EU AI Act第50条、8月2日に施行
欧州連合は2026年8月2日、AI規制法(AI Act)に基づく透明性義務の適用を開始した。対象は生成・改変されたAIコンテンツの表示・ラベル付けで、実在の人物や事象に類似するディープフェイクへのアイコン付与、チャットボットやAIエージェントとの対話であることの明示などが求められる。EUは基本アイコン(Basic icon)、完全AI生成(Fully AI-Generated)、部分改変(Partially AI-Modified)の3種のアイコンを策定した。違反企業には最大1,500万ユーロまたは全世界年間売上高の3%の制裁金が科される可能性がある、とImpress Watchは報じている。この義務の実務指針として、欧州委員会AI Officeが取りまとめた「AI生成コンテンツの透明性に関する行動規範」も並行して運用されている。
OpenAI、C2PA準拠と音声への拡大
OpenAIは2026年7月31日、コンテンツ来歴の取り組みを画像から音声へ拡大したと発表した。ChatGPTやOpenAI APIで生成された対応音声にSynthID透かしを付与し、公開検証ツールで画像に加え音声ファイルも検証できるようにした。OpenAI公式発表によれば、同社は2024年からDALL·E 3の画像にContent Credentialsを付与し始め、ImageGenやSoraにも拡大してきた。今回、C2PA Conforming Generator Productとしての準拠が確認され、他プラットフォームでも来歴情報を信頼できる形で読み取り・保持できるようになった。あわせてGoogleとの提携で、画像にプラットフォームをまたいでも保持されやすいSynthID透かしを追加する。
Anthropic、不可視ウォーターマークとメタデータの二層構造
米AnthropicはAI Act第50条2項の「AI生成コンテンツの透明性に関する行動規範」に署名し、Claudeの生成物に機械可読マークを導入したと8月10日に発表した。マイナビニュースによると、テキストには文章の意味・品質を変えない不可視ウォーターマークをモデルレベルで組み込み、コピー&ペースト後も一部残る場合がある。SVG・PNG・JPEGなど対応ファイルにはC2PA準拠の署名付き来歴メタデータを付与する。対象は2026年8月2日以降にリリースされた新モデルで、Claude Platform(API)、Claude Code、Claude Cowork、Claude Tagなど対応モデルを使う全製品、AWS・Google Cloud・Microsoft Foundry経由の利用も含まれる。既存モデルについては、AI Omnibusによる修正パッケージで2026年12月2日までの猶予期間が設けられている。
Google、可視透かしは任意化しつつSynthIDは維持
Googleは8月14日、Gemini・Flowの画像/動画/音楽生成(Nano Banana、Omni、Lyria)で付与してきた可視の星型ウォーターマーク「スパークル」を、ユーザーがオン/オフ選択できるようにした。マイナビニュースによれば、背景にはGemini担当VPジョシュ・ウッドワード氏が7月に公開した改善要望リストで「Nano Bananaの透かし除去」が6位に入っていたことがある。オフにしても不可視のSynthIDとC2PA Content Credentialsのメタデータは維持され、法律で可視表示が義務付けられる国・地域では機能自体が提供されない。あわせてGoogleは8月13日、C2PA来歴情報を端末内で検証できるオープンソースC++ライブラリ「Credentio」も公開した。
日本企業への実務影響と市場の広がり
セキュリティ対策Labの分析によれば、日本企業への影響は3点に整理できる。第1にEU向けサービスを提供する企業は透明性義務を自社の問題として確認する必要がある。第2に日本国内向け運用でも、AI事業者ガイドライン第1.2版が求める利用方針の作成・公表が実務上の論点となる。第3にセキュリティ運用では、マークの有無だけに本人確認や真正性判断を依存させない設計が求められる。形式変換や再保存、スクリーンショット化でメタデータが失われる可能性があるためだ。市場面では、Astute Analyticaの予測によればAIコンテンツ認証市場は2025年の4億90万米ドルから2035年に69億9,550万米ドルへ、年平均成長率33.1%で拡大する見通しで、来歴管理は生成AI活用企業にとって避けられないインフラになりつつある。




