Mythos Previewが示した異次元のベンチマーク
米Anthropicは2026年4月7日、新モデル「Claude Mythos Preview」を発表した。System Cardによれば、実践的なソフトウェアエンジニアリング能力を測るSWE-benchやPC操作能力を測るTerminal-Benchなど、コーディング・推論・マルチモーダル・高難易度問題の各ベンチマークで既存のGPT-5.4やGemini 3.1 Proを上回るスコアを記録した。特に自律検索の評価では、Web検索・ページ取得・ツール呼び出し・コード実行を組み合わせた環境で、最大推論設定かつ300万トークンの条件下で86.9%というスコアをAIsmileyは報じている。マルチモーダルでも、生物学論文の図表を解釈するLAB-Bench FigQAでツールなし79.7%、Pythonツールあり89.0%と、Opus 4.6・Sonnet 4.6を大きく上回った。
非公開の理由——エクスプロイト作成成功率72.4%
この性能の裏で問題視されたのがサイバー攻撃能力の高さだ。日経クロステックの報道によると、修正済みのFirefox 148既知脆弱性を突くエクスプロイト作成を250回試行させたところ、Claude Sonnet 4.6は0回、Claude Opus 4.6は2回しか成功しなかったのに対し、Mythos Previewは181回成功し成功率72.4%に達した。この結果を受け、Anthropicはシステムカードで「大きな性能向上を見せたが一般公開はできない」と明記し、日経クロステックによれば、当初はサイバー防衛を担う一部の信頼できる企業にのみ提供する「Project Glasswing」の枠組みで展開された。GIGAZINEの報道では、Mythos Previewは深刻度「高」以上と推定される脆弱性候補を6,202件発見し、日本の銀行での利用検討も進んでいたとされる。
Cybench満点、CyberGymでも既存モデルを凌駕
より体系的な評価として、CTF形式のセキュリティ課題を測るCybenchでは、Mythos Previewはテスト対象の全課題でpass@1達成率100%を記録した。さらに実在するオープンソースソフトウェアの既知脆弱性を再現するCyberGym(1,507タスク)では0.83のスコアを獲得し、Opus 4.6の0.67、Sonnet 4.6の0.65を上回った。AIsmileyの分析では、これらの能力はセキュリティ機能を明示的に訓練した結果ではなく、コーディング・推論・自律性の全般的な向上に伴い自然に獲得されたとAnthropicは説明している。
Fable 5・Mythos 5の一般提供と保護機能
2026年6月9日、Anthropicは方針を転換し「Claude Fable 5」を一般提供、上位版「Claude Mythos 5」を限定パートナー向けに発表した。ITmediaによれば、悪用防止のため独立した分類器がサイバーセキュリティ・生物化学・蒸留関連のリクエストを検知した場合、応答はOpus 4.8へ自動フォールバックする仕組みが導入された。保護機能が作動するのはセッション全体の5%未満で、残り95%超では性能はMythos 5と実質同等とされる。外部バグ報奨金プログラムでは1000時間超の検証を行い「ユニバーサル・ジェイルブレイク」は発見されなかった。ソフトウェア開発では、Stripeが5,000万行規模のRubyコードベースの移行を、チーム作業なら2カ月かかる工程をFable 5が1日で完了させたと窓の杜が報じている。
半額のOpus 5がMythos級に接近
7月25日には「Claude Opus 5」が登場した。BigGoによれば、API価格は前世代Opus 4.8から据え置きで入力100万トークン5ドル・出力25ドルとなり、Fable 5(入力10ドル・出力50ドル)のちょうど半額だ。それでもエージェント型コーディング評価Frontier Bench v0.1でOpus 5は43.3%を獲得し、Fable 5の33.7%、GPT-5.6 Solの34.4%を上回った。知識処理ベンチマークGDPVal-AA v2では1,861ポイントで全モデル中最高、ARC-AGI 3では30.2%を記録しGPT-5.6 Solの7.8%を大きく引き離した。一方でサイバー攻撃面では、OSS-Fuzzの脆弱性発見率はOpus 5が79.4%とMythos 5の80.0%に迫るが、実際の悪用試行では14回中4回しか成功せずMythos 5の13回を大きく下回る。Anthropicは攻撃的サイバー操作の訓練を意図的に制限し、安全分類機能の介入頻度をFable 5比で約85%減らしたと説明している。




