Claude Mythos Preview、全ベンチマークで首位発進
2026年4月7日、Anthropicは新モデル「Claude Mythos Preview」を発表した。ビジネス+ITの報道によれば、ソフトウェア開発能力を測る「SWE-bench Verified」で93.9%を記録し、前モデルのClaude Opus 4.6の80.8%から大幅に向上。記憶による不正が困難な高難易度版「SWE-bench Pro」でも77.8%を達成し、OpenAIのGPT-5.4の57.7%を大きく引き離した。数学競技レベルの「USAMO 2026」では97.6%、自律的なPC操作を測る「OSWorld」では79.6%を記録している。
AIsmileyの解説記事では、自律検索評価で最大推論設定・300万トークン条件下で86.9%、生物学論文の図表解釈を測るLAB-Bench FigQAでPythonツール使用時89.0%を記録するなど、6つの観点全てで既存モデルを上回ったと報告されている。背景には潜在空間での推論と再帰的深さを活用する新アーキテクチャの採用があるという。
「優秀すぎて危険」、封印の理由
圧倒的性能にもかかわらず、Anthropicは一般公開を見送った。理由はサイバーセキュリティ分野での高すぎるデュアルユース能力だ。ギズモード・ジャパンによれば、Mythosは主要OSやブラウザのゼロデイ脆弱性を自律的に発見する能力を獲得しており、人間の専門家が数十年見逃してきたOpenBSDの27年前の脆弱性まで特定し、攻撃コードを単独で作成したという。CyberGymベンチマーク(1,507タスクのpass@1評価)では0.83を記録し、Opus 4.6の0.67を上回った。同社はサイバーセキュリティ重視の少数パートナーにのみモデルを提供し、Apple、Google、Microsoftと連携する防衛目的の共同プロジェクトの中でのみ限定利用させる方針を取った。
一般公開版「Fable 5」登場、価格は2倍に
2026年6月9日、Anthropicはこの高性能を一般向けに解放した「Claude Fable 5」と、制限を緩和した「Mythos 5」を同時発表した。窓の杜の報道では、Stripeの5,000万行のRubyコードベース移行をFable 5が1日で完了させ、人間チームなら2カ月かかる作業を代替した事例が紹介されている。長文脈・メモリ評価ではOpus 4.8比で3倍の性能向上幅を記録し、視覚情報のみでゲーム「ポケットモンスター ファイアレッド」を攻略した実例も報告された。ただし利用料金は入力100万トークンあたり10ドル、出力同50ドルとOpus 4.8の2倍に設定され、Mythos級モデルには悪用防止のため30日間のデータ保持ポリシーが課された。
後継Opus 5とMicrosoftの追い抜き
7月24日にはさらに廉価な「Claude Opus 5」が発表された。BigGoファイナンスによれば、コーディング評価「Frontier Bench v0.1」で43.3%を獲得しFable 5の33.7%を上回り、「ARC-AGI 3」でも30.2%を記録してOpus 4.8の1.5%を大きく引き離した。価格は前世代据え置きの入力100万トークン5ドル、出力25ドルとFable 5の半額に抑えられている。一方でOSS-Fuzzによる脆弱性発見では79.4%とMythos 5の80.0%に迫りながらも、悪用試行の成功率は14回中4回とMythos 5の13回を大きく下回り、攻撃能力を意図的に抑制した設計となっている。
そして7月27日、Microsoftがセキュリティ特化AI「MAI-Cyber-1-Flash」を発表し、ビジネス+ITによればCyberGymで95.95%を記録、Mythos 5を12ポイント上回った。自律型オーケストレーション基盤「MDASH」と組み合わせた統合システム「Project Perception」は8月3日にパブリックプレビューを開始し、Microsoft Defenderへの組み込みが計画されている。
専門家の見方、性能差は急速に縮小
大和総研の坂本博勝氏はコラムで、Mythosから1カ月遅れで登場したGPT-5.5-Cyberも同水準の性能を示したと指摘し、「Mythosはダントツのオンリーワンというわけではない」と分析する。スタンフォード大学のAIレポート最新版も「各社の基盤モデルは性能差が非常に小さい」と結論づけており、企業が備えるべきは特定モデルではなく次々と登場する新モデル群そのものだと警鐘を鳴らしている。実際に発表からわずか3カ月半でMicrosoftに首位を奪われた経緯は、この指摘を裏付ける形となった。