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攻撃から全トークン失効まで12日 SaaS連携の合鍵を今日見直す

連携先が破られると、自社の Salesforce に合鍵で正面から入られる — 連載「漏洩の手口と、いまできる守り」第4回

田中 誠一|2026.10.21|16分|更新: 2026.10.21

Drift と Klue の事件では、連携先が預かる OAuth トークンを使って、各社の Salesforce からデータが持ち出された。今日やることは、自社の SaaS につないだ外部サービスを全部書き出し、使っていない連携のトークンを取り消すこと。

Key Points

攻撃から全トークン失効まで12日 SaaS連携の合鍵を今日見直す

2025年8月8日から18日ごろにかけて、営業支援サービス Salesloft の Drift を Salesforce に連携していた多数の会社から、データが持ち出された。攻撃者が使ったのは、Drift が預かっていた OAuth トークンだった。Salesloft と Salesforce が Drift の有効なトークンをすべて失効させたのは2025年8月20日で、攻撃開始から12日かかった。

2026年6月12日には、競合分析サービスの Klue が、連携の仕組みで不正な動きを見つけた。ここでも Klue を外部サービスにつなぐ OAuth トークンが使われ、Salesforce を含む外部サービス上で、複数の顧客の環境のデータにアクセスされた。どちらも海外の事件だが、SaaS に外部サービスをつなぐ使い方は日本でも一般的で、守り方はそのまま使える。

自社に穴が無くても、合鍵で正面から入られる

Salesforce のような業務用の SaaS には、営業支援、チャット、競合分析などの外部サービスを「連携」でつなぐ。連携は OAuth という仕組みで、外部サービスに合鍵(トークン)を渡す形になる。この合鍵は、渡した先の会社が保管している。

渡した先が侵入されると、パスワードも多要素認証も通さずに、合鍵で自社の SaaS に正面から入られる。自社の設定に穴が無くても起きる。

Drift と Klue で何をされたか

Salesloft Drift(2025年8月)

Google Threat Intelligence Group(GTIG)は2025年8月27日に報告を出し、8月28日に更新した。GTIG は攻撃者を UNC6395 として追跡しており、攻撃者は Drift の OAuth トークンを使って各社の Salesforce に入った。読み出された対象には、問い合わせ(Cases)、取引先(Accounts)、ユーザー(Users)、商談(Opportunities)がある。

GTIG assesses the primary intent of the threat actor is to harvest credentials.

攻撃者の主な目的は、認証情報を集めることだと GTIG はみている。

出典: Google Threat Intelligence Group「Widespread Data Theft Targets Salesforce Instances via Salesloft Drift」

Google によると、攻撃者は書き出したデータの中から、AWS のアクセスキー(AKIA で始まるもの)、パスワード、Snowflake のトークンを探していた。問い合わせの記録に社員や顧客が貼り付けた鍵が残っていれば、それが次の侵入の材料になる。攻撃者は実行した問い合わせの記録を消したが、ログは残っていた。

8月28日の更新で、被害は Salesforce との連携にとどまらないと分かった。「Drift Email」の OAuth トークンも盗まれ、8月9日には、Drift と連携していたごく少数の Google Workspace のアカウントでメールが読まれた。Google は、Drift に保存された、またはつながったすべての認証トークンを、漏れた可能性があるものとして扱うよう求めた。

攻撃の開始から全トークンの失効までの流れを、図1に並べた。

Drift:攻撃開始から全トークンの失効まで
出典: Google Threat Intelligence Group(2025年8月27日・28日)

2025年8月20日の失効と同時に、Salesforce は Drift を AppExchange から外した。ただ、連携先や SaaS 側の失効を待たなくても、自社でトークンを取り消せば、自社の分の合鍵はその時点で使えなくなる。

Klue(2026年6月)

Klue は2026年6月18日の発表で、6月12日に連携の仕組みの一部で不正な動きを見つけたと明らかにした。CEO の Jason Smith は、原因をこう説明している。

Our investigation determined that an attacker gained access through a compromised legacy credential associated with an integration service.

調査の結果、攻撃者は連携サービスに紐づく、漏れた古い認証情報を使って入ったと判明した。

出典: Klue「An update on recent Klue security incident」

攻撃者はそこから、Klue を外部のサービスにつなぐための OAuth トークンを手に入れた。それを使い、Salesforce を含む外部サービス上で、複数の顧客の環境のデータにアクセスした。古い認証情報がいつ、誰に、何のために発行されたものかは未公表だ。

Klue の環境に保存されていた顧客のデータには、影響した証拠は無いと同社は説明している(調査の途中経過)。Klue は、認証情報とトークンの失効、不正なコードの削除、影響の可能性がある連携の停止を行った。CrowdStrike など外部の専門家に調査を依頼し、警察にも通報した。

BleepingComputer の報道によると、Huntress は自社の Salesforce が影響を受け、取引先の連絡先、営業のやりとり、価格の情報などが盗まれたと公表した。Recorded Future、Tanium、Jamf なども影響を認めた。恐喝集団 Icarus が犯行を主張しているが、Klue はこれを認めていない。

全組織が今日やること: つないでいる外部サービスを書き出す

対象は Salesforce、Google Workspace、Microsoft 365、Slack など、自社で使っているすべての SaaS だ。台帳を作る、使っていない連携を外す、止める手順を決める、の3段で進める。

1. 連携の台帳を作る

2. 使っていない連携を外す

3. 連携先の事件に備えて、止める手順を決める

Salesforce の管理者が今日やること

Salesforce の管理者が今日やること
出典: 人間不要新聞編集部(Google Threat Intelligence Group・Salesforce の文書をもとに作成)

図2は、Google の推奨と Salesforce の文書をもとに、管理者が設定で確かめる項目を並べたチェックリストだ。合鍵を減らす、範囲を狭める、見張る、の順に並べてある。

トークンを確かめて取り消す

連携アプリに渡す権限を最小にする

入れる場所を絞る

API を使える人を絞る

セッションを短くする

見張る

入られた後に: 記録に残った「鍵」を探して消す

Drift の攻撃者は、書き出したデータの中から鍵やパスワードを探していた。連携先が侵入されたと分かったら、持ち出された可能性のある記録に何が書かれていたかを、自社で確かめる。その手順を図3にまとめた。

記録に残った「鍵」を探して消す
出典: 人間不要新聞編集部(Google Threat Intelligence Group の推奨をもとに作成)

記録を検索する

見つかった鍵は入れ替える

問い合わせ窓口の運用を変える

出典

音声版

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風刺画: 攻撃から全トークン失効まで12日 SaaS連携の合鍵を今日見直す

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