最高裁Cox判例がAI著作権訴訟の新基準を確立
2026年4月10日、カリフォルニア中部地区連邦地方裁判所において、ディズニーなど大手映画スタジオが中国のAI企業Hailuoに対して提起していた寄与侵害請求の却下を求める申立てが提出された。この申立ては、最高裁が下したCox判例を根拠としており、寄与侵害の法理を大幅に狭める新たな法的基準が確立されたことを示している。
Hailuo社の却下申立ては、Cox判例における2つの要件に基づいている。第一に、スタジオ側がHailuo AIに「実質的な非侵害用途」があることを立証していない点を指摘。第二に、誘導侵害に関して、同社の「ポケットの中のハリウッドスタジオ」というキャッチフレーズは単に「品質と創造的能力」を表現しているに過ぎず、ユーザーに著作権侵害を誘導する意図はないと主張している。
従来の法理では、AI企業が著作権侵害の「実際の認識」を有していることを示す停止命令書などの証拠があれば寄与侵害が成立する可能性があった。しかしCox判例は「著作権以外の目的でコンテンツをフィルタリングする能力があっても、著作権侵害のフィルタリング義務は生じない」との判断を示し、この従来の理論を「排除した」と申立書は主張している。
Sony対Udio訴訟でストリーミングリッピング技術が焦点
一方、Sony Music Entertainmentが提起したAI音楽生成企業Udioに対する著作権侵害訴訟では、4月15日にヘラーステイン判事がUdio側の一部却下申立てを退けた。同判事は、UdioがYouTubeの「ストリーミングリッピング」対策ツールを回避して数百万の著作権楽曲をダウンロード・複製したとするSony側の主張が十分な根拠を有していると認定した。
ストリーミングリッピングとは、第三者がオンライン動画の保護機能を回避してコンテンツをダウンロード・複製する技術を指す。Udio社は、YouTube側のシステムが「作品の複製を防ぐ制御装置」ではなく、単なるアクセス制限であると主張したが、裁判所はこの論理を受け入れなかった。この判断は、AI企業が訓練データ取得時に使用する技術的手段の適法性について、厳格な基準を適用する姿勢を示している。
AI学習用データ収集の法的限界が明確化
この判例は、AI企業が大規模言語モデルやマルチモーダルAIの訓練に必要な膨大なデータセットを構築する際、技術的保護手段を回避することが重大な法的リスクとなることを明確にした。特に音楽、映像、テキストなど著作権で保護されたコンテンツを扱う場合、データソースの正当性確保が事業継続の前提条件となっている。
音楽出版社がAnthropic社に30億ドルの大型訴訟を提起
2026年3月16日には、音楽出版社がAnthropic社に対して30億ドル規模の著作権侵害訴訟を提起した。この訴訟で特筆すべきは、当初の侵害楽曲数が500曲とされていたが、書籍著者らが提起した別の著作権侵害訴訟「Bartz事件」で明らかになった証拠により、実際の侵害楽曲数が「40倍」の2万曲に達していることが判明した点である。
同様に、3月17日にはEncyclopedia BritannicaとMerriam-Webster社がOpenAI社を著作権侵害で提訴した。両社は、ChatGPTが約10万件の著作権記事をスクレイピングして学習に使用し、ユーザーへの回答で原文をそのまま複製している一方、虚偽の情報を両社の信頼あるブランドに帰属させていると主張している。これらの訴訟は、AI企業が直面する賠償リスクの規模が従来の想定を大きく上回る可能性を示唆している。
AI生成コードの著作権保護問題が企業戦略に影響
著作権法の観点から新たな課題となっているのが、AI生成コードの保護可能性である。2026年4月15日のBloomberg Law分析によると、人間が自然言語でソフトウェアの仕様を記述し、生成AI(GenAI)がコードを作成する「バイブコーディング」が急速に普及している。しかし、米国法では人間の著作者性を欠くAI生成コードは著作権保護の対象外となる。
この問題は技術業界に限らず、あらゆる業界の従業員がソフトウェアソリューションをバイブコーディングで開発している現状を踏まえると、企業の知的財産戦略に重大な影響を与える。従来の人間が記述したコードは一般的に著作権保護を受けられたが、AI生成コードは法的保護を受けられないため、企業は開発速度と知的財産保護のバランスを再検討する必要がある。
法曹界でAI専門弁護士の需要が急増
これらの複雑な訴訟に対応するため、AI業界は特定の法律事務所出身弁護士に依存している状況が明らかになった。2026年4月16日の報道によると、解散したベイエリアの知的財産法律事務所Durie Tangri出身の50名以上の弁護士が、Morrison Foersterによる同事務所買収から3年以上経過した現在も、シリコンバレーの著作権紛争の中心的役割を担っている。
これらの弁護士の多くは、Google、Meta、Amazonなどの大手テック企業で社内弁護士として活動した経験を持ち、現在はOpenAI、Anthropicなどの最先端AI企業の法的防衛を担当している。AI著作権法という新興分野において、実務経験を有する専門家の希少性が、法曹界の人材配置にも大きな影響を与えている状況が浮き彫りになっている。



