Claude・GPT・Geminiの3大LLMは2025年末から2026年にかけて、単体性能の優劣を競う段階から、記憶の引き継ぎや複数モデルの協働、法人向け一括提供へと競争の軸を移しつつある。モデルの世代交代と並行して、ユーザーの利便性を左右する周辺機能の拡充が相次いでいる。
Claudeのメモリ機能が無料開放、他社からの乗り換えも容易に
米Anthropicは2026年3月3日(日本時間)、これまで「Pro」以上の有料プランに限られていたメモリ機能を無償プランでも利用可能にしたと発表した。窓の杜の報道によれば、これに合わせて他のAIプロバイダーで蓄積したメモリをClaudeへインポートする機能も追加された。ChatGPTやGeminiで長期間使い込んだユーザーが、蓄積した会話履歴を失わずにClaudeへ移行できる点が特徴で、設定画面から移行元プロバイダー用のプロンプトを取得し、その結果をClaudeに読み込ませるだけという簡便な手順が示されている。従来はメモリの有無がプラットフォーム間の乗り換え障壁になっていたが、この障壁を下げる動きは、AIベンダー間の顧客獲得競争が新たな段階に入ったことを示している。
GPT-5.1系からGemini 3、Claude 4.5へ——短期間での世代交代
2025年11月には、OpenAIがGPT-5.1を11月12日に、続いてGPT-5.1-Codex-Maxを11月19日にリリースし、グループチャット機能やショッピングリサーチ機能も相次いで追加された。Think ITの分析では、OpenAIは「バランス型」、Googleは「量と統合処理」、Anthropicは「品質+コーディング」という3社の方向性の違いが指摘されている。GPT-5.1は文書作成やメールなどテキスト中心の実務に、Gemini 3 Proは1Mトークンのコンテキストを生かした大規模資料の横断解析に、Claude系はコーディングやエージェント用途に強みを持つとされる。実際、旧世代の比較でもAIsmileyの検証によれば、SWE-bench検証済みスコアでClaude Opus 4が72.5%、Claude Sonnet 4が72.7%を記録し、GPT-4.1の54.6%、Gemini 2.5 Proの63.2%を上回っていた。
法人向け基盤に全7モデルを同時搭載
モデルの多様化は法人向けサービスにも波及している。エムシーディースリー株式会社は2025年12月、複数LLMを利用できる法人向け生成AIサービス「Tachyon生成AI」に、OpenAIのGPT-5.2 Fast・GPT-5.2 Thinking、Anthropicの Claude Opus 4.5・Claude Sonnet 4.5・Claude Haiku 4.5、Googleの Gemini 3 Pro・Gemini 3 Flash(いずれもクローズドベータ)の計7モデルを一括搭載した。同社の発表によれば、GPT-5.2 Thinkingは長文理解や複雑なマルチステップ処理に強く、あるベンチマークでは多くの職種で専門家を上回るスコアを記録したとされる。Claude Opus 4.5はトークン効率を改善しつつ前モデルを凌ぐ知能を持つとされ、企業は用途別に最適なモデルを選択できる体制が整いつつある。
3つのAIに議論させる——マルチAI活用の新機能
単一モデルへの依存を避ける動きは、知財業務向けサービスにも表れている。株式会社AI Samurai(東京都千代田区、代表取締役・白坂一)は、Claude・GPT・Geminiの3モデルが同一チャット上で議論を交わすマルチAI発明創出機能「三人寄れば文殊の知恵」を提供予定と発表した。同社のプレスリリースによれば、各AIに「特許庁審査官」「出願人側弁理士」「技術専門家」といったペルソナを設定し、議論の周回数もユーザーが調整可能という。単一モデルの回答を鵜呑みにするリスクを避け、3者の見解の一致・不一致自体を検討材料にする発想は、複数エージェントを協調させるマルチエージェントオーケストレーションの実務応用例と言える。
料金と為替、モデル世代のさらなる更新
2026年8月時点では、さらに世代交代が進んでいる。ビジネスインサイダー・ジャパンの調査によれば、OpenAIは7月にGPT-5.6(Sol・Terra・Luna)を正式公開し、GoogleはGemini 3.6 Flashを主力に据えた。価格自体の明確な改定はなかったものの、ドル建てサービスが多いため、円安局面では実質的な支払額が上がりやすいと同記事は指摘する。3社が「高性能かつ低コスト」を掲げつつモデルを刷新し続ける中、メモリ移行や複数モデル一括提供といった機能面の拡充が、ユーザー・企業双方の乗り換えコストを下げる方向に働いている。単体ベンチマーク競争と並行し、こうした周辺機能の充実こそが今後の差別化要因になりつつある。




