Claudeのメモリ機能が無償開放、他社からの移行も後押し
米Anthropicは2026年3月3日(日本時間)、対話型AI「Claude」のメモリ機能を無料プランでも利用できるようにしたと発表した。メモリ機能とは、AIが過去の会話内容を記憶し、以後のやり取りに反映させる仕組みで、これまでClaudeでは「Pro」以上の有料プランに限定されていた。窓の杜によると、同社は公式X(旧Twitter)で「メモリは無料プランでも利用可能になった。他のAIプロバイダーからメモリをインポートしやすくもした」と発表している。
注目すべきは移行機能の存在だ。ChatGPTやGeminiで既に会話履歴を蓄積しているユーザーは、Claudeの設定画面から専用プロンプトを取得し、移行元のサービスで実行、その結果をClaudeに読み込ませるだけで過去のメモリを引き継げる。plus-web3も、他社AIからユーザーの設定や作業コンテキストを移行できる点を強調しており、単なる無料化ではなく「乗り換え障壁の引き下げ」を狙った施策であることがうかがえる。
性能面でもClaudeが優位、GPT-4.1・Gemini 2.5を上回る指標
移行を後押しする背景には性能面での自信もある。AI Smileyが公開したAnthropic発のベンチマーク比較によれば、プログラミング性能を測るSWE-bench検証済みスコアでClaude Opus 4は最大79.4%、Claude Sonnet 4は最大80.2%を記録し、OpenAIのGPT-4.1(54.6%)、GoogleのGemini 2.5 Pro(63.2%)を大きく上回った。エージェント型ターミナルコーディングを測るTerminal-benchでも、Claude Opus 4が最大50.0%と他モデルを引き離している。
一方でGemini 2.5 Proは大学院レベルの推論を問うGPQA Diamondで83.0%を記録し、視覚的推論のMMMU検証でも79.6%とClaude・GPTを上回る場面がある。単純な優劣ではなく、コーディングはClaude、推論・視覚タスクはGeminiという棲み分けが数値上でも裏付けられている状況だ。
GPT-5.6・Gemini 3.6 Flashも投入、性能とコストの同時追求へ
各社のモデル更新は止まらない。Business Insider Japanによれば、2026年7月にはOpenAIがGPT-5.6(Sol・Terra・Luna)を正式公開し、GoogleはGemini 3.6 Flashを投入した。SpaceXAI(旧xAI)もコーディング特化のGrok 4.5をリリースしており、各社とも「高性能かつ低コスト」を掲げている。同記事は、価格面での明確な改定は7月時点でなかったものの、1ドル=160円を目安とする為替換算では円安局面が続くと日本円決済サービスの割安感が相対的に増すと指摘した。
また2026年3月11日のGLOBIS学び放題の解説動画でも、GPT-5.4の登場でPC操作能力や推論力が向上し、「AIエージェントのように使う方が適している場合がある」との受講者コメントが紹介されている。ChatGPT、Gemini、Claudeのいずれか一択ではなく、業務内容に応じて使い分ける実務層の姿勢が浮かび上がる。
マルチLLM比較・議論ツールも拡大、乗り換えより「併用」へ
移行のしやすさと並行して、複数モデルを同時に使い比べる動きも広がっている。エムシーデジタルの法人向けサービス「Tachyon 生成AI」は、単一プロンプトから最大4つのLLMの出力を同時比較できる「モデル比較機能」を搭載し、GPT・Gemini・Claude 3/3.5を含む計10モデルを利用可能にした。同社はハルシネーション対策やモデル特性理解の促進を導入目的に挙げている。
知財分野でも、AI Samuraiが2026年7月、Claude・GPT・Geminiの3モデルに議論をさせる「三人寄れば文殊の知恵」機能を発表。各AIに審査官役・弁理士役・技術専門家役といったペルソナを与え、模擬審査やクレーム解釈の相違点抽出に活用する狙いだ。単一モデルの回答を鵜呑みにせず、3社の見解の一致・不一致自体を検討材料とする発想は、メモリ移行による「乗り換え」とは対照的に、複数AIの「併用」を前提とした新たな活用形態を示している。