Anthropicが2026年4月7日に発表した「Claude Mythos Preview」は、公表済みのあらゆるベンチマークで当時最高性能を記録しながら、一般公開されなかった異例のモデルだ。半年間の展開を追うと、性能の突出とリスク管理の綱引きが、後継モデルの段階的解禁という形で決着していった経緯が見えてくる。
歴代最高性能の中身——SWE-bench 93.9%の衝撃
Forbes JAPANによれば、Mythos Previewはソフトウェアエンジニアリング能力を測るSWE-bench Verifiedで93.9%、米高校数学オリンピック課題のUSAMOで97.6%、サイバー攻撃能力を測るCyberGymで83.1%を記録した。ギズモード・ジャパンが伝えるSystem Cardのベンチマーク一覧では、GPQAやMMMLU、長文脈評価のGraphWalks、超高難易度テストのHLE、図表理解のCharXiv Reasoning、PC操作能力を測るOSWorldなど、あらゆる項目でGPT-5.4、Gemini 3.1 Proを上回った。主要OS・主要ブラウザすべてでゼロデイ脆弱性を自律的に発見したという。
Firefox脆弱性で成功率72.4%——非公開の理由
日経クロステックが報じた検証実験は具体的だ。Firefox 148で修正済みの既知脆弱性を突くエクスプロイト作成を250回試行させたところ、Claude Sonnet 4.6は0回、Claude Opus 4.6は2回しか成功しなかったのに対し、Mythos Previewは181回成功し成功率72.4%に達した。この結果を受けAnthropicはSystem Card内で「一般公開はできない」と明記し、サイバー防衛のProject Glasswingを立ち上げ、アマゾン、アップル、グーグル、マイクロソフト、CrowdStrike、JPモルガン・チェースなど約40組織に限定提供した。利用クレジット1億ドル(約159億円)とセキュリティ団体への寄付400万ドル(約6億3600万円)も拠出している。
3時間6分の自律タスクと段階解禁への布石
BigGoファイナンスの報道では、METRベンチマークにおいてMythosが3時間6分に及ぶ自律的長時間タスクを80%の成功率で達成し、AIの能力進化における時間軸の前倒しを示したとされる。この長時間・高複雑度タスクでの優位性は、後継モデルにも引き継がれる特徴となった。
Fable 5・Mythos 5による一般提供開始
2026年6月9日、Anthropicは同一の基盤モデルを共有する「Claude Fable 5」と「Claude Mythos 5」を発表した。マイナビニュース TECH+によれば、Fable 5は高リスク要求を自動検出する分類器を搭載し、検知時はClaude Opus 4.8へフォールバックする。フォールバック発生率は5%未満にとどまり、95%以上がFable 5の応答で完結したという。決済大手Stripeでの早期テストでは、5000万行に及ぶRubyコードベースの移行を1日で完了。人手なら2カ月以上かかる規模だった。窓の杜はさらに、金融ベンチマークHebbiaで全モデル中最高得点、ゲーム『ポケットモンスター ファイアレッド』を視覚情報のみで攻略した事例も伝えている。一方のMythos 5は承認済みパートナー限定で、性能はPreview同等かやや上、30日間のデータ保持ポリシーが適用される。
Opus 5がもたらした価格半減
7月25日発表の「Claude Opus 5」はBigGoファイナンスによれば、Fable 5に迫る性能を入力100万トークンあたり5ドル(約820円)、出力25ドル(約4,100円)というFable 5の半額で実現した。エージェント型コーディング評価Frontier Bench v0.1で43.3%を獲得しFable 5の33.7%を上回り、ARC-AGI 3では30.2%とGPT-5.6 Solの7.8%を大きく引き離した。脆弱性発見のOSS-Fuzzでは79.4%とMythos 5の80.0%に迫る一方、悪用試行の成功率は14回中4回とMythos 5の13回を大きく下回り、安全性と性能の両立を図った設計になっている。