子どもとAIチャットボットの関係について、心理学者たちが研究の進め方そのものを変えようとしている。NPRによると、研究者たちは60の研究機関をまとめる研究連合を立ち上げた。チャットボットが子どもの発達を変える速さに、ふつうの研究の速さでは追いつけないと考えたためだと報じられている。報道の中では、まだ論文になっていない調査結果も紹介された。1クラスに2〜4人ほどの子どもが、同年代の友だちよりAIと話すほうがいいと答えているという。
この記事はNPRの報道をもとにしている。研究連合の正式な参加機関の一覧や、調査の方法と標本の大きさなど一次の資料には、まだ当たれていない。数字と発言は、すべてNPRが伝えた内容である。
「親や先生には話さない理由で」使っている
話題の中心は、ノースカロライナ大学チャペルヒル校の心理学研究者Mitch Prinsteinの発言である。NPRによれば、Prinsteinは子どもたちへの聞き取りでわかったことを次のように語った。
They tell us they're using it for reasons they would not share with their parents and teachers, and we're finding that about two to four kids in every classroom are already saying they would prefer interacting with an AI chatbot more than an actual human peer.
訳: 子どもたちは、親や先生には話さないような理由で使っていると言います。そして1クラスに2〜4人ほどが、実際の同年代の友だちよりAIチャットボットとやりとりするほうがいいと、すでに答えているのです。
この発言には2つの点が含まれている。1つは、子どもたちが大人に見せない使い方をしていることだ。親や先生には打ち明けない相談を、チャットボットに持ち込んでいることになる。もう1つは規模である。1クラスに2〜4人という数は、例外的な子どもの話ではない。どの教室にもいる数である。ただし、この数字はNPRの報道の中で示された未発表の結果で、何人に、どんな聞き方で尋ねたのかは伝えられていない。割合がどこまで一般に当てはまるかは、論文が出るまで判断できない。
「研究はとても遅い」――60機関で優先順位を先に決める
Prinsteinが訴えているのは、子どもの変化の速さと研究の遅さの差である。
This is an urgent situation. AI is changing the ways that kids are developing right before our eyes, and research is very slow. We're trying to mobilize researchers from across 60 different institutions to agree on work that we need to do and to start doing it fast.
訳: これは急を要する事態です。子どもの育ち方は、AIによって目の前で変わりつつあるのに、研究はとても遅い。60の機関の研究者を集めて、やるべき研究について合意し、すぐに取りかかろうとしています。
発達心理学の研究は、ふつう何年も子どもを追って結論を出す。一方、チャットボットの機能や話し方は、数か月ごとに変わる。1つの研究が終わるころには、調べた製品がもう使われていないこともありうる。報道によれば、研究連合はこの差を埋めるため、各機関がばらばらに研究を始めるのではなく、まず何を調べるべきかで合意し、それから一斉に取りかかろうとしている。研究の中身より先に、研究の進め方を変えようとする試みと言える。
創設者の警告――「感情の中枢に入り込む」設計
NPRは、研究連合(AI Psychological Research Coalition)の創設者で心理学者のZak Steinの発言も伝えている。Steinの矛先は、子どもの使い方よりも、製品を作る企業の側に向いている。
They figured out how to kind of break into the emotional centers and get someone deep into a committed emotional relationship with a machine. And of course, young people are more vulnerable.
訳: 彼ら(テック企業)は、人の感情の中枢に入り込み、機械との深く固い情緒的な関係に引き込むやり方を見つけてしまった。そしてもちろん、若い人ほど弱い。
Steinの見方では、問題は子どもがチャットボットを使うことそのものではない。人を情緒的な関係に引き込むように作られた設計にある。Prinsteinの調査で、友だちよりAIを選ぶ子どもが一定の割合でいたことは、この設計が若い利用者に効いていることを示すとも読める。ただし、そうした因果関係を確かめることこそ、研究連合がこれから取り組む課題である。
何がまだ分かっていないか
報道の範囲では、次の点がまだはっきりしていない。
第一に、2〜4人という数字の出どころである。調査の対象の年齢、国、人数、質問の文言は伝えられていない。第二に、60の機関の顔ぶれと、研究の予算や期間である。第三に、AIを好むと答えた子どもに、孤立や不安などの傾向が実際に見られるのか、それとも単に好みの問題なのかである。
それでも、この報道には意味がある。子どもとチャットボットの関係をめぐって、心理学者たちが自分たちの研究のやり方が遅すぎると公に認め、組織の形を変えて急ごうとしている。研究連合が最初にどんなデータを出すかが、議論の土台になる。




