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ランサムの侵入口、36件中18件はVPN機器

連載「漏洩の手口と、いまできる守り」第1回は、侵入の入口になっているVPN・境界機器と、今日から打てる手を製品ごとにまとめる。

田中 誠一|2026.10.18|17分|更新: 2026.10.18

令和8年上半期のランサムウェア被害は123件で半期最多、侵入経路は36件中18件がVPN機器だった。今日やることは、インターネットに出ている機器を機種と版まで書き出し、CISAのKEVとJPCERT/CCの注意喚起に照らすこと。

Key Points

ランサムの侵入口、36件中18件はVPN機器

警察庁が2026年9月に公表した統計で、令和8年(2026年)上半期のランサムウェア被害報告は123件(ノーウェアランサム9件は別)だった。統計を取り始めた2020年下半期以降、半期として最多である。被害企業の約6割は中小企業で、業種では製造業が約3割を占める。

侵入経路を答えた36組織のうち、18組織がVPN機器から入られていた。連載「漏洩の手口と、いまできる守り」の第1回は、この入口になっているVPN・境界機器を扱う。前半で何が起きたかを数字と事例で示し、後半で今日やることと製品ごとの確認手順を並べる。

入口の半分はVPN機器、メールは少ない

警察庁の被害組織アンケート(有効回答36件)では、侵入経路はVPN機器18件、リモートデスクトップ9件、その他9件だった。次の図1は、その内訳を示す。

ランサムウェアは、どこから入ったか
出典: 警察庁「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」

半期だけの偶然ではない。2021〜2025年の5年分(有効回答485件)を合わせても、VPN機器293件、リモートデスクトップ105件、不審メールやその添付ファイル24件、その他63件となる。

過去5年でも、入口の6割はVPN機器
出典: 警察庁「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」

図2のとおり、5年で見ても入口の6割はVPN機器で、不審メールは485件中24件にとどまる。「メールの添付を開かない」より「インターネットに出ている機器を塞ぐ」ほうが効く、というのが統計の示すところだ。

攻撃者は、未修正のぜい弱性や漏えいした認証情報等を悪用して組織のネットワークへ侵入する。

警察庁「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」

警察庁によると、攻撃者は侵入後に管理者権限の奪取やセキュリティの無効化を試み、内部でデータとバックアップを物色し、データを持ち出してから暗号化する。復旧に総額1,000万円以上かかった組織は約6割、1か月未満で復旧できた組織は5割弱だった。

何をされたか — 国内2件、海外2件

両毛システムズ: VPNのアカウントを悪用された

自治体・企業のシステムを受託する両毛システムズの第3報(2026年9月25日)によると、2026年8月12日に外部の第三者が社内ネットワークに侵入した。8月14日に社内の死活監視で異常を検知して遮断し、外部専門機関の調査でランサムウェア攻撃と確認された。

外部の第三者がネットワーク接続機器(VPN)のアカウントを悪用し、社内ネットワークへ侵入

両毛システムズ「第3報」

営業情報・取引情報と、取引先の顧客・問い合わせ事業者・個人顧客・従業員の個人情報が漏えいしたおそれがある。委託元にも波及し、報道によれば大東ガス(約12.4万件の顧客情報を含む過去ファイル)や伊勢崎市(児童生徒3,789件のアカウント情報)などが影響を公表した。

アカウントがどう手に入ったのか(盗まれたのか、機器の問題か)と、多要素認証を使っていたかどうかは未公表である。

FortiBleed: ログイン情報が攻撃者のデータベースに

JPCERT/CCは2026年6月23日の注意喚起(JPCERT-AT-2026-0019)で、FortiGateなどFortinet製品のログイン情報が、攻撃者の運用するデータベースに194か国・86,644台以上分あるとされる件(SOCRadar)を取り上げた。JPCERT/CCは、国内企業に関連する情報が含まれていることを確認している。

Fortinetは、新しい脆弱性ではなく過去の侵害で得た情報の再利用が主因との見解を示す。ただし研究者は、今も有効な認証情報が残っている可能性を指摘している。

設定ファイルには管理者パスワードのハッシュが入っているため、設定ファイルを取られていると、機器に触れずに解読される恐れがある。侵害したFortiGateを経由して社内のWindowsドメイン認証(Kerberos・NTLM)の資格情報を盗み、解読した例も確認されている。VPN機器の対処だけでは終わらず、Active Directoryも見る必要がある。

Ivanti Connect Secure: CVE-2026-104935

米CISAは2026年10月13日、この脆弱性を悪用確認済みの一覧(KEV)に加えた。影響を受けるのは25.1.1.1以前、25.1.2.2以前、22.8R2.4以前である。報道によれば同じ攻撃者は別の欠陥2件も使っており、うちroot権限への昇格の欠陥は報道時点で修正版がない。

CISAは、Ivantiの改ざんチェックツール(Integrity Checker Tool)について、攻撃者のコマンドがメモリ上で動くため痕跡を見つけられないことがあるとしている。

may not detect evidence of exploitation of CVE-2026-104935

訳: CVE-2026-104935の悪用の痕跡を検出できない可能性がある

CISA、Ivanti Connect Secureに関するアラート(2026年10月13日)

Palo Alto Networks PAN-OS: CVE-2026-0322

Palo Alto Networksは2026年10月14日、PAN-OSの管理画面の欠陥を公表した(CVSS 4.0で8.6、悪用を確認)。管理画面に届くログイン済みの攻撃者が、ファイアウォール上でrootとしてコードを実行できる。対象はPA-Series・VM-Series・Panoramaで、Cloud NGFWとPrisma Accessは対象外、回避策は無い。

今日やること — すべての組織で(30分〜半日)

今日やること(VPN・境界機器)
出典: 人間不要新聞編集部(警察庁・JPCERT/CC・CISA・各社の告知をもとに作成)

図4は、この節の6項目と、後の節で触れるバックアップの1項目をまとめたチェックリストだ。印刷して、終わったものから消していけばよい。

1. インターネットに出ている機器を書き出す

2. 一覧をKEVとJPCERT/CCの注意喚起に照らす

3. 管理画面をインターネットから見えなくする

4. VPNのアカウントを棚卸しする

5. VPNのログインに多要素認証を付ける

6. リモートデスクトップをインターネットに直接出さない

製品ごとの確認 — FortiGate・Ivanti・Palo Alto

FortiGateを使っている組織

JPCERT/CCの注意喚起にある確認手順を、そのまま順に進める。

パスワードを変えるだけでは足りない理由を、JPCERT/CCはこう書いている。

なお、管理者パスワードを再設定しても、既定では旧SHA256ハッシュがold-passwordに残存するため、過去に設定ファイルが取得されていた場合、オフラインクラックによる平文復元のリスクが残ります。

JPCERT/CC 注意喚起「JPCERT-AT-2026-0019」

Ivanti Connect Secureを使っている組織

侵害が疑われる場合は、CISAの推奨する次の手順で作り直す。

Palo Altoのファイアウォールを使っている組織

入られた後に被害を小さくする

入口を塞いでも、すでに入られている可能性は残る。警察庁の統計で、バックアップから復元できたかを答えた組織の結果が図3である。

バックアップから戻せたのは、40組織のうち11組織
出典: 警察庁「令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」

戻せたのは有効回答40件のうち11件だけで、29件、つまり7割強は戻せなかった。過去5年(2021〜2025年)でも547件中120件にとどまる。攻撃者はバックアップを先に探して壊す。

出典

風刺画: ランサムの侵入口、36件中18件はVPN機器

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本記事がもたらす影響を風刺的に描いたひとコマ漫画

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