AIエージェント関連のアップデートが2026年8月にかけて相次いでいる。注目すべきは、単体の応答精度や音声・対話体験の改善にとどまらず、エージェント同士が通信・連携する「Agent-to-Agent(A2A)」プロトコルの実装や、複数のオーケストレーション基盤の強化が同時多発的に進んでいる点だ。オープンソース系のHermes Agent、エンタープライズ系のMicrosoft Copilot StudioおよびOracle AI Agent Studio、そして自律型エージェントManusの動向を横断すると、業界全体が「単体で賢いAI」から「複数エージェントが協調して仕事を進める仕組み」へ軸足を移していることが見えてくる。
Hermes Agent 0.20.0「The Herald Release」——A2A v1.0を実装
米Nous Researchは8月3日(現地時間)、オープンソースの自律AIエージェント「Hermes Agent」の最新版v0.20.0を公開した。窓の杜の報道によれば、今回の改善は音声・エージェント・デスクトップアプリ・CLI・パフォーマンス・セキュリティと多岐にわたる。最大の注目点は「Agent-to-Agent」プロトコルv1.0の実装で、Hermesが他のエージェントを発見し通信・連携できるようになった。加えて「Outbound Webhooks」機能により、セッションの動作状況やツールイベントを署名付きで任意のHTTPエンドポイントへ送信でき、CIやホームオートメーションとの連携が可能になった。
CLIにも大幅な拡張があり、ツール呼び出しの反復上限が従来の90回から500回へ引き上げられたほか、「Claude Code」や「Codex CLI」の設定を移行する「hermes import-agent」コマンドも追加された。ハルシネーション対策としては新スキル「grounded-citations」を導入し、すべての主張に検証可能な出典を付けてページ本文と照合する仕組みを備えた。Hermes Agentは2026年2月にMITライセンスでリリースされたセルフホスト型エージェントで、Telegram・Discord・Slackからの呼び出しにも対応している。
Microsoft Copilot Studio——Computer Use GAとA2A一般提供
米Microsoftは5月26日(現地時間)、「Microsoft Copilot Studio」の2026年5月アップデートを発表した。窓の杜の報道によると、目玉はWebサイトやデスクトップアプリのUIを直接操作する「Computer Use」エージェントの一般提供(GA)だ。従来のRPAツールはUIの微小な変更で動作が壊れる弱点があったが、Computer Useは自ら状況を判断して変更に柔軟対応できるため、APIの存在しないレガシーシステムでも堅牢な自動化を実現できる。
同時に、リモートMCP(Model Context Protocol)サーバーのサポートとエージェント間(A2A)通信も一般提供となった。新しいオーケストレーションレイヤー(早期リリース)では評価パフォーマンスが約20%向上し、トークン消費量は50%削減されたという。エージェントのライフサイクル管理も可視化が進み、承認や公開状態を一目で確認できるようになった。北米向けにはDynamics 365 Contact Centerを通じたリアルタイム音声エージェントの一般提供も始まっている。
Oracle AI Agent Studio——顧客デプロイ7000超、隔週50件の更新
日本オラクルは7月30日、業務アプリケーション向けAIエージェントの説明会を開催した。クラウドWatchの報道によれば、同社は「AI Agent Studio」を通じてノーコードの「Agentic App Builder」とプロコード向け「AI Studio Skill」の両方を提供し、自然言語仕様のあいまいさを排除しながら再現可能な開発体験を目指す。数字面では、認定をクリアしたエキスパートが8万5536人、組み込みエージェントが1000以上、顧客が実際にデプロイしたエージェントは7000以上に達しており、細かい機能アップデートを隔週ペースで約50件リリースしているという。日本オラクルの中山耕一郎氏は、2026年を「より広範囲の高度な業務プロセスを自動化するエージェント型アプリケーション提供の年」と位置づけている。
Manusの並列マルチエージェント処理と業界標準化の背景
自律型AIエージェント「Manus」も2025年8月に「Wide Research」機能を追加し、複数のAIエージェントによる並列処理を可能にした。SHIFT AI TIMESの解説によれば、大規模な調査タスクを自動で細分化し、固定役割にとらわれない汎用エージェントを多数並列稼働させて100以上の情報ソースを一斉収集する。上位プラン「Manus 1.6 Max」では各並列エージェントが最高性能で実行され、数百件規模の下調べを短時間で処理できるという。
こうした個別事例の背景には、業界横断的なプロトコル標準化の流れがある。大和総研の分析では、AIエージェントを構成する要素としてMCPによるシステム連携や、複数エージェントの協働に必要なA2A・AGNTCYといったプロトコル、安全に稼働させるためのガードレールや監査・権限管理が組み合わさって機能していると整理されている。同社は2025年度上半期の動向解説で、Salesforceの「Agentforce 360」やTOKIUMの経理特化型エージェントなど、業務特化と横断基盤の両輪でエージェント活用が進んでいると指摘している。
単体性能競争から連携基盤競争への転換
Hermes Agent、Copilot Studio、AI Agent Studio、Manusの4つの動きに共通するのは、エージェント単体の応答精度を競う段階から、複数エージェント・複数システムをどう安全かつ効率的に連携させるかという段階へ競争軸が移っている点だ。A2Aプロトコルの実装やオーケストレーションレイヤーの改善は、企業が複数ベンダーのエージェントを併用する時代を見据えた布石といえる。導入企業にとっては、単体ベンチマークのスコアだけでなく、既存システムとの接続性やエージェント間通信の標準準拠度が選定基準として重要性を増していくだろう。




