Leave No Trace(LNT)の7原則は1990年代から北米のアウトドア活動者に浸透してきたが、2026年に入って自然環境を取り巻く状況は複雑化している。カリフォルニア州ロサンゼルスの人気ハイキングコースであるランヨンキャニオンパークでは5月24日午前9時頃、40歳男性ハイカーが重篤な状態で発見され、ロサンゼルス消防署の救助ヘリコプター32名体制で病院へ搬送された。この事故は都市近郊の自然環境における安全管理の課題を浮き彫りにしている。
鉱業セクターでの環境法違反が拡大
Leave No Traceの基本原則である「自然環境への影響最小化」に対し、産業界では逆行する動きが続いている。ガーナでは5月20日、環境保護庁(EPA)がGyetey Gye Nyame Mining社の広報担当者Abekah Gogoeを逮捕した。同社は西部地域ンクロフルで環境許可証なしに採掘を行い、アンコブラ川近郊の湿地帯に鉱山廃水を放出していた疑いが持たれている。
EPA鉱業部門のハリソン・アフル副部長が率いる全国規模のコンプライアンス作戦では、現場でショベル2台とその他採掘機器を押収。違法採掘業者らはEPA職員の到着を見て現場から逃走したと報告されている。この事案は単一企業の問題を超え、自然環境保護における法的枠組みと実態の乖離を示している。中国でも文化遺跡周辺の森林保護が強化される中、昆明・モントリオール生物多様性フレームワークの実施が急務となっている。
観光業界における持続可能性への取り組み
一方で、観光・宿泊業界ではLeave No Traceの精神を具体化する動きが加速している。高級ホテルチェーンのSix Sensesは、国連環境計画(UNEP)と国連観光機関の「Recipe of Change」イニシアティブに参画し、「廃棄物ゼロ」を基本ルールとして全キッチンに適用している。
Six Sensesロンドンでは発酵ラボを設置し、本来廃棄される食材の端材をザワークラウト、キムチ、ヨーグルト、ケフィアなどの発酵食品として再活用している。ローマ店舗では地元農家が厨房の注文に応じて当日収穫・配送を行い、プラスチックフリー包装を徹底。ロンドン店では牛乳を再利用可能なケグで搬入し、コーヒーは帆船輸送を採用するなど、サプライチェーン全体での環境負荷削減を実現している。こうした取り組みは年間約35万人が働くIHGグループ全体での標準化が検討されている。
企業出張における持続可能な選択基準
企業レベルでの持続可能な自然との関わり方も具体化されている。メディア企業GCSTIMESは持続可能な出張ガイドラインを策定し、従業員の宿泊施設選択に明確な基準を提示した。同ガイドラインでは世界持続可能観光協議会(GSTC)準拠の認証システムを重視し、Green Key、EarthCheck、Travelifeなどの国際認証を取得したホテルの優先選択を推奨している。
多くの旅行予約プラットフォームが持続可能性ラベルやフィルター機能を導入する中、GCSTIMESは従業員に対してタオル・リネンの再利用、不在時の照明・空調の消灯、再利用可能なボトル・カップの持参といった日常習慣の実践を求めている。こうした「小さな選択」の積み重ねが出張時の廃棄物削減につながると位置づけている。
公有地保護をめぐる政策的議論
米国では公有地の保護強化を求める声が高まっている。モンタナ州では政治的立場を超えた公有地保護への合意形成が進んでおり、野生生物の生息地としての価値が再認識されている。Larry Berrin氏は地元紙への寄稿で、「モンタナ住民は政治では必ずしも一致しないが、公有地とそこに依存する野生生物については、これらの場所が重要であり保護する価値があるという顕著で持続的な合意がある」と指摘している。
この動きは個人レベルのLeave No Trace実践を政策レベルに拡大する試みとして注目される。2026年5月20日時点で、モンタナ州の公有地保護政策は州議会での審議が続いており、アウトドア業界団体からの支持表明も相次いでいる。
自然保護ガイドラインの実効性向上への課題
Leave No Traceの7原則(事前計画と準備、耐久性のある地面での行動、廃棄物の適切な処理、見つけたものはそのままに、焚き火の影響最小化、野生生物の尊重、他の訪問者への配慮)は理念として広く受け入れられているものの、実践面での課題が顕在化している。ランヨンキャニオンでの救助事案は、人気の高いトレイルにおける安全管理とキャパシティコントロールの必要性を示している。
一方で、Six SensesやGCSTIMESのような企業主導の取り組みは、Leave No Traceの精神を事業活動に組み込む具体的モデルを提供している。特にSix Sensesの発酵ラボや当日配送システムは、従来の「痕跡を残さない」という消極的アプローチから、「積極的な環境貢献」への転換を示唆している。ガーナでの違法採掘摘発は、自然環境保護における法執行の重要性を再確認させる事例となっており、個人の倫理観に依存するLeave No Trace原則の限界も浮き彫りになっている。2026年後半に向けて、政策・企業・個人レベルでの連携強化が、実効性のある自然保護システム構築の鍵となりそうだ。



