を生成していた点について、同法院の判決文は「データ入力段階では平台は直接訓練素材を提供していないため直接侵害に当たらないが、出力段階で必要な措置を怠った場合は帮助侵害となる」と分階段の責任論を採用し、2024年9月の一審で賠償額を3万元とした。中国政法大学の張凌寒教授は、データ入力・訓練段階は相対的に寛容な基準を、生成物の出力・利用段階は相対的に厳格な基準を適用する「分類施策」の必要性を指摘している。
日本:判例不在のまま全国初の摘発
日本国内ではAI生成物の著作物性を巡る判例が存在しない状態が続くなか、読売新聞の報道によれば、千葉県警察本部は2025年11月、画像生成AI「ステーブル・ディフュージョン」で作成された画像を無断複製し書籍表紙に使用した疑いで男を全国初の書類送検に踏み切った。制作者の男性は「プロンプトは2万回以上だった」と証言しており、文化庁が示す「AIと著作権に関する考え方」に基づき、プロンプトの分量・内容・試行回数などを総合考慮した結果、生成画像が著作物と判断された。AI著作権に詳しい福井健策弁護士は「プロンプトで具体的な指定を十分にしていれば著作物になり得る」とし、「人が結果を具体的に予測して指示を出しているかどうかが重要」との見解を示している。読売新聞によれば、海外でも見解は割れており、米著作権局は2023年2月に生成AI漫画イラストの登録を却下した一方、北京互联网法院は2023年11月、プロンプト選択に相当の知的労力を要したとして著作物性を認める判決を出している。
学習データ側の紛争:報道機関による提訴の広がり
著作権を巡る争いは生成物の帰属だけでなく、学習データの利用にも及んでいる。朝日新聞と日本経済新聞は2025年8月26日、米AI企業を共同提訴した。朝日新聞によれば、クローラーによる記事の無断取得・複製が著作権法上の複製権・公衆送信権侵害に当たると主張し、日経新聞は有料会員限定のペイウォール内記事も対象にされたと訴えている。さらに両社は、生成AIの回答が実際の記事内容と異なる虚偽の事実を社名とともに示した点について、不正競争防止法違反にも当たると主張した。文化庁著作権課の担当者は「今回の訴訟は国内では判例のない唯一無二のもの」と述べ、注視する姿勢を示している。明治大の今村哲也教授(知的財産法)は、著作権法が機械学習を原則として認める枠組みの下で、報道機関の労苦への「ただ乗り」が生じていると指摘した。
法廷内でのAI利用リスクも顕在化
裁判実務そのものにもAIリスクが波及している。INTERNET Watchの報道によれば、2026年6月、米ミシシッピ州の弁護士費用を巡る訴訟で、双方の弁護士がAIを用いて存在しない架空の判例を引用していたことが発覚し、判事が激怒して審理を中断、関与した弁護士4人全員が訴訟から外され1000〜3500ドルの罰金を科された。関係者は「AI利用自体がNGだったわけではなく、出力結果を検証しなかった点」が問題だったと説明しており、ニューヨーク州でも同様の虚偽引用事例が起きている。こうした事例は、AI生成コンテンツの著作権判断だけでなく、司法プロセスそのものにおけるAI活用の信頼性確保が急務であることを示している。
企業実務への示唆
これら一連の判例動向は、AI生成物の権利帰属を巡るルールが国・地域ごとに異なる速度と方向性で形成されつつあることを示す。米国は著作権否定で確定、中国は分階段の責任論で発展途上、日本は判例なきまま実務が先行している。企業は生成AIを商用利用する際、創作過程における人間の関与を記録する内部体制の構築と、学習データの出所管理を並行して進める必要がある。
