ヨセミテ国立公園で予約制廃止、10年ぶりの深刻な混雑
2026年5月、ヨセミテ国立公園は予約制度を廃止した結果、カリフォルニア州で最も人気の高い国立公園として10年ぶりの混雑レベルを記録している。国立公園システムのデータによると、夏のピークシーズン前にもかかわらず、この春の来園者数は過去10年間で最多となった。週末には公園入場口での待ち時間が90分に達し、来園者は「駐車場を探してぐるぐる回るだけで、雄大な景色を楽しむ余裕がない」状況に直面している。
エル・キャピタンの3000フィート(約914メートル)の花崗岩の壁やヨセミテ滝、ブライダルベール滝といった有名な撮影スポットは、相対的に狭いヨセミテバレー内の駐車場やピクニックベンチからアクセス可能だが、土曜日には昼食前に駐車場が満車となる事態が発生している。ハーフドーム頂上付近では、登山者が最終区間の鋼鉄ケーブルで渋滞を形成し、地上数百フィート上で立ち往生する状況がソーシャルメディアで報告されている。
トランプ政権の政策変更が混雑拡大の要因
この混雑の背景には、2026年2月のトランプ政権による政策変更がある。内務省は「公共アクセスの改善」を理由に、ヨセミテ国立公園、ユタ州のアーチーズ国立公園、モンタナ州のグレイシャー国立公園で予約制度を廃止すると発表した。これまで数年間、混雑制御と自然の静寂保持のために機能していた予約システムが撤廃されたことで、制限のない入園が可能になった。
ヨセミテのレイ・マクパデン園長は2月のインタビューで「夏の土曜日の駐車場問題に対処するために、公園全体の季節的予約システムを導入するのは完全にやりすぎだった」と述べ、決定を擁護している。マクパデン園長は、2025年の予約枠がしばしば未使用だったこと、システムが来園者にフラストレーションを与え、職員の作業負担を増加させたことを理由に挙げている。しかし、批評家たちは、夏のピークシーズンを前にした春の段階での深刻な混雑が、この判断の問題を証明していると指摘している。
州立公園は逆行して入域規制を強化
一方で、カリフォルニア州の州立公園システムは正反対のアプローチを採用している。バーニー滝州立公園は2026年5月から予約制パイロットプログラムを開始した。同公園は「カリフォルニア州立公園システムの王冠の宝石」と呼ばれ、一日の入場を午前8時から正午まで103台、午後1時から5時まで103台、終日有効35台の合計241台に制限している。
入場料は車1台当たり10ドルに1ドルの処理手数料を加えた11ドルで、シニアや障害者割引、年間パス所有者への配慮も含まれている。アルマンド・キンテロ州立公園局長は声明で「来園者全員が記憶に残る体験をできるよう、事前予約により混雑を管理可能なレベルに保ち、公園の資源を限界点まで押し上げないようにする」と説明している。年間の来園者急増により州道89号線で長い待ち行列が発生し、公共安全と公園資源に脅威をもたらしていることが規制導入の理由とされている。
ギリシャは251箇所の海岸で厳格な保護規制を実施
国際的には、ギリシャがオーバーツーリズム対策としてより厳格なアプローチを採用している。2026年4月までに251箇所の海岸で、Natura2000保護フレームワークの一環として包括的な利用規制を導入した。この取り組みは2024年に198箇所から開始され、2025年には238箇所まで拡大していた。
新規制では、パラソル、ラウンジャー、スピーカーの使用が全面的に禁止されている。来園者は個人用シート(タオルや軽量マットのみ)を持参する必要があり、音量制限により拡声器の使用は認められない。さらに、持ち込んだ物品は全て持ち帰ることが義務付けられている。ギリシャ当局は「観光を阻止するのではなく、持続的バランスを目指している」と強調し、大規模開発と無制限な商業活動の制限により、来園者が最も価値を置く「未撹乱環境、静寂な環境、独特な景観」を保護する方針を示している。
自然保護と観光のバランス調整が世界的課題に
これらの事例は、自然エリアにおけるオーバーツーリズム対策のアプローチが地域により大きく異なることを示している。アメリカでは連邦政府が規制緩和の方向に舵を切る一方で、州政府は独自の保護措置を強化している。バーニー滝州立公園の予約システムからは年間約50万ドルから80万ドルの税収が期待され、40の常勤雇用創出とアウトドアレクリエーション目的地としてのブランド構築効果が見込まれている。
ヨセミテでは現在、予約システムに代わる「実践的交通管理、リアルタイム監視、ピーク時の増員配置、ヨセミテバレー以外への来園者誘導努力」に依存している。しかし、6月、7月、8月、9月の月間来園者数が定期的に50万人を超える夏のピークシーズンを前に、これらの代替措置の効果には疑問の声も上がっている。国際的な自然保護の動向と各国の政策対応は、今後の日本の国立公園管理にも重要な示唆を提供するものとなっている。


