EU AI法第50条、8月2日に適用開始 違反は世界売上高の3%
欧州連合のAI法(AI Act)に基づく透明性義務が2026年8月2日に適用を開始した。対象となるのは特定のAIが生成・操作したコンテンツで、事業者はディープフェイクやAI生成テキスト、チャットボットであることを明確に表示する必要がある。違反した場合の制裁金は世界売上高の最大3%に達するとされ、pcmarket報道によれば企業へのインパクトは小さくない。ただし同時進行の「Digital Omnibus on AI」により、8月2日より前から市場に出ていた生成AIシステムは2026年12月までマーキング義務が猶予される。欧州委員会は7月に実施指針を公表し、公表内容ではプロバイダーと利用者双方に向けた具体的な運用ルールが示されている。
OpenAI、音声にもSynthID拡大 API経由の検証機能も提供
OpenAIは2026年5月19日、Content CredentialsとSynthIDによる来歴表示の取り組みを発表し、7月31日にはこれを画像以外にも拡大した。OpenAIの公式発表によれば、ChatGPTやAPI経由で生成された音声にもSynthID透かしが付与されるようになり、公開検証ツールは画像に加え音声ファイルの検証にも対応した。さらに検証機能をAPIからも利用可能にし、開発者や組織が独自ワークフローに来歴確認を組み込めるようにしている。OpenAIはDALL·E 3以降Content Credentialsの付与を進め、C2PA Conforming Generator Productとしての準拠も取得済みだ。別の発表では、EUの汎用AI実践規範とAI生成コンテンツ透明性実践規範の両方に署名したことも明らかにしている。
Anthropic、Claudeに不可視透かし 対象は2026年8月2日以降の新モデル
Anthropicも同様の対応を進めている。マイナビニュースによれば、AnthropicはEU AI法の透明性規範順守のため、Claudeが生成するテキストに電子透かしを、対応ファイルにはC2PA準拠の来歴メタデータを付与する。対象となるのは2026年8月2日以降にEUで提供開始される新しいClaudeモデルで、提供初日からマーキングに対応する。既存モデルについては移行期間を踏まえて対応が進められている。重要なのは、この仕組みがEU域内に閉じない点だ。セキュリティ対策Labの解説では、Claude Platform、Claude Code、Claude Coworkなど各面でマークが適用され、Claudeが提供される地域全体、つまり日本を含む全世界に同じ仕組みが展開されるとしている。
日本企業への波及、来歴情報への関心も高まる
日本国内では包括的な表示義務はまだ存在しないが、影響は既に及んでいる。日本のAI事業者ガイドライン第1.2版は、AI利用者に対しAI活用を適切に認識させるための利用方針作成・公表を期待する方向性を示しており、選挙運動に関わるAI生成コンテンツについては2027年3月から日本でも開示義務が予定されている。一方、アドビが2025年12月に発表した調査(回答者1,000名、調査期間2025年10月29日〜31日)では、画像生成AI利用者の約6割が生成AIコンテンツの来歴情報開示を「必要」と回答し、理由として「著作権・知的財産保護」54.8%、「信頼性と透明性の確保」54.3%、「偽情報・フェイクコンテンツ対策」45.7%が挙げられた。アドビの調査発表は、日本のビジネスパーソンの間でも透明性を重視する意識が既に高まっていることを示している。
GDPRの再来か、実務対応は待ったなし
複数の識者は今回の動きをGDPR(EU一般データ保護規則)の再来になぞらえる。EU域外の事業者であっても、出力がEU域内で利用される場合は透明性義務の対象となり得るためだ。欧州委員会公式アカウントは「エネルギー効率表示や安全認証マークが選択の助けになるのと同じように、AIコンテンツにもラベルが付くようになる」と説明している。OpenAIやGoogleなど主要AI企業は既に実施規範に署名し協力姿勢を見せているが、来歴メタデータは形式変換やスクリーンショット化、再保存を経ると失われる可能性があり、単独では完全な識別手段になり得ない点も指摘されている。日本企業は、マークの有無だけに依存せず、証跡管理の一部として運用ルールに組み込む設計が求められる。




