Amazonの「Help Me Decide」とShopifyのカタログAI、同時多発する商品発見の再構築
EC業界でAIによる商品レコメンドの実装が急速に進んでいる。Amazonは2025年10月23日、閲覧履歴と購入履歴を分析して推薦理由まで提示する「Help Me Decide」機能を発表した。同社の説明によれば、キャンプ用の大人用・子供用寝袋を閲覧し、車中泊用の大型ストーブを見た上でハイキングブーツを購入した顧客が改めてテントを検索すると、AIは「家族での冒険に暖かく広々」といった具体的な文脈付きで四人用オールシーズンテントを推薦する仕組みだ。ppc.landによれば、この動きはMicrosoftが2025年4月18日に開始したCopilot Merchant Program、OpenAIが同年9月29日にShopify連携で開始したChatGPTの即時決済機能と同時期に重なっており、大手各社がAIショッピングアシスタント市場で競争を激化させている。
Shopifyのカタログ戦略、コンバージョン率は従来の2倍に
一方Shopifyは、加盟店の商品情報をAIエージェントが読み取りやすい形に整えるCatalog機能を強化している。TradingViewの報道によると、このカタログを経由した検索は、スクレイピングされたデータに基づく検索と比べておよそ2倍のコンバージョン率を記録し、AI検索全体では従来の有機検索より約80%高いコンバージョン率を示したという。さらに直近四半期では、AI経由の注文の75%が上位100カテゴリー以外の商品から生まれており、AI検索経由セッションの半数が商品ページに直接着地する現象も確認された。これは従来型検索の2.5倍の水準で、キーワード検索の枠を超えたニッチ商品の発見をAIが後押ししていることを示している。
「供給中心」Amazonと「需要中心」Shopify、思想の違いが戦略を分ける
両社のAI活用には根本的な思想差がある。Marketplace Pulseの分析では、Amazonは倉庫・配送・商品推薦という「Amazonが管理する領域」を最適化する供給中心型AIを志向し、年間約100万の新規出品者を代替可能な在庫供給源として扱う。対してShopifyは商品掲載・マーケティング文言・顧客対応という「加盟店が管理する領域」を最適化する需要中心型AIを掲げ、「Shopify Magic」による商品説明自動生成やAIアシスタント「Sidekick」による店舗運営支援を軸に据える。Shopifyの収益は加盟店の売上増加に直結するため、AIツールは常に「加盟店の売上をどう伸ばすか」を問う設計になっている点が、Amazonの「顧客への配送と発見をどう速くするか」という問いと対照的だ。
消費者の45%が「人間かAIか気にしない」——Constructor・Shopify調査
受け手である消費者側の意識も変化している。ConstructorとShopifyが2025年9月18日に発表した調査によれば、消費者の45%が商品推薦の出所が人間かAIアルゴリズムかを「気にしない」と回答した。すでに38%がAmazonのRufusやWalmartのSparkyのようなエージェント型ショッピングツールを利用した経験を持ち、利用経験者の50%が「常に、または頻繁に役立つ」と回答、86%が「少なくとも時々は役立つ」と答えている。PR Newswireが報じたこの結果は、AI推薦への心理的抵抗が急速に薄れつつある実態を裏付ける。
日本企業でも導入進む、ブランド事例と業界への波及
Shopify Japanが2025年9月30日に公表した調査でも、グローバルで事業者の47%が商品レコメンドやソーシャル広告へのAI導入を予定していると回答した。国内事例では、小嶋陽菜氏プロデュースの「Her lip to」が自然言語での注文データ分析や商品ページのローカライズにAIを活用し、Ankerグループは「Anker AI Assistant」で複雑な問い合わせ対応の待ち時間短縮を実現している。カントリーマネージャーの馬場道生氏は「AIは一過性のブームではなく、これからのコマースを形づくる未来そのもの」とコメントしており、Shopify Japanのプレスリリースによれば2025年夏のShopify Editionsで発表されたテーマ「Horizon」ではAIによるコンテンツブロック生成も可能になった。国内ECベンダーZETA株式会社も2026年4月30日、レコメンドエンジン「ZETA RECOMMEND」にクチコミ・Q&A表示機能を追加するなど、AI×UGCを組み合わせた商品提案の高度化が業界全体で進んでいる。




