相談利用が1年足らずで急増
非営利研究機関RANDが実施した調査によると、メンタルヘルスの相談にAIチャットボットを利用する若者の割合は、2025年初頭の13%から2026年11月時点で19%へと上昇した。この結果はNBCニュースが報じ、米医学誌JAMA Pediatricsに掲載された。研究主任のライアン・マクベイン氏は「若者が身近な人に安心して相談できる関係を築けていないことを示す悲しい数字だ」と述べている。
米CBSニュースの報道でも、10代の43%が月1回以上チャットボットを利用しているとするデータが紹介され、専門家は「チャットボットは共感的に見えるが、実際はパターン認識システムに過ぎない」と指摘する。医療現場では、AI依存が専門家への相談を遅らせたり代替してしまったりするリスクが懸念されている。
「AI精神病」とパラソーシャル依存の懸念
公共ラジオ局WKNOの報道では、長時間のチャットボット利用によって妄想を発症する「AI精神病」と呼ばれる現象が取り上げられている。メンタルヘルス非営利団体Now Matters Nowの心理士アーシュラ・ホワイトサイド氏は「長期間やり取りを続けると、チャットボットが本来してはいけない行動、例えば致死性の高い手段についての助言などをするようになる」と警告する。RAND・ハーバード大学・ブラウン大学による別の共同研究では、10代・若年成人の8人に1人がメンタル相談にチャットボットを利用しているとされる。
UCバークレー校のカヴリ・センターでエスノロジーを研究する精神科医ジョディ・ハルパーン氏は、10代前半から20代前半という発達段階は「他者への強い愛着を急速に形成するよう設計されている時期」だと指摘し、チャットボットへのパラソーシャルな愛着形成を懸念する。小児科医らも、常に肯定してくれるAIとの長時間対話が、共感力や交渉力といった社会的スキルの発達を妨げると警鐘を鳴らしている。
欧州調査が映す「相談のしやすさ」の逆転
フランスの個人情報保護機関CNILと保険会社Groupe VYVが2026年初頭に11〜25歳の3800人を対象に実施した調査では、51%が「チャットボットに相談しやすい」と回答し、医療専門家(49%)や心理士(37%)を上回った。Insurance Journalによると、回答者の約28%は全般性不安障害の疑いに該当する基準を満たし、約90%が既にAIツールを利用した経験を持ち、6割超がAIを「人生の助言者」や「相談相手」と表現した。カロリンスカ研究所のルドヴィグ・フランケ・フォイエン氏は「AIは情報や支援を提供できるが、人間関係や専門的ケアの代替にはならない」と述べている。
学校導入の模索と世代間の受容度格差
Forbesの報道によれば、専門カウンセラー不足を背景に、学校がカスタマイズされた生成AIチャットボットをスクールカウンセラーの代替として導入する動きが広がりつつある。24時間対応と低コストが利点とされる一方、利用履歴の追跡によるプライバシー懸念から、生徒が学校提供AIを避けて未管理の汎用AIに流れるリスクも指摘されている。教育専門誌EdWeekの報告では、メンタル不調を抱える若者の69%が本来メンタルケア用に設計されていない汎用AIを利用し、59%は専門家への相談や危機サービス利用を促されたと回答した一方、9%は「感情的に絡め取られたスーパーユーザー」に分類された。
受容度には世代差もある。HIT Consultantの調査では、AIによる危機検知に「非常に安心できる」と答えたのはベビーブーマー世代の5%に対しミレニアル世代は29%、Z世代は24%だった。自動監視ツールの利用意向もミレニアル世代63%対ベビーブーマー26%と大差がついている。ただし危機検知時の対応については、AIが即座に専門家へつなぐことを信頼すると答えたのは全体の22%にとどまり、家族への通知(28%)や30分以内の専門カウンセラーからの電話(27%)を望む声が上回った。
専門家が求める今後の対策
複数の専門家は、AIをメンタルヘルス支援の完全な代替ではなく補完的役割に限定すべきだと強調する。学校導入では、効果が実証された製品と粗悪品を見分けるための専門家による検証体制、データアクセスに関する明確な方針の整備が急務とされる。若年層のAI依存が既に日常に定着しつつある現状を踏まえ、危機検知時に人間へ橋渡しする仕組みづくりが業界共通の課題として浮上している。
